[報告・郷土芸能復興支援プロジェクト]奈奈子祭:釜石の民家で演じられる神楽や虎や鹿を観て復興支援! [2013年02月28日(Thu)]
「奈奈子祭」不思議な名前でしょう? この祭りは、2月24日(日)に岩手県釜石市箱崎白浜の一般民家で行われた、被災郷土芸能の祭典です。 (奈奈子祭の説明) 南部藩壽松院年行司支配太神楽(全郷芸会員)の一員でもある笹山政幸さんとその奥さん奈奈子さん、そして被災地の郷土芸能支援に震災直後から携わっている橋本裕之教授(追手門学院大学・全郷芸個人会員)が先頭に立って企画し実現したもの。 場所は釜石市箱崎白浜の佐々木家。奈奈子さんのご実家で、震災後初めて鵜鳥神楽(沿岸を巡業する神楽)の宿(神楽衆をもてなし、家を開放して住民を呼んで神楽をみせる場)を勤めたのでした。しかもこのお宅には被災した各地の権現様(獅子頭)がなぜか続々と集まってくる「避難所」の様相を呈しています。 鵜鳥神楽や早池峰神楽といった神楽や虎舞に鹿踊り、バラエティ溢れる郷土芸能を、民家で観て、触れる。 地元の方々が毎年楽しみにしていた神楽宿の雰囲気を、食事をしたり直会に参加しながら堪能できるなんて…、大変な貴重な祭りです。しかも橋本先生のタメになる!?トークつき。 また、ご夫婦の心意気と郷土芸能の絆を感じながら参加することが、そのまま芸能の支援にも繋がるという画期的な企画・祭りだったのです。 (奈奈子祭実行委員長・笹山政幸さんより) 1/13にNHKで放送された復興サポートの番組において、壊滅的な被害を受け今後の見通しもたっていない鵜住居地区を中心とする芸能団体の代表者が、郷土芸能を通じてバラバラになった住民を呼び寄せるためにはどのようにすれば良いか話し合いました。その中で、数年後にでも、この番組に集まった団体で郷土芸能祭が出来ればいいなという話が出まして、それを数年後ではなく、即実行しようと笹山奈奈子が発声して実現しようとしているイベントです。 また、このイベントは近い将来、場所を片岸、鵜住居、両石、唐丹に場所と名前を変えて展開したり、その地区の祭に友情出演したりして継続していきたいイベントです。そこで、第1回目と言うことで、発声者の地元である白浜で奈奈子祭を開催することになった訳です。また、このイベントを拡散する事により、他の地区でも後に続いて同じ様な方々も出てくれればいいなとの願いもあります。 ******************************************* というわけで、全郷芸事務局小岩が奈奈子祭に行ってきました。 朝から雪だというのに大変な盛況。 普通の民家にこれだけの芸能が集まって、これだけの土地の人たちが集まって、皆それぞれ芸能だけじゃなく世間話や餅拾いなどお目当てがあって、とっても素晴らしい雰囲気でした。 出演団体 ●桜舞太鼓(鼓舞櫻会):唐丹(とうに)半島の本郷に伝わる桜まつりの手踊り太鼓としてまず発祥し、その後、創作も始めて桜舞太鼓として成長。地域の伝統に根ざしながらも、常に新たな脱皮をめざす実力派太鼓集団。 →櫻舞太鼓の皆さん、同じ釜石とはいえ文化圏の違う唐丹町から。粉雪の降る中、被災しながらも立ち上がったその勢いを、集まった皆さんにしかと見せつけてくれました。 ●鵜住居虎舞(釜石市指定無形民俗文化財):陸中沿岸部で活躍する幾多の虎舞のなかで、雌虎として優美に舞うのが真骨頂。狂言の「釣狐」の系譜に連なる手踊りの「狐釣」を保持するなど、日本芸能史という大海に浮かぶ宝船だ。 →鵜住居虎舞では小さな子どもが虎の頭で舞ったけれど、その時の婆ちゃんたちの喜びようと言ったら!家の中から大歓声でした。そしてやる気満々の少年。こういう経験がこれからも続けていきたいと思うモチベーションに繋がる。観る人たちが心得ていて、育てる雰囲気が出来ている。 ●早池峰岳神楽(国指定重要無形民俗文化財・ユネスコ無形文化遺産):日本の神楽の代表的存在。その輝かしい肩書きすら余計なものと思えるほど、肉体の限界を突き抜けたところから立ち上がる圧倒的な表現は、地域の山岳信仰を見事に形象化している。 →岳神楽が沿岸の民家で舞うなんて、これを想像しただけでも卒倒してしまいそうなのに、実際神楽衆の気合もすごかった。岳が来るから座敷の一部分を板張りにしてしまったそう、その心意気に感服。 逆光だったが、幕の向こうから「山の神」が出てきた時、面の表情が見えず、本当に神が降りたかとざわりとした。 雪はちらちらと降り続けています。 岳神楽の熱演中、外では田郷鹿子踊が準備を始めている。 ●田郷鹿子踊:陸中沿岸の虎舞と並ぶ芸能の華である鹿踊りは、鎮魂・供養の舞として知られている。2年前の震災は沿岸の芸能者を打ちのめし、そして奮い立たせた。300年以上の歴史をもつ由緒ある鹿子踊は、地域とともに歩む芸能として、再生に欠かせない文化といえよう。 →庭で踊る芸能でもある鹿子踊の、本当の姿を見た気がする。 沿岸の幕踊系シシ踊りは震災前までほとんど見たことがなかったけれど、すっかりはまってしまった。デザインの面白さや振りの美しさ勇壮さも気になるけれど、何より祭りや供養に皆が真剣に取り組んでいる。 最後、奈奈子さんから御酒と御花が謝礼として出されていましたが、それに対する心のこもった礼の踊り、これが庭にやってくる芸能のいいとこだよな、としみじみ思ってしまった。 そして、トリは普代村の鵜鳥神楽。 ●鵜鳥神楽(岩手県指定無形民俗文化財・国選択無形民俗文化財):鵜鳥神社の権現様を捧持し、毎冬、陸中海岸を巡行するスーパー廻り神楽。普代村、田野畑村のメンバーが中心だが、新たに釜石市出身の若者が入り、活気づく。 →この家は鵜鳥神楽の神楽宿だったこともあるし、何より実行委員長である笹山さんの息子英幸さんが鵜鳥神楽に入ったという大事件!があって、その晴れ姿をおばあちゃんに見せたいとの笹山さんご夫婦の願いが、この奈奈子祭開催の一つのきっかけだったようです。 なんと壮大で羨ましい家族サービス。芸能を庇護する方々の鏡です。 そんな晴れ姿と聞いていたものの、すみません、私最後までいられませんでした。 詳しい内容やもっと深いところまで迫った記事が以下の方々が書かれています! blogとりら http://torira.exblog.jp/ 祭りのおっかけ http://maturinookkake.blog.fc2.com/blog-entry-456.html 岩手日報 http://www.iwate-np.co.jp/hisaichi/y2013/m02/h1302251.html とにかく新しく、有意義な祭りでした。 芸能に対する支援だけでなく、地元を盛り上げつつも、次世代にも希望を与える大変な企画でした。 この祭りは初めての試みでしたが、場所や方法や名前を変えつつも、おそらく続いていくことでしょう。 企画実行、そして家を開放された笹山さん、奈奈子さん、ご家族の皆さん、この企画の立案者であり陰の功労者橋本先生、箱崎白浜の皆さん、お手伝いの皆さん、その他関わった方々全てに感謝します。 (今回、私は(公社)全日本郷土芸能協会「東日本大震災郷土芸能復興支援プロジェクト」への皆さまからのご寄附の一部を携えて伺わせていただきました。被災地の郷土芸能および地域の一日でも早い復興を願い、奈奈子祭実行委員会様へ支援金をお送りいたしましたことをご報告申し上げます。) |