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藤岡喜美子のブログ

これまで細分化されてきた日本のサードセクターを横断的に再構築し、政府・行政セクター、企業セクターといった
従来のセクターに、イノベーティブで力強く活動するサードセクターが加わることで、3つのセクターが一体的に変化し、多様な主体者が社会問題を解決していく未来に日本に変えていきます。


こどもの命が守れる社会へ [2018年06月10日(Sun)]
 3月2日(金)18時半頃、東京都目黒区のアパートの一室から、「娘の意識がなくなった」との119番する事件が起きました。救急隊員が駆け付けたところ、室内に5歳の女児が倒れており、病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。発表によると、死亡したのは、容疑者の長女の女児(5)。

なぜ!どうして!
こどもの命を救うことができないのでしょう。

 事件の流れと、なぜ救えなかったのか、その課題を認定非営利活動法人代表理事駒崎弘樹氏がブログで紹介しています。
https://www.komazaki.net/activity/2018/06/post8172/
 2017年、香川県でも虐待があったとみられ、児童相談所が女児を両親から引き離し、一時保護を2回おこなっている。こうした情報を引き継いだ品川児童相談所は2月9日に家庭訪問したが、女児に会えなかった。警察なら強制的に面会も可能です。児童相談所と警察の全件共有は高知・茨城・愛知のみであり、親権の問題と個人情報の保護の問題があり、連携の壁が多い状況です。
 東京都の小池百合子知事は目黒区の5歳女児虐待死事件に関連し、都内の児童相談体制の強化と児童相談所と警察との協定範囲の見直しを指示し、児童相談所関系の人員増員を検討しているそうです。
 もちろん、政府・行政でできることは、すぐに検討し、改善すべきです。
 同時に、私は、こどもの命を守ることができる社会へと、親権より、こどもの命へと子ども中心に考え方を見直すべきと考えます。
子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められたこどもの権利条約があります。
こどもの権利条約は1990年国際条約として発効しました。日本は1994年4月22日に批准し、1994年5月22日に発効しました。都道府県市町村では子どもの権利条例など制定されていますが、どこまで、実効性のある条例になっているのか。
こどもの権利が第一であるべきです。
こどもの命を守ることができる社会へ
平成24年度の虐待対応件数は66,701件であり、統計を取り始めて毎年増加し、平成11年度の約5.7倍。相次ぐ児童虐待による死亡事件は平成23年度56例・58人)。 死亡した子どもは0歳児が4割強。社会的養護体制は不足し、約4割の自治体で、定員を超えて一時保護を実施し、児童養護施設の入所率の増加の一途です。
 私にも児童虐待に関する活動をしてみえる関系者からは現場の課題が多く耳に入ってきています。私が支援してきているNPOも10数年前から、「ほってはおけない」と、民間努力にて、シェルターやステップアップハウスの設置、飽和状態の児童相談所だけでは対応できるはずがないと、里親の支援、ファミリィーハウス、さらに里親制度の課題を解決できるようなプロジェクトの工夫などを初めています。
 また、「児童虐待の防止等に関する法律」は、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所もしくは児童相談所または児童委員を介して「通告」しなければならないとしています(6条)。
 よって、虐待を受けているという確信まではなく、「もしかしたら虐待かな」と思う程度であっても、市町村の児童福祉課や福祉事務所、児童相談所に通告する義務があるのです。
 通告の義務というと重苦しい雰囲気がありますが、匿名で連絡することもできますし、名前を名乗ったとしても、通告者の情報は、相談先の関係者以外には知られないことになっています。
 通告の義務に違反した場合の罰則などの定めはありません。
 こどもの命を救え。余裕のない親を救え。
 この問題は個人の問題ではなく、社会課題です。
 子どもは社会全体が見守るようにしたいものです。
「たすけてください」からはじまったNPOの活動(東日本大震災が教えてくれたこと) [2016年03月13日(Sun)]
「たすけてください」からはじまったNPOの救援活動
栗木さんを偲んで
NPOの活動の原点
中間支援組織の原点にかえる
2011年3月12日
愛知県に事務所があるアレルギー支援ネットワークに被災地のアレルギーの患者の保護者からSOSのメールが入りました。
「年長の男の子に卵、甲殻類のアレルギーがあります。支援物資届けていただけないでしょうか。」わずか24時間で、非常勤職員1人の愛知県の小さなNPOに8件のSOSがはりました。ネットで懸命に支援してくれる人をしらべたのでしょう。
災害支援センターは立ちあがっていません。外部へのアクセスがまだ困難な時期です。阪神大震災、中越地震では24時間以内にアレルギーの活動をしているNPOへのSOSはゼロだったそうです。ITの進展とともに、NPOが認知されてきたのではないでしょうか。アレルギー支援ネットワークの理事栗木さんは、すぐに東北へ向かい、製造メーカーにある在庫とともに組織が備蓄していたアルファ米を、現地へ届けました。それでもたりません。
震災発生後4日目の2011年3月15日、栗木さんから私のところに電話がありました。
「『アレルギー患者は日頃から災害に備えているので2、3日は何とかなるけれども、その先は全く見通しがありません。助けてくれるところもありません』など悲壮なメールや電話が私どもに入ってきています。都道府県、市町村が災害用に備蓄しているアレルギー用のアルファ米の現地への供給要請しても、自分たちのような小さなNPOが電話をしてもたらいまわし、相手にされません。藤岡さんからお願いします。
また、SOSのある患者さんに必要なサポートを行うには搬送手段や体制の確保が欠かせず現地の燃料不足も重なり、バイクボランティア等の募集も思うにまかせません。資金など支援をお願いします。」
この組織は設立時からコンサルティングさせていただいている組織です。
「なんとかしなければ」と私もすぐに動きました。
自治体の担当者は、税金で購入したものです。ひとつのNPOの要請を聞くわけにはいかない。災害支援センターから要請がないと送れない。災害支援センターが立ち上がっていないといってもきまりはきまりと応えるだけ。最後には藤岡さんからの要請でも聞けないと
聞けないではなく、「考えろー」
時間がないのだ。
やむなく、トップへ直接交渉。
それでもちんたらちんたら・・・・
心の中で「あほー」
このような緊急時こそ、トップの判断でしょうが・・・といつもになく冷静さを欠いた口調、憤りでこぶしの血が滲みそう。ひたらすら冷静にとアルファ米の搬送を依頼した記憶が鮮明です。
同時に寄付を集めて、アレルギー支援ネットワークさんへの活動費へ資金援助

アレルギー支援ネットワークは被災地のボランティアとともに、支援拠点の設置、物資拠点の設置、被災地の支援があることを知らせるために避難所へのポスターの貼りだしを85%行い、個別の相談対応に応じました。活動費は寄付や助成金などでつなぎました。国外で活動しているNGOのように初動資金の蓄積があり、体力があるわけではありませんので、綱渡り状態です。
栗木さんはボランティア休暇を取得できなかったので、公務員でしたが退職してしまいました。「生活はどうするの。」思わず聞いてしまいました。
財政基盤が脆弱な小さなNPOが被災地からの声に、できないとあきらめるのではなく懸命に応えました。
 当時、私は、新しい公共の推進会議委員を務めておりました。新しい公共の推進会議が設置している震災制度ワーキング・グループにおいて、震災ボランティア連携室は4月22日の会議にて、ボランティアの数を公表しています。岩手、宮城、福島の3県のボランティアセンターで把握したところ、4月17日現在で11万6000人。
 これは震災発生直後40日ぐらい経った時点での数字で、阪神・淡路大震災のときのボランティアの数は発生1カ月後で60万といわれています。地域が広くボランティアが入りにくいということもありますが、日本のNPO・NGOがボランティアセンターを経由せず、とにかく動いたということもいえるのではないでしょうか。市民の自発的な自己完結における活動です。災害発生2日目、普段より関係のある地域のNPOに直接SOSをだし、救援物資をおくってもらい、避難所や個配を始めたNPOもあります。多くの人の「いのち」です。災害発生直後は時間やひとがたりません。そのような状況は容易に想像できます。しかしNPOはその被災者の問いに対し、活動範囲は狭いながらも、すべての人を助けることはできなくても、目の前のひとりをほっておくことはなく「つぎは○日にはきます。次に来る時は何が必要ですか」と答えて実行してきたそうです。NPOは目の前の一人今日の一人をほっておくことはなく助けます。

混乱と混迷を極めた自治体
 侵食わすれた自治体職員の姿はありますが、限界があります。
私は、市長と話をしたあと、自治体に連絡をとりアルファ米を現地におくるように文書にて要請しました。担当課では現地から要請がないと救援物資はおくることはできないといい、現地は混乱していて無理であるとか何度かやりとりしているときに、幸い現地より救援物資を送ってほしいという要請があり、その自治体はアルファ米7700食を仙台へおくりました。ところが、一般食として供給されてしまいました。慌てて、現地のNPOに連絡しアルファ米を確保。さらなる事実として、4月24日付け毎日新聞によると、仙台市はアルファ米38万食、アルファ米のおかゆ1万4000食分を備蓄していました。仙台市は備蓄するにあたって、アレルギー患者にも対応できるようにと備蓄食材はすべてアルファ米としたそうです。そこまではよかったのですが担当者が代わり、アレルギーの患者の非常食になるということを理解しておらず一般食として供給され、アレルギー患者もそのこと知らず、患者のところには届きませんでした。自治体においては担当が移動になるために、このように引き継がされない場合があります。いまでは都道府県より、アレルギー支援ネットワークに支援要請があるそうです。NPOはNGOを除き、財政基盤が脆弱です。しかし、機敏に専門性高く動けます。税金を強制的に集めているそれこそ活動資金が潤沢にある体力のある栗木さんのような方がみえるNPOがあります。そのNPOと行政との連携、企業との連携がきめ細かな社会の課題を解決するはずです。

栗木さんは数年後他界されました。

被災地の復興は、単なる復旧ではなく、新しい社会システムの構築であるべきです。被災から救援にかけて前述のような露わになった市町村の混迷、さらにはこれまでの日本の制度疲労、格差社会、などの社会問題が多くあります。そして、限定されたある地域の復旧という枠に収まりようがないほど被災地域は広く、復興に必要とされる期間も長期となります。日本においての21世紀型の社会システムの模索は、東日本の復興を中心課題の一つとして進めていかざるをえないと思われます。
それだけに、救援や原発事故に取り組む政治、行政の取り組みは私の期待を大きく下回るものでした。しかし、3・11からのこの5年間、多くの国民はそのことを声高には批判をしてこなかったのではないでしょうか。不思議です。
今後、それは単なる責任追及や批判ではなく、復興のなかで構築すべき、そして復興過程を支えるべき新しい社会ステムの模索のための市民の声として大きくしなければならないと思います。批判要望ではなく、活動者からの建設的な声です。震災という未曽有の危機においてのその志をつながなくてはいけない。
2016年3月11日
被災地のNPO支援にて、こつこつ稼いでためた正味財産をつかってしまい
さらに
このことがほとんどできていない私の心は
へこんで
ぽっかり穴があきそうでしたが
栗木さんを思い出し、あきらめません。
参考文献「環」藤岡執筆部分より
規制改革とサードセクター [2013年12月03日(Tue)]
JACEVOの3つの事業の柱のうち、公共サービス改革に関し「提言する」という事業の柱は積極的に実行していきたいと考えています。
特定非営利活動法人は2013年10月末で約4万8千、一般社団財団法人は2013年3月末で約3万3千と新しい民間非営利組織が急増しています。外郭団体や伝統的な団体も自らの民間組織としての経営力が問われ自己改革が迫られています。
一方事業政府・行政からは補助金や事業委託が拡大の方向にあり、特定非営利活動法人や一般法人の参加が認められない事業分野、いわゆる公共サービスの参入障壁の存在が問題視されています。反面、ブラック企業や偽装表示など、規制緩和や規制不在の問題があることも事実です。政府・行政のもうひとつの「協働」の相手である、企業からは新しい非営利組織は寄付の対象としてしか見なされていないという批判もあるものの、一部とはいえ、企業や政府・行政に対し、ビジョンに溢れイノベーティブな取り組みが進められています。
以上のような状況を踏まえ、下記のようなシンポジュームに登壇します。
明日のことですが、こども分野における私の新たな挑戦へのアプローチ、戦略もお話ししますので、ぜひご参加ください。
規制改革とNPO
〜公共サービスへの参入障壁と「必要な規制」〜
★日時 2013年12月4日(水)
午後6時30分から9時30分
★場所 大阪市立大学大学院
梅田サテライト101教室
大阪駅前第2ビル6階 JR大阪駅徒歩5分、JR北新地駅真上
★講師 藤岡喜美子さん(公益社団法人日本サードセクター経営者協会・執行理事)
     安孫子浩子さん(NPO法人Cha-cha House・事務局長)
★司会 大阪市立大学大学院・教授 柏木宏 
★参加 無料
★予約 不要
お問い合わせ
大阪市立大学大学院創造都市研究科
都市共生社会研究分野
E-mail: info@co-existing.com
自治体改革の突破口〜その1柳村純一氏編〜 [2013年10月10日(Thu)]
自治体改革の突破口とは
今、組織の中で信念を持ち続け、改革に粘り強く取り組むことが出来る人材が求められています。市民フォーラムの法人16期総会シンポジュームは「自治体改革の突破口」をテーマとしました。その概要を順に紹介していきます。また近日ブックレットも販売します。
シンポジュームのゲストは下記のみなさんです。
「日本一の村から日本一の超優良企業へ」
柳村純一氏(元滝沢村村長)
「日本一公務員の少ない自治体」
見城俊昭氏(大野城市教育部長)
「公共サービス改革の第2ステージへ」
定野司氏(足立区総務部長)

中央集権から地方分権へ、合併や、集中改革プランなどにより自治体改革は一定の成果をだしました。しかし、そろそろ行き詰りつつあります。今後は改革手法のバージョンアップが求められ、自治体自らが自治体を改革する能力があるかどうかが問われています。
まずは柳村氏の基調講演の内容の概要です。
柳村氏は自分の話しは過去のものだとお話されますが、私はそうは思いません。
村長をやめて7年。村長に就任したのが19年前。
12年間でどれだけ自治体が変わることができたのかと彼は自らを問いただします。
私は滝沢村を訪問し、現在の職員の方の話しを聞いたことで滝沢村が変わっていることがわかりました。
柳村氏は、1994年、自治体改革がいまだ本気でないころに、まさに行政経営と住民との協働、組織改革を実践されました。
職員の意識改革に焦点をあてた意識改革のための環境づくり
ソニー森田さんの本に262の原則がある。「足を引っ張るもの」「ついてくるもの」「やる気のあるもの」「足を引っ張るもの」である2割の人を切ったらまともになるのかとおもえばそれは間違いであり、上からまたおちてくる。7年8年ごろをめざしどういう数字になるか自分なりにイメージした。163と分析した
人間の意識を変えるのは環境を変えることだ。抵抗があっても変えていく。失敗したら、元に戻ればいい。公務員は失敗を恐れ踏み出すことができない。
なぜ改革に取り組んだのか。職場が暗い。勉強していない。情報収集しなくてもよい。残業のやり放題。会議をやっても決められない。どこがやるか決まらない。結論がでない。仕事を増やしたくない。部下に仕事をとってくるとダメな課長と言われる。
この壁をぶち壊したいと思った。
さらに、住民からくるニーズが首長まであがらない。みなどこかで切れてしまう。縦の壁、横の壁だらけ。組織の風通しをよくするために、80名の係長を一気に廃止した。33人の課長全員を降格人事。8人部長による体制とした。毎日毎日8人の部長はミッションとは何かの議論を始めた。
「課長投票制度」を導入した。どういう人間が選ばれたか。普段でも相談に乗ってくれる人。話しやすい人。時々酒飲んでくれる人。
そして、職員研修に存分に予算を使った。
住民との協働をゼロから
悲願の道路を住民の手で
行政がすべてやれるわけではない。やれるものを住民にやってもらおう。最初は行政におんぶにだっこであった。なんでもかんでも行政がやってくれると思っていた。
住民が自分たちで地権者と交渉し、用地賠償に通常は3年かかるのが半年で終わった。地権者が寄附をしてくれた。NTTもタダで電柱を移動してくれた。
住民が元気になった。住民が顧客だといったが、住民はパートナーだ。ものの価値観が変わってくる。発言が変わってくる。あれやれ、これやれ、「ここは我々がやるから、ここをやってくれないか」という発言にかわってくる。
自治体改革の突破口〜市民がイノベーションを起こす〜 [2013年09月21日(Sat)]
市民がイノベーションを起こし、市民の力が活きる社会へ
未来の新しい社会へ向かうためには、サードセクター、政府・行政セクター、企業セクターが一体的に変化していくことが大切です。
私たちは市民のエンパワメントと同時に、政府・行政への提言を行っていきます。
今後、中央集権から地方分権へ向けた自治体改革の動きさらに加速されると思われます。そこで、新たな手法が求められています。
いまだ、自治体では財政難から予算を1割カットという乱暴な手法も横行しています。行財政改革はただ事業をカットするだけでなく、市民サービスをより一層向上させなければなりません。
トップが行財政改革についての目標を設定すべきであるとは思いますが、事業の中身や現状をわからないままトップや外部評価委員だけが判断をすると、隋所に非合理をもたらします。改革とは本来、職員ひとり一人が自ら取り組むべきものです。そしてそのまちの市民から行財政改革の起爆剤となる評価・改善を行うための提案がなされることが期待されます。市民はよりよい提案とするためには市民同士の協議が大切です。緊急雇用対策事業を使った「協働ごっご」ではなく本気の仕組がいります。
自治体が自らを改革していくことができるかどうかが、今後の自治体改革が進むためのカギであり、それは首長のリーダーシップであり、職員の意識がどのように変わっていくかだと考えます。
市民フォーラムでは自治体改革の突破口として先進的な取り組みをしているリーダーをお招きしで、自治体改革へとむかう現状把握と今後どのように改革をしていくのか、魅力あるゲストとともに考えます。
━■information■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
市民フォーラム21・NPOセンター 法人16期総会シンポジウム
自治体改革の突破口
〜公共サービス改革と担い手〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■Shimin Forum21・NPO centre■━━
地方自治体として初めて「日本経営品質賞」を受賞した滝沢村の前村長柳村純一氏から今だから話せる改革の手法、
官民連携・共働(協働)による“新しい公共サービス”の展開で日本一公務員の少ないまちとして全国的に注目されている大野城市から見城俊昭氏、全国153の自治体が参画する「日本公共サービス研究会」を自ら立ち上げた足立区から定野司氏を迎え、
自治体の先駆的で革新的な取り組みに学びながら、自治体改革の第2ステージへの道を探ります。その自治体改革のうねりと同時に考えるべく、担い手としてのサードセクター組織の展望についても議論します。
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日時:2013年9月29日(日)(13:00〜17:30)
場所:愛知県産業労働センター ウインクあいち 903会議室
    愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4?38
対象:自治体職員、議員、NPO関係者、研究者、企業関係者など
定員:65名(定員になり次第締め切り)
参加費:一般参加者 1000円
    市民フォーラム正会員 無料
━【プログラム】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■基調講演
「日本一の村から日本一の超優良企業へ」  柳村 純一 氏(元滝沢村村長)
「大野城市のNPMと官民連携・共働(協働)による“新しい公共
サービス”の展開について」 見城 俊昭 氏(大野城市教育部長)
「公共サービス改革の第2ステージへ」 定野 司 氏(足立区総務部長)
■パネルディスカッション
「自治体改革の突破口とサードセクター」
パネリスト 柳村 純一 氏
        定野 司 氏
        見城 俊昭 氏
コーディネーター 後 房雄氏(名古屋大学大学院法学研究科 教授)

申し込みはHPからお願いします。
http://www.sf21npo.gr.jp/news/130915.html

━【登壇者プロフィール】━━━━━━━━━━━━
■柳村純一氏(前滝沢村村長)
1950年10月26日、岩手県岩手郡滝沢村生まれ。盛岡工業高等学校土木科卒業後に上京、京成電鉄株式会社に就職。28歳の78年、滝沢村村議会議員となり、以後三期12年、村議会議員を務める。94年に村長に就任し、「地方行政自治体は会社みたいなものであり、住民は顧客である」というポリシーをもとに、情報公開、組織のフラット化、ISO認証取得、行政経営品質アセスメント実施など、地方分権による自治体への権限委譲に向けた村の改革を次々と実現させる。新しい「行政経営モデル」構築を掲げ、「第五次滝沢村総合計画 前期基本計画―行政戦略計画―」を策定、05年より「滝沢村NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)」を開始させた。
三期12年で改革に目処を付け、村長を勇退。

■見城俊昭氏(大野城市教育部長)
1955年生まれ。官民連携と行政改革による新しい公共サービスの先進かつ成功事例として全国的に有名な大野城市にて、総務部財政課長、企画制作部自治経営推進課長などを経て現職。予算の枠配分方式を取り入れた独自の事後評価システム「フルコスト計算書診断」や「初期診断」、「民間活用の在り方診断」「業務システム最適化診断」からなる「公共サービスDOCK事業」や、市民と行政の協働の拠点施設となるコミュニティセンターを核とした都市内文献による「新しいコミュニティによるまちづくり」、全国初となる「電話交換一体型コールセンター」と、企業との協働によるワンストップ対応の総合窓口「まどかフロア」等により、人口約95,000人に対して市職員約360名という全国トップレベルの効率を誇る。

■定野司氏(足立区総務部長)
1979年埼玉大学卒業後、足立区役所に入庁。財政課長時代の2002年度に予算査定を各部が行い、予算執行の後に事務事業評価を行う包括予算制度を導入。その手法が経済財政諮問会議の視察を受けて注目を浴びる。以来、粗大ごみの収集を無料化してコスト削減を図るなど、一貫して自治体における予算制度改革やコスト分析による行政改革を提唱、実践。環境部長時代の2008年、環境省の事業仕分けをきっかけに、自治体の事業仕分けに参加。2012年7月に150以上の自治体を会員とする日本公共サービス研究会を立ち上げた。著書に「図解よくわかる自治体予算のしくみ」「みるみる仕事が片づく!公務員の時間術」がある。

■後 房雄 氏(名古屋大学大学院法学研究科教授)
1954年富山県生まれ。専門は、政治学、行政学、NPO論。設立時より特定非営利活動法人市民フォーラム21・NPOセンターの代表理事を務める。研究者と実践者の両方の立場から、社会貢献性と事業性を両立させた事業型NPOの経営者として、多くのNPOを有給職員を持てる財政規模に成長させている。公益社団法人日本サードセクター経営者協会代表理事。主な著書に「NPOは公共サービスを担えるか(法律文化社)」「準市場 もうひとつの見えざる手‐選択と競争による公共サービス‐(法律文化社)」などがある。

新しい自治体のカタチへの潮流〜住民自治組織から近隣 新しい自治体のカタチへの潮流〜住民自治組織から近隣政府へ〜 [2012年11月01日(Thu)]
三豊市の市民と市との挑戦
政府・行政セクター、企業セクター、サードセクターの3つのセクターは一体的に変化し、互いに連携・協力しながら、地域や社会の課題を解決できる新しい社会システム構築に向けて各セクターの自己改革も進んでいます。そこで国民が主役、市民が主役の「国のカタチ」、「自治体のカタチ」へと自治体のありかたとは何か、市民の代表でない、一人ひとりの市民がどのように市民が主役となる自治体に市とともに変えていくのか。「新しい自治体のカタチ」に向けて自治体の仕組みについては地方自治法には示されていません。住民自治基本条例が各自治体で策定されてきていますが、理念条例が多く、近隣政府(自治体内分権)の仕組みを具体的に示しているものはいまだ少ないと思います。ところが実践において全国各地で、「新しい自治体のカタチ」へと改革をめざし、そのまちの市民と行政が暗中模索、試行錯誤しながら新たな一歩を踏み出し、一歩一歩確実に改革へと進んでいます。

「変化の兆しは地域にあり」

 2012年10月27日、三豊市のまちづくり講演会&パネルディスカッションにお招きいただきました。三豊市では「まちづくり推進隊」が市の移譲事務を行うとともに、地域の課題を自ら考え解決するために今後は自主事業を考え実行していく予定です。市としてはまちづくり推進隊という新たな民間組織が地域との連携を大切にしながら、自発的に活動する新しい公共の担い手を育てようとするものです。担当課の話では、まちづくり推進隊の設立総会では、性急すぎるなどの意見がだされ議論が紛糾したそうです。パネルディシュッカッションには横山忠始市長も登壇され、まちづくり推進隊への熱い思いや期待をお話されました。詫間地域においてモデルとしてまちづくり推進隊を設立しその事務局長を務めてみえる小玉友良氏は、次世代につけをのこさないようにしたいと力強く決意をお話してみえました。香川県の地域づくり推進室の森本哲司氏は自らの経験からも近隣政府(自治体内分権)の推進にむけて、地域を自らつくっていく「楽しさ」をお話されました。また、パネラーのお一人の朝来市の馬袋真紀氏からは、朝来市の与布土地域自治協議会の先駆的な取り組みを紹介頂きました。注目すべきことは、将来は「与布土村役場」を目指すと明言され、まさしく近隣政府を目指してみえます。
三豊市は地域における新たな新しい公共の担い手を育成するとともに、本格的な自治体改革へとスタートをきりました。しかし、注意すべきことは、二つあります。ひとつは従来の組織のネットワークから始めるのではなく、市民の意志による自発的な集まりを最も尊重すべきであるということです。現在の活動している地縁組織との軋轢を懸念し、本来の目標を見失い、当面できることだけを行っていては、改革はすすみません。次に、住民自治の確立を目指すのであらば、近隣政府において、決定と実施を分離し、だれしも納得する決定機関をどうするかが課題となってきます。
 いまやどこの自治体も地縁組織においては、強制的な共同労働が難しくなってきています。全国で新しくできつつある地域自治組織、地域協議会に関しても、これまでの地縁組織の役員等にて構成すれば、当分の間は機能し、成果はだしていくものと思われますが、今後さらに、住民の民主主義意識や自己決定の高まりなどを考えると、近隣政府(自治体内分権)の導入、地縁組織などの自発的民間組織への転換、行政と民間団体との対等な契約関係を軸とした本格的な自治体改革は避けられません。その地殻変動が全国各地の自治体において、失敗を恐れず、試行錯誤で始まっています。
 政府の新しい公共の推進会議の議論は寄附をいかに集めるのか、またそのためのインフラ整備ばかりで、そろそろ次のステージにいってほしいというジレンマがあります。全国各地で活動する民間非営利組織自身が成果志向となり、そもそもの経営力の向上を目指すことと市民による本格的な自治体改革に関しては、問題提起をしても議論になっていきません。今回の講演会のようにそのまちの市民のみなさまや、自治体で現場で取り組んでみえる職員みなさんとの議論は、新しいことに取り組むことは課題が多いのは、当たり前であり、それでも先に進もうとする姿勢、意欲がおありで、とても興味深く、楽しいことです。私たちの目指す未来はすぐそこにみえてきています。市民の力でその扉をあけようとしてみえます。
三豊市のみなさん、関係者のみなさんありがとうございました。

バウチャー制度(準市場)とNPO [2012年09月22日(Sat)]
 今日は、市民フォーラムの総会です。総会シンポのテーマはバウチャー制度(準市場)とNPOです。
 新しい公共の推進として、NPO法改正、寄付税制の見直しがされました。これは評価すべきことです。ただし、各都道府県においては、新しい公共の支援事業として、制度についての研修会、会計基準の啓発、情報公開への促進、NPOへの寄付が集まるようなワークショップなどが開催されています。
 このままでは・・・・次年度からのNPOはどうなるのか、心配しています。

 まずは、サードセクター組織の自らの経営力を問うべきであり
 サードセクターのパートナーとなる政府・行政の抜本的な改革、特にサードセクターの経営に大きく影響を及ぼす公共サービス改革について、正面から議論すべきではないでしょうか。

 サードセクター組織の収益構造は大まかにいって、寄付10%、利用料金、事業収入50%、公的資金40%であり、直接対価を得にくいサービスを多彩なステークホルダーからひきつけて経営していきます。寄付か公的資金かの問題ではなく、その40%について議論をさけてはいけないはずです。公的資金は納税者へのアカウンタビリティを堅持しつつ、公的資金がサードセクター組織に支払われる際の制度を最大限改善すべきです。そこでバウチャー制度(準市場)が注目されると思います。

 有給職員を雇用するサードセクター組織への有効な支援は競争にて仕事をだすことです。そして利用者がサービスを選択できるようにすることも大切です。そのことで、職員の専門性も上がり、自らの努力で労働環境も改善されていきます。志高き市民が社会の担い手となっていきます。

やさしく、強いサードセクターの経営者やスタッフの力が発揮できる環境をつくることで、公費と公費外を組み合わせ、利用者目線の新しいサービスを提供できるようになってくるのではないでしょうか。

 本日は、登壇者はNPOの実践者、政府関係者、自治体関係者、議員、研究者であり、異なる立場から議論します。また会場には賛成反対両意見の方が参加されます。まずは上面から議論します。

 サードセクターの経営力については、被災者のかたの起業支援にて私たちが学ぶことがあり、また意見を述べます。
政府と市民セクターとの関係 [2011年07月23日(Sat)]
 7月20日新しい公共の推進会議より、「政府と市民セクターとの関係等の在り方の報告書が提出されました。ここで、私たちが考え行動すべきことがあります。

 この報告書にて評価すべき記載があります。私どもJACEVOも首尾一貫提言をし続けました。それは政府セクターと企業セクターと並び、ひとつのセクターとして、特定非営利活動法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、医療法人、特定公益増進法人(学校法人、社会福祉法人等)、協同組合、法人格を持たない地縁団体(自治会・町内会・子ども会、PTA、ボランティア団体等)等の民間非営利組織の他、公益的な活動を主な目的とする営利組織をすべて包括して考えています。それを「市民セクター」としています。「市民セクター」は狭義にNPO法人や市民活動団体というイメージをもっている人が多いと思います。今後この名前でよいかどうかは考えたほうがよく、JACEVOではサードセクターとしています。

 次に内容ですが、各論において、企画立案、契約、選定、実行、評価など実に丁寧にとりまとめられています。しかし、なぜこのような関係の在り方が必要なのかが明示されていません。そもそも専門調査会は「政府と市民セクター等との公契約等の在り方等に関する協約」について議論するはずでしたが、参加した委員は各論に関心が高く、そのことに議論が深まり「政府と市民セクター等との公契約の在り方に関する協約について」は以下の3点により、継続して検討することとなりました。
1.協定の目的・役割
2.市民セクターの代表性のあり方
3.協定の法的性格及び実行性、策定プロセスの課題
この3点について私は、すでに具体的に提言しているにも関わらず、ほとんど議論されないまま、各論をきれいに整理された報告書がだされました。このことにつき私は意見書をだしました。
内閣府のHPをご覧ください。http://www5.cao.go.jp/npc/shiryou/shiryou.html

そもそも「政府と市民セクター等との公契約の在り方に関する協約」により、政府がサードセクターの役割と価値を重視することを市民や自治体に公式に表明することが求められます。それは国や自治体の改革をも意味します。自らをダイナミックに変えないまま、関係だけが変わっていくことはないはずです。それぞれも変化しながら関係も変わっていきます。重要なことは、政府の最初の明確なイニシアティブとして、政府とサードセクターがそれぞれの責務と姿勢を約束します。そのことがないと、自治体も意義や意味がわからず理解せず、各論の報告書だけをたよりに混迷をしていきます。

寄付すれば税金がへる優遇税制と、寄付対象の認定NPO法人を大幅に増やす改正NPO法が成立しました。寄付白書2010によれば日本の個人寄付は5455億円で米国の19兆円とは2けたも違います。これはサードセクターの経営の視点からみれば重要なことです。それと並行して、政府とサードセクターとの関係を考えるべき時です。

最近の新聞記事にこのような掲載がありました。
『寄付文化が定着すれば、これまで通り「古い公共」へ納税して行政サービスを受けるか、事業内容を見たうえで「新しい公共」を支援するのかを選べるようになる。』

 これは、政府・行政セクタ―内の資金とサービスの提供、サードセクター内の資金とサービスの提供を分断している考えのように思えます。サードセクター組織の収益構造は、会費・寄付だけでなく、助成金、補助金、委託、自主事業などです。特に委託などは重要な資金源です。サードセクター側からみれば公的資金を活用し、制度内サービスと制度外サービスをトータル的に提供することで、民間が提供する新しい公共が創出されていきます。納税したあと、市民は、政府行政に丸投げではなく、政府・行政のP-D-C-A各段階に積極的に参加する。決定と実施を分離し、実施をサードセクターが担っていきます。

 政府・行政とサードセクターとの関係だけをみていると、サードセクターを安く使い、効率性を高めることに注視することになりがちです、サービスを受ける市民のことを考え、それぞれが役割と責任を果たすために約束をすると考えるべきです。サードセクターの価値を活かすこと質の向上と量の拡充が図られ、同時に納税者へのアカウンタビリティを果たすという両面が求められます。
日本版コンパクトNO4 [2011年03月10日(Thu)]
3月9日第4回政府と市民セクター等との公契約等のあり方等に関する専門調査会が開催されました。私はオブザーバーとして参加しています。これまでは専門調査会をどのようにすすめるかという議論、もしくは各委員からの各論における提案が多かったとの印象がありますが、事務局の論点整理ペーパー、座長が各論点に対し意見を求めるという取り回しにて、委員同士の意見交換ができるようになりました。各委員の発言は内閣府のHPに公開されますので、ご覧いただければと思います。
各論点整理については、私がこれまで提言してきたものと、ほぼ同じでしたので、各委員の発言をお聞きし、特に重要なポイントのみ意見を述べていきました。
専門調査会においては各委員の意見をお聞きし、政府とサードセクターの協約の内容や策定方法は「新しい公共の推進会議」にて議論することとなりました。次回「新しい公共の推進会議」開催までに、JACEVOにて緊急集会を開催し、意見を頂いていきたいと思っています。

専門調査会では大きく1から5にわけて議論されましたが、1から4は各論、5が総論となります。
1.政策の企画立案等に関する主な論点
論点1政策の企画立案への参画機会の確保
論点2提案型協働事業の導入促進
2.委託契約に関する主な論点
論点3間接費などの適切な積算
論点4担い手の選定の競争性・透明性・公平性を確保しつつ創意工夫や社会的価値を評価する仕組み
3.その他公的資金のあり方に関する主な論点
論点5バウチャー制度の推進
4.人材に関する主な論点
論点6人材育成・交流の促進
5.協約に関する主な論点
論点7政府と市民セクターとの協約について

私の意見は
1.企画立案においては、目標に対し有効であるかどうかで採用するかどうかの検討や審査があるはずであり、そこで自治体において目標があきらかになっている自治体が少ないことが課題です。
2.委託においては、プロセス評価ではなく、成果を評価し、サードセクターが公共サービスの実施において付加価値が付けられるような契約の在り方を検討する必要があると指摘しています。
また、サードセクターは専門性を有すボランティアが活動をする場合があります。その専門性は組織のミッション達成のために組織の資源となるものであり、委託契約においてボランティアの労働力やスタッフの専門性を安く政府・行政が吸い上げてしまうことがあります。
3.バウチャーについては、私が子育て政策などで提言をしています。またJACEVOの代表理事がルグランを約していますので、ご覧下さい。
4.人材育成・交流については専門調査会の委員からも発言があり、私も全く同感でした。新しい公共の推進会議においても人的交流が提案されますが、私は、サードセクターの経営力が課題であると主張しています。それは、交流を進める前に、サードセクターにすぐれた経営者、労働者が存在することが重要であり、サードセクターの経営者が少ないことを課題として捉えています。
5については、提言書を提出しましたので、ご覧いただきたいと思います。
内容は下記に掲載しました。

1 協定の目的・役割は何か
●なぜ必要なのか
多様化する公共サービスへのニーズに、政府がすべて答えるには限界があります。国民のニーズに機敏に応えることができるサードセクターの特性に期待が高まってきています。日本ではすでに公共サービス改革がすすんでいますが、政府側の一方的ルールにて、サードセクターの自律性を尊重することなく、安価な担い手として安づかいされる危惧があります。

●協約の目的・役割
協約を締結することで、「新しい公共」の実現のために、政府がNPOや、より広範なサードセクターの独自の役割と価値を重視することを公式に表明し、発信することになります。

政府とサードセクターの関係を変える「転機」となり、それぞれ異なる特性を持つものが協議をくりかえし、信頼関係を築く土台とします。

<参考>
「コンパクトの意味することは、政府・行政は自ら提供できないものを提供できるパートナーを発見できるということであり、NPOは政府・行政が提供できるものの範囲を拡大する存在だということです。もうひとつのレベルは、二つのパートナーが率直に意見交換できるパートナーシップ関係、信頼関係を確立することです。これらの収穫物を手に入れるためには、あなたの潜在的なパートナーと議論できるような「空間」問題点がテーブルに載せられ素直に議論される「空間」を確立しなければなりません。ある種の協議期間が絶対に不可欠であり、文書をつくってからそれについて協議するのでなく、協議をしてから文書をつくるのでなければなりません」
ニコラスディーキン教授談
『イギリスNPOセクターの契約文化への挑戦』
市民フォーラム21・NPOセンターブックレット

2 協定締結を通じて克服しようとする課題はなにか
●締結までの協議プロセス自体が、これまでの政府‐サードセクター関係が転換しつつあることを広く示すことになります。
●これまで省庁毎に分断されてきたサードセクターの一体的存在感を社会全体に向けて発信する最初の機会となります。
●「官から民へ」という方向で、公的資金を用いて行われる多様な公的事業の実施がサードセクターに委ねられつつあるなかで、従来のような外郭団体・天下り現象を再現させたり、サードセクターを安づかいすることなく、公的資金に関するアカウンタビリティを確保しつつも、サードセクターが創意工夫を発揮できるような自律性を保障するような政府‐サードセクター関係を構築していくための土台を築くことになります。

<協約の締結のあとに>
協約を締結したあとも、さまざまな課題解決のために、政府とサードセクターの間で話し合いの機会を定期的の設け、ともに改善策に智恵を絞り試行錯誤を続けながら、信頼関係を構築していく努力を続けていくことが肝要です。協約は絶えず変化を続けながら、互いのよりよい関係を探っていくためのツールです。

3 協定の内容
 その内容は、両者の協議のなかで模索されるべきものですが、政府とサードセクターがお互いの独自の役割と価値を承認し合い、政府活動や公的資金に関する国民へのアカウンタビリティを確保しつつサードセクターの自律性を最大限に保障するためのルールについて合意することが中心的内容となります。

これを出発点に、サードセクターを担い手として位置づけた公共サービス改革、(担い手の選定、成果を明示した契約、フルコストの保障など)政府によるサードセクター支援政策、サードセクターが担い手として活動しやすいようなインフラ整備などの政策が展開されていくことが期待されます。
公共サービス改革における要点も明記しておくのがよいと思われます。

4 協約の締結主体
サードセクターの代表の問題
現在日本のサードセクターは各省庁よりタテ割りにて、まとまり弱いということを理由に政府側からの一方的な指針などとするのではなく、パートナーとしてのサードセクターの形成をしていくことが必要です。その必要性を捉え出発点とする方法を考えるのがよいと思います。策定プロセスが重要となってきます。
またイギリスでは、セクターを代表した団体が署名、ワーキンググループのメンバーが署名、ローカルコンパクトになると個々の団体が署名するという方法がとられていました。ワーキンググルーメンバーによる署名も、個々の団体の素案に対する意見を求めフィードバックするという手順を踏んだために個々の団体の理解が得られたのではないかと思われます。

5 締結までの手順(案)
●政府側委員と民間側委員とで、協約の締結までのプロセスに責任をもつ委員会を設立し、締結までの基本方針を決定する。
●従来の政府‐サードセクター関係の実態や課題を調査し、適切な政府‐サードセクター関係を構築するために双方がどのような責務や姿勢を約束すべきかを検討する。(現在調査中)
●政府側、サードセクター側がそれぞれ協議を行い、相手側及び自らの側の課題、約束すべきことについての草案を作成する。
●政府、サードセクターがそれぞれ相手側の草案について検討し、意見書をまとめる。
●委員会において、双方の草案と意見書を総合的に検討したうえで、協約の第一次案を作成する。
●広くパブリック・コメントを求める機会を設け、政府、サードセクター、国民などからの意見を求める。
●委員会において協約の最終案を決定する。
●政府の代表(首相および担当大臣)が協約に署名する。その後、サードセクターを代表する複数の団体、もしくは素案作成委員、自治体の首長などが署名する。なお、自治体毎に両セクターの協議を経て独自に協約を締結することも奨励される(自治体版協約)。
●協約の共通原則や政府側の約束の部分については、それを「基本法」の形で法律化することが望ましい。サードセクター政策や公共サービス改革についてのより具体的な方針については、「大綱」の形で閣議決定されることが望ましい。

日本版コンパクトNO3 [2011年03月05日(Sat)]
3月4日 「どうなる日本版コンパクト緊急集会in名古屋を開催しました。

お忙しいところご参加いただきありがとうございました。

 新しい公共の円卓会議の宣言を受けて、今は、政府とサードセクターなどとの関係について、何かを示すという段階にあります。
今回のことはサードセクター側からの運動として起きたことではありませんが、JACEVOは2年前から、政府とサードセクターとの協定が必要であると唱えています。組織としてはまだまだ非力だと思っています。しかし、今政府でこのような動きがある中で、新しい公共の推進委員としての立場もあり、この機会を活かしできるだけのことはしたいと思っています。

全国都道府県、市町村では現在、75%ぐらいで協働の指針のようなものが策定されています。それと比較し、協定をつくっているのは、愛知県と東海市ぐらいです。協働の指針と協定は違います。協働の指針は自治体側がつくっているものです。協定は、政府がサードセクターを対等な立場と位置付け、双方がその姿勢と責務を約束するものです。
愛知県や東海市がどう変わってきたかを伝えることも大切かと思います。
協定を結ぶには、サードセクターが形成されていないという課題があります。課題があるからやらないということでなく、どのようにしたらよいのか考えて提言していきたいと思っています。

【意見交換の内容】
・行政という組織が必要かどうかというところまでいく。サードセクターにどこまで仕事をだすことができるのか。
・市民セクターが形成されていない。方向性はその通りだと思うが、市民セクターと政府が対等だということを政府が理解できるか。市民セクター側からの働きかけが必要。
・あいちのルールブックのように、理念と概念の当面の立地点をどこにするか、市民セクター(JACEVOなど)が主導して議論するべき。
・政府・行政の縦割りをどうすか。
・日本版コンパクトの骨組みが政府で議論されているのか。JACEVOができて一年半だが、現状どうか。
・NCVOなど調査にいった。それが日本でできるのか。条件がそろわないからやらないのではなく、走りながらやる。一歩を踏み出したということは評価したい。サードセクターが政府と対等な立場で契約できるか。JACEVOと公法協、日本NPOセンターなどが協力して契約を結ぶなどの動きが始まると良い。
・コンパクトという名前は日本語に変えたほうが良い。必要だということには意義ない。今のように政治情勢が混沌としているときには、難しい。市民セクター側が団結することを進めたほうが良い。これだけ広い範囲で集約するというのは難しい。
・カナダでは、NPOが地域をマネジメントしている。ボランティアを動かす仕事をするひとは有給でやっている。そこまでいくのに100年かかった。日本も時間がかかる。
・防災の活動をしている。行政と協働をすることが増えてきた。行政は冷たく公平。ボランティアは温かく不公平と言われる。どううまくつなげるか。
・行政は縦割りであり、コンパクトを考える上で壁になると感じる。色々な団体を網羅すると、経団連と中小企業のような関係になってしまうのではないか。
・サードセクター側が署名することができない。政府とNPOが対等な関係にはなっていないと経験上承知している。
・物理的な意味での対等を望むのではなく、もっているものの違いで対等となる。国にはできないことがあるということを認め、サードセクターに力を借りようと決めたのがコンパクト。
・愛知県、名古屋市と事業をしてきている。愛知県は、終わった後、行政とNPOのかかわり方を改めて振り返る。名古屋市はなにもない。NPOはボランティアだと思っている。職員は好きでやっている活動にお金は出せないという。
・精神論であっても、政府から一種の大号令は出してもらう価値がある。

たくさんのご意見ありがとうございました。

私は、実践者です。政府・行政は課題があるからやらないという選択をするかもしれません。特にサードセクターが形成されていない、つまり政府が署名する相手がいないという課題を問題視すると思います。でもわたしは、せっかくここまできていますので、フロントラインのサードセクター組織の良さが発揮できるように少しでももっていきたいと思います。政府ができないことがある領域があることを認め、そのパートナーがサードセクター組織であることを認め、サードセクター組織と同じテーブルで議論することを始める出発点です。まずはじめることだと思います。
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