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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


民主党政権の二つのシナリオ [2011年08月31日(Wed)]
野田新代表・総理は、幹事長、幹事長代理、国対委員長などの要職を小沢・鳩山派に渡し、党内対立の解消を最優先したようです。小沢氏を党員権停止のままで重要閣僚にするという案まで野田氏は考えていたそうなので、意識的な路線選択といえるでしょう。(いうまでもなく、小沢氏は幹事長を握ることが最優先なので受けませんが。)

この後のシナリオとしては、野田政権がそれなりの成果をあげて来年9月の代表選挙でも再選されて2013年の総選挙に臨むというシナリオで、民主党にとってはべストなシナリオですが、復権を狙う小沢氏にとってはなんとしても阻止したいものでしょう。

もう一つは、小沢戦略で、来年9月までの間は最低限の協力姿勢は見せつつも、はやり野田ではだめだという状況を作ったうえで次の代表選で当選して復権し、自らの手で解散総選挙を打って勝つというものです。

これでは、民主党の首相が3人続けて失敗するということになるわけで、党内の小沢ファンにとってはよくても、民主党全体が国民的に見捨てられてしまう危険が大きくなります。でも、小沢ファンからすれば、そこを小沢なら一発逆転できる、ということなのでしょう。

しかし、小沢氏の説明嫌い、発信不足を考えると、後者のシナリオの成功可能性はかなり小さいと思います。成功したとしても、党内対立は再び再燃してしまうでしょう。

(なお、こうしたシナリオを考えざるをえないのは、民主党代表選挙が残任期間に縛られてほぼ毎年行われているということがあります。新しい代表は最低でも2年間の任期を保障されるようにすべきです。また、よほどの失敗がない限り、総理を務める現職の党代表は再選するという慣習を確立すべきです。)

ネジレ国会のもとでの野党との関係(参議院問題)、党内小沢勢力への対処、政治主導の暴走で引いてしまっている官僚と関係修復、政務三役の統治能力や国会運営能力の向上など、この2年で露呈した問題が山積みですが、求められるのは、快刀乱麻の解決ではなく(これは不可能でしょう)、パフォーマンスの姿勢を捨てて国民の目の前で真摯に問題に取り組むことと、小さい成功を一つずつでも積み上げることでしょう。

演説の評判の高い野田さんなので、国民に正面から訴えて理解を広げることで活路を開いてもらいたいと思います。