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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


イギリス総選挙 [2010年05月08日(Sat)]
5月6日のイギリス総選挙の結果は、定数650のうち、保守党306、労働党258、自由民主党57、その他29と言う結果でした。13年ぶりに保守党が第一党になったものの過半数に届かず、自由民主党がキャスティングボートを握ったわけです。

まずは保守党と自由民主党の連立交渉が開始されました。(労働党)政府として、両党の交渉を調整したり場所の提供をしたりしているようで、政党政治がかなりの程度まで表で展開されているのは日本とかなり様子が違う感じです。

イタリアもそうですが、当然水面下での交渉はあるものの、表でもかなりの程度まで詰めた議論や交渉をやるところはいいですね。

議席数からすると有力選択肢は保守党と自由民主党の連立です。しかし、今回、支持率では三つ巴まで持ち込んだ自由民主党は比例代表制の導入を最優先事項としており、保守党はそれには絶対反対のようなので、合意が成立しない可能性があります。

労働党の方はやや柔軟で、選挙制度について国民投票を実施するという提案を出しているので、自由民主党が暫定的にそちらと組む可能性も残ります。2党だけでなく、他の小政党もいくつか加えないと過半数議席にはなりません。ということは、比例代表制にかなり傾斜することになるでしょう。

こうした状況について、日本でも小選挙区制や二大政党制を見直すべきだというコメントも出ていますが、あまりに短絡的です。

保守党18年、労働党13年という長期政権のなかで、両党ともに金属疲労が蓄積し、民意とかなり乖離してきたというのは事実でしょうが、そのことと、二大政党制そのものの危機とは別問題です。

かつて、自由党に代わって労働党が台頭して新しい二大政党制が成立したように、二大政党それぞれの再編成は課題ですが、それを二大政党制(政権選択型の政治システム)自体の見直しにまで直結すべきではないと考えます。

せいぜいありうるのは、日本やイタリアのように、一定割合の比例部分を導入しつつ(少数政党にも議席を保障する)、政権選択システムという基本的性格は堅持するという選択肢でしょう。