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2012年06月07日

神戸の学生と商店街の協働


「これまで大学で学んだ事などが震災をきっかけとして、繋がり1つの形になった。」
そう振り返る、流通科学大学 RYUKA被災地復興サポートチームの代表 時井勇樹さんを取材に伺った。
この日は、神戸新長田の大正筋商店街で開催されたビエナフェスタで南三陸の物産販売。

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―はじまり
2010 年夏にラジオ関西主催により、「災害対応のためのマルチラジオカー人材育成講座」が開催された。地域災害が発生した時、現地の人が自ら臨時災害FMを立ち上げることが出来る人材を育成しようというものであり、このプログラムに参加した学生らが、3.11後、ラジオ関西からの呼びかけに賛同しRYUKA被災地復興サポートチームが結成された。そして南三陸町での臨時災害FM立ち上げに協力。(※現在、南三陸町で「FMみなさん」として自主運営されている)


―大正筋商店街との協働
南三陸町での臨時災害FM立ち上げを終え、神戸に戻ってきたRYUKA被災地復興サポートチームはかねてから親交のあった、大正筋商店街の株式会社味萬 伊東正和さんとともに神戸から何が出来るかを一緒に模索する。
2011年秋、伊東さんとサポートチームは、南三陸町に建設される仮設商店街に街灯を設置するため神戸ともしびプロジェクトを立ち上げ、新長田のイベントや大学内での募金活動により12月に12本の街頭を、南三陸さんさん商店街に届けた

伊東さんは、「町に灯りがないと気持ちまで暗くなってしまう。灯りがともればそこには人が集まる。1つの灯りにたくさんの人が集まると、温かくなる。12本という少ない数かもしれないけど、街頭を届けた商店街から「ありがとう」その声を聞いて、学生達はもっと何かしたいと動こうとしている。神戸ともしびプロジェクトの後も一緒にやりたいと思った。」と、振り返る。

RYUKA被災地復興サポートチーム代表の時井さんも、街頭を届けに行った際に、
「初めて被災者の顔が見えた。この人たちのために何かしたい。」

大正筋商店街のイベントを中心に、南三陸の物産販売が始まった。

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△時井さん、南三陸町の山内鮮魚店の商品を手に。

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△学生らの物産販売の様子


―それぞれの想い
時井さんは、自身たちの活動をきっかけ作りだという。
「大きなことはできないかもしれないけど、小さなことを積み上げていくことで、他のところからも東北を応援する活動が生まれている。神戸ともしびプロジェクトを知り賛同した神戸大学の学生からは、釜石市に街灯を届ける活動がはじまった。復興には10〜15年かかるといわれ、その時々でニーズは変わってくる。長い視点で関わることが何より大切。そのためにもお互いに利益ある形をとることが必要だと考えている。今後、計画中である東北居酒屋も「居酒屋やってみたい」「お酒が好き」など、それぞれの興味にあった部分から入ってもらう事で多くの人が気軽に集える場を作っていきたい。」

湊川商店街の空き店舗を学生で運営できないかと、商店街から大学に持ちかけられた話を東北居酒屋として、今後展開すべく7・8月のOPENに向け準備を進めている。


「10年後、子供が出来たときにお父さんはこんなことをしてたんだと語れる人になってほしい。」伊東さんは、そんな想いで彼らと関わっているという。
「若さとエネルギーをもらう代わりに、商店街だから教えられる事がある。学生たちは、知識はあるが知恵はない。損益分岐点などの経営に必要なことや、販売の際に心がける事など、実学を教えている。」
「商店街に来てるからには全部売って帰れ!そのくらいの気持ちでやれ。販売は戦争だ!」

時には、厳しい声をあげながらも、学生らが掲げた目標を達成できるように今後もサポートを続けたいと話してくれた。



流通科学大学が掲げる、実学の精神「実学を通して社会人として自律的に生きていける人物を育てる」

学生だけでは、決して成し得ないことも周囲の大人が学生にきっかけを与え、一緒に作り上げていこうとする環境と、かつての被災地から今の被災地を応援したい、その想いが共鳴して、神戸の地で南三陸町の商店街復興に向けたシゴトが生まれている。


岡あゆみ