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2018年02月15日

【コラム】森林療法のエビデンスF

会員の皆様へ季刊でお届けしております、会報誌「森林療法」2013年9月に発行しました26号より、旧理事で現会員の飯田みゆきさんに寄稿いただきましたコラムをお届けいたします。

コラム_森林療法のエビデンス.png


「生理機能に対する科学的検討」

飯田みゆき



今まで、五感ひとつひとつをピックアップして刺激が身体に与える影響を紹介してきましたが、今回から少し視点を変えて、実際の森林が私たちの身体に与える影響を紹介します。

私たちが感じるストレスは、脳で認識した後、自律神経、内分泌、免疫などの生理的指標の変化として現れます。森林環境は、これらの生理的指標に対してどのように影響を与えるのでしょうか。

今回は内分泌システムのひとつであるコルチゾールに与える影響について紹介します。コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、ストレスを受けると分泌量が増加するため、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。糖代謝、タンパク代謝、脂質代謝、電解質代謝、骨代謝、さらに免疫機構にも関与しており、生命維持に不可欠なホルモンで、炎症を抑制する作用も持っています。


◆森林部と都市部での唾液中コルチゾールに対する生理的効果

12名の男性(22.8±1.4歳)を2組に分け、1日目と2日目でグループを交代し、森林部と都市部において20分歩行+20分座観を行った。唾液中コルチゾール濃度は、都市部群に比べて森林部群で有意に低かった。
また都市部群においては、座観後、座観前よりもコルチゾール濃度が高まる傾向にあった。脳活動も森林部群で鎮静化を生じ、生体が生理的にリラックスしていることが観察された。
これは、快適感、鎮静感も森林部群で有意に高く評価された反映であると思われる。興味深いことに、森林部群は、現地への出発前の測定で既に唾液中コルチゾール濃度が低く、これから出かける場所がわかっていることが生理面に影響を与えたと思われる。
日本生理人類学会誌Vol.9,特別号(2);2004)


◆森林環境と都市環境での唾液中コルチゾール濃度と副交感神経への影響

男子学生12名(20〜27歳)を2群に分け、1日目と2日目でグループを交代し、森林環境と都市環境において午前に20分歩行、午後に20分座観を行った。
唾液中コルチゾール濃度は、歩行条件、座観条件とも都市環境と比較して森林環境で低かった。
心拍変動による自律神経活動の評価では、歩行条件では歩行前、歩行後とも都市環境と比較し副交感神経活動指標が高い値を示し、座観条件でも森林環境において心拍数の低下と副交感神経有意な状態だった。
以上から、都市環境では自律神経機能やコルチゾール分泌に関わる生理機能の緊張が示唆され、森林環境では生理機能の緊張が緩和されたことが示唆された。森林環境による生理機能の緊張緩和は、環境に入った直後の歩行前で観察されたことから、短時間の滞在で得られるものと考えられる。
日生気誌Vol.44,(4)105-110;2007)

【補足】
森林環境で一定時間を過ごすことによって、唾液中のコルチゾール濃度が低下し、ストレス状態が緩和されたことが認められています。また、同時に測定している脳活動や自律神経活動も森林環境で生体がリラックス状態になっていることを示しています。
生理的指標は感覚としてとらえることが難しいものですが、森林の中に身を置くとき、私たちの身体は確実に反応しているようです。森林環境に五感を開くとき、自分自身の身体の声にもそっと耳を傾けてみるのもよいですね。


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posted by Yu SEKI at 12:00| コラム