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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


地域委員選挙 公開討論会 [2010年02月22日(Mon)]


名古屋市の「地域委員会」(小学校区単位のボランティア議会)の選挙が始まっています。2月18日から今日22日までが選挙運動期間で、26日までが投票期間です。

まずは8学区についてのモデル実施ですが、来年には全市に広がって欲しいものです。投票するには事前に登録する必要がありますが、平均で10%の人たちが登録したようです。

今日は、モデル地域の一つ、千種区田代学区の立候補者公開討論会に行ってきました。5人の推薦委員候補(信任投票を受ける)のほか、6人定員の公募委員の立候補者は17人に上っています。年齢は19歳から80歳までです。学生も大学教授もいっしょに立候補しています。

今日は、一人3分ずつの発言時間でしたが、それでも実に多様な人が真剣に立候補されていることがよく分かりました。聴衆も100人を越え、多くのマスコミも来ていました。

印象深かったのは、推薦委員候補となった学区連絡協議会の会長さんが、名古屋市で1番の地域委員会のモデルになることをめざしたい、若い人や女性含めて予想を越える立候補があったのは田代学区が開かれていることを示すことでうれしい、などと発言されていたことでした。

地域委員会の議会可決、モデル実施への応募などに執拗に抵抗してきた地域ボスたちもいるなかで、こういう地域リーダーもいるということを力強く感じました。

候補者の発言では、政策と並んで、地域委員会と言う仕組みに是非参加したいという意欲が示されたり、今回のように予算編成(田代学区は1500万円)の政策テーマを事前に1つに決めるのは今後はやめるべきだ、推薦委員という枠も次回からはなくすべきだ、などという制度への提言が示されたりしていました。

全体として、職業政治家や地域ボス機構によって疎外され抑えられてきた市民のエネルギーがついに出口を見つけたという印象を強く持ちました。もう後戻りは不可能でしょう。

田代学区の会長さんのように、この趨勢を受け止めれる地縁組織のリーダーたちと、それを押しとどめようとする地域ボスたちの分岐がますますハッキリしていくだろうと思います。

「地域のことは(民主的な選挙を通じて)地域で決める」という原則を実現する条件は名古屋市では完全に整っています。職業政治家や公務員たちがそれを受け入れれるかどうかです。

ちなみに、区役所職員たちの設営や討論会運営のどたばたを見ていると、彼らが地域委員をきちんとサポートできるかどうかが少し不安になりました。地域委員会は、市職員にとっても、またとない、厳しい試練と成長の場になるだろうと思います。しかし、それを乗り越えなければ、地域主権時代の自治体職員は務まらないでしょう。