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会長交代の就任あいさつ [2022年05月27日(Fri)]
一社)日本船長協会 会長 中村 紳也
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 この度、前任の葛西会長の後を引き継ぎ、当協会の会長を務めさせていただくことになりました。就任のご挨拶にあたり、先ず長年会長として、協会の運営にご尽力されました葛西前会長に心から敬意を表すと共に感謝申し上げます。
 葛西前会長の方針を引き継ぎ、先ずは協会の責務として、先の総会で承認された事業を効果的に達成することに力を尽くして参りますとともに、前会長が取り組まれた協会運営の改善に沿って効果的・効率的な運営に努めていきたいと存じます。会員各位をはじめ関係団体の皆様のご指導とご教示をお願い致します。

 さて、今日の社会を取り巻く環境として、ロシアによるウクライナ侵攻、新型コロナウィルスウィルスの世界的な感染の広がり等、数年前には予想しなかった事案が発生し、大きな影響を受けています。我々国際海運に携わる者は過去にも国際紛争等の影響を受けてきました。
 私の個人的な経験においても、航海士として勤務していた1980年、重量物船にて日本からイラン向けに石油プラントの輸送に従事していた時、イラン・イラク戦争が勃発しました。揚地であるイランのバンダルホメイニ(Bandar Khomeini)港に入港する前日にイラン・イラク戦争が始まり、同港は封鎖、積載していたイラン向けプラント機器は急遽アラブ首長国連邦のドバイ(Dubai)にて揚荷されました。幸いにも本船には直接的な被害はなかったものの、先にペルシャ湾に入湾し、イラクのウムカッスル(Umm Qasr)港に入港していた僚船は被弾し、その後の戦闘激化のため出港することができず、乗組員は陸路待避の上、空路にて日本に帰国しました。

 国際紛争の影響は様々の形で船舶の運航に影響を与えます。船長としての対応についても多様な局面について考えておくことが必要です。当協会では、ウクライナ問題を想定していた訳ではありませんが、以前から取り組んできている船長のための国際法に関するハンドブックの作成を急ぎたいと思います。
 また、今回のロシアによるウクライナ侵攻に関しても多くの報道がなされていますが、国際紛争における様々な問題について会員の皆様と共に学ぶ機会を設けたいと考えております。

 わが国商船隊の運航形態は30年以上前からグローバル化が加速してきました。私自身が乗船した乗組員の国籍もフィリピンのみならず、クロアチア、ミヤンマー、リビア等と多彩でした。それぞれの国の文化と生活習慣が異なる中で互いに学びつつ連携と信頼を深めていく努力が必要でした。海運は、船舶のハード、ソフトと共に乗組員の資格要件等を含めて国際社会の中で諸規則を定め活動しています。環境問題に関しての国際的な取り組みについても同様です。
 日本船長協会は、赤塚理事が長年に亘り副会長を務める国際船長協会連盟(IFSMA)の総会を来年東京で開催することを要請されています。国際的なプレゼンスを高める機会にもなると考えています。詳細はまだ決まっておりませんが、技術的な話題としては自律船に関する基準、認証等の他、日本での様々な研究開発の検討状況を紹介することができる場にしたいと考えております。

 さて、当協会は現役の船長を主体とする正会員、および航海士会員、そのOB等の賛助会員の皆様で構成されていますが、旧来の船員教育制度の下で、全寮制と言う集団生活の中で培った船乗り気質も、現在では個人の創造性や斬新的な思考を尊重した教育の中で大きく変貌しているように見受けられます。更に、近年では一般大学出身者が海技者として海運会社で養成され、海陸で活躍されている会員の皆様も多くなりました。出身母体は多様になりましたが、船長と言う職務を通じた横断的な団体として、時代のニーズに対応し、船長の識見の涵養と海技の研鑽に努め、海技クラスター全体での質的、量的海技者の維持、向上に貢献することで、海事産業の発展に寄与していきたいと考えています。

 当協会が長年取り組んでいる「子供達に海と船を語る」講演事業についても、コロナウイルス感染の影響を大きく受けましたが、防止対策の進展とWEB方式の普及により、以前にも増して若い人々への講演の機会が得られつつあります。わが国における海事の知識の普及と海事教育の振興への貢献を目指して参ります。

 これらの事業活動は、当協会会員はもとより、海運会社を始めとする関係団体の皆様のご理解とご協力なくして成果は期待できません。今後とも当協会が海運、海事社会の発展に有意義な活動を進めていくため、皆様のご忌憚のないご意見を賜るとともに、ご支援ならびにご協力を戴ければ幸甚と存じます。
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