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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


守屋武昌 [2010年07月29日(Thu)]
守屋武昌『「普天間」交渉秘録』新潮社、2010年。

元防衛事務次官で、その後収賄で逮捕された人ですが、防衛庁の役人の目から見た普天間問題の経緯が非常にリアルに描かれています。3年以上も次官を務めたのは、やはり非常に仕事の出来る人だったということなのでしょう。

そのなかで浮かび上がるのは、沖縄側のタフな揺さぶり、駆け引きに政府や国会議員が翻弄されてきた歴史です。利権もあり、基地を押し付けてきた本土への反感もあり、その動機も一筋縄ではいきません。

これに、利権のおこぼれを狙ったり、功名を狙ったりする議員たちの動きが重なって、官邸や大臣、防衛庁の役人たちはへとへとになります。外務省の防衛庁への対抗意識もあります。

アメリカなど、沖縄側が納得して決まるなら何でもいいというような感じです。

こうしたなかでともかくもまとまった政府案を鳩山首相は白紙に戻してしまったわけで、ここからもう一度沖縄側の合意を得るというのは気が遠くなりそうです。しかも、沖縄側の対応の背景にある本土への反感には歴史的正当性があります。

こうした利権、功名の渦の中で、まともに問題を解決しようとする人を見出して交渉を進めていくのは並大抵の仕事ではありません。

これほど絶望的に複雑な問題はほかに見当たらないほどです。

続けて、森本敏『普天間の謎』海竜社、2010年、を読みはじめました。