第46回ファンドレイジング研究会レポート
テーマ:「4000人が参加する米国ファンドレイジング大会の報告会」
〜SHIFT the way you think about everything〜
日 時:2014年5月14日(水)18時30分〜20時30分
場 所:日本財団2階
スピーカー(50音順敬称略):
伊藤 美歩(有限会社アーツブリッジ/NPO法人日本ファンドレイジング協会)
寺尾 明人(公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)
平尾 千絵(株式会社ファンドレックス)
船崎美智子(NPO法人市民プロデュース)
間辺 初夏(公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)
三島 理恵(NPO法人日本ファンドレイジング協会)
山ア 美加(公益財団法人日本財団)
ファシリテーター:
鵜尾 雅隆(NPO法人日本ファンドレイジング協会)
記 録:
小阪 真紀(NPO法人日本ファンドレイジング協会ボランティア)
今回の研究会では、アメリカの
ファンドレイジング大会(以下AFPカンファレンス)に
参加された7名の方をスピーカーとしてお招きし、
AFPカンファレンスで学んだことを6つの切り口からお話してもらいました。
●はじめに:AFPカンファレンス及び現地NPOツアーの全体像(スピーカー:三島理恵)
今回は3日間のAFP国際会議参加に加え、現地のNPOツアーも行いました。
◇AFP国際会議概要
AFP(Assosiation of Fundraising Professionals)とは54年の歴史を持ち、
3万人を超える会員をゆうし、世界中に170のチャプターを持つアメリカのファンドレイジング協会。
今年のAFPカンファレンスはサンアントニオ(テキサス州)にて開催された。
88のセッション、150を超える各企業・団体の活動紹介展示、交流パーティーなどが
3日間かけて行われた。特徴としては、非常に規模が大きい(4000人参加)ことに加え、
世界中から参加者が集い、初回参加者へのサポートが充実していること。
海外参加者をサポートするためのバディー制度や親睦パーティー、
初回参加者のためのオリエンテーションなどがある。
◇現地団体訪問ツアー訪問
AFP国際会議で学んだことを実践している団体に訪問し、実例を見ることができた。
1.サンアントニオ地域財団
2.サンアントニオシンフォニー
3.ザ チルドレンズ シェルター
4.フードバンク
○切り口1:地域のNPOが学べること(スピーカー:船橋美智子)
地域・地方の活動者にこそAFPカンファレンスに参加してほしい。その理由は3つ。
◇理由@「気づける」
AFPカンファレンス参加は気づきを得るために一歩踏み出すチャンス。
英語ができなくても、他の参加者に助けてもらいえるので、不安に思う必要はない。
◇理由A「つながれる」
今回のツアー参加者との交流を通して、世界とだけではなく、東京とも深く繋がるができた。
◇理由B「魅力的」
講師の人は皆、長年ファンドレイジングをされているとても魅力的な人ばかり。
参加者もレベルが高く魅力的。
○切り口2:ストーリーテリングの重要性(スピーカー:間辺初夏)
ファンドレイジングにおいて、団体のストーリーではなく、「私」のストーリーをすることの
重要性を学んだ。AFPカンファレンスの中に、有名講師が演劇で自分の活動や体験を表現する
ジェネラルセッション(大ホールでのセッション)があった。
その姿がとても魅力的で、自分自身がなぜファンドレイジングをしているのか、
自分の受益者との体験などを語れるファンドレイザーこそ魅力的だと改めて学んだ。
また、現地NPOツアーで訪れたフードバンクでは、元受刑者がフードバンクのプログラムを
通して社会復帰し、今はそのフードバンクで働いているというのを、
偶然居合わせた本人とともに語ってくれた。このような、「私」のストーリーは深い共感を呼ぶ。
○切り口3:コミュニケーションの大切さ(スピーカー:平尾千絵)
支援者の心をつかむのは「個別の」コミュニケーションだが、支援者が増えてくると
コミュニケーションは自動化しなければならない。ここでドナーデータベースを活用し
コミュニケーションの効率を上げることが重要。アメリカの団体ではドナーデータベースは
あって当たり前。彼らの中で、ドナーデータベースでやりたいことは非常に明確で、
データベースをどう使いこなすかではなく、やりたいコミュニケーションを行うために
どのデータベースをどう活用するか、というレベルの議論になっている。
○切り口4:財団の持つ可能性(スピーカー:山ア美加)
今回訪問した3つの財団の特徴
・サンアントニオ地域財団:
540のプライベート基金を抱えており、そこからの1%の管理費収入で運営。
また地域からの信頼も厚く、遺贈寄付を多く受け取っている。
「理事に自分の団体を孫のように可愛がってもらえることが大切。」というアドバイスをくれた。
・ユナイテッドウェイ:
給料天引き型寄付の先駆け的存在。
・タイズ財団:
NPO支援や企業などの基金管理を行い、そこの手数料で運営。
ファンドレイジングはしない事業型運営方式をとっている。
○切り口5:アメリカのファンドレイザーの今(スピーカー:伊藤美歩)
◇アメリカの一般的なファンドレイザー:
アメリカでは、ファンドレイザーはNPOの活動分野を超えて活躍する。
医療系NPOからオーケストラのファンドレイザーへの転職なども珍しくない。
ファンドレイザーは、アメリカでは稼げる仕事でもあり、意外とその分野に情熱があって
働いているというよりは、自分のキャリアのために頑張って働いている、
というのが一般的なファンドレイザーという印象。AFPカンファレンスに来る人たちは、
そういった人達よりもよりファンドレイジングに情熱をもっている人が多い。
◇超ベテランおばあちゃんファンドレイザーの熱いセッション:
ファンドレイジングのテクニックや戦略論的な話が多い中で、
ファンドレイジングの基礎に立ち返れ!と言わんばかりの熱いセッションがあった。
・Not-For-Profit(非営利)ではなくPublic Benefit(公益)にするべきではないか?
・ファンドレイジングの枠組みが確立されすぎて機械的になっていないか?
・本当に課題解決のためにやっているのか?
・それとも団体を続けるためにやっているのではないか?
ファンドレイジングの手法や枠組みが確立されたアメリカだからこそ、
今こそ原点に立ち返る必要性を訴えかけてくるセッションに会場は大きく心動かされた。
○切り口6:活動をSHIFTさせるために(スピーカー:寺尾明人)
今年のAFPカンファレンスのテーマは考え方をSHIFTする。
そのためには違った視点で考えてみることが必要。視点を変えるヒントは
「ちょっとした出会いが運命を変える」ということに気づいて行動すること。
AFPカンファレンスでは、運命を変える出逢いに溢れている。
AFPカンファレンスにこのメンバーで参加できたこと自体がすごく大きなSHIFTだった。
日本からのAFP参加メンバーの中で世代や職場を超えて、色々な話ができ、多くを学んだ。
●質疑応答このあとは3つのグループにわかれて質疑応答を行い、
AFP参加者からかなり深い部分まで話を聞くことができました。
●まとめ今年5年目を迎えた日本ファンドレイジング協会は、今、セカンドステージを目指しています。
それはファンドレイジングの「主役が増える」ということです。主役に求められる力とは、
未来のことに関するイメージがあることです。今回のAFPカンファレンスは
これからの日本のファンドレイジングへの未来についてイメージを得られる素晴らしい機会でした。
来年のAFPカンファレンスは3月29日〜31日に、ワシントンDC郊外のボルティモアで開催されます。
来年もツアーを開催しますので、皆様も是非参加してみませんか?
○おまけ1)このレポートの、印刷用PDFデータのダウンロードは
こちら2)代表理事 鵜尾雅隆による米国ファンドレイジング大会レポート