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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


政治主導 [2009年09月22日(Tue)]
 8月30日の歴史的な政権交代選挙を経て、新政権の立ち上げ段階に入っている。毎朝、新聞を読むのが楽しみだという人も多いようだが、実際、次々と新鮮な打ち手が繰り出されており、飽きさせない。私も9月16日の鳩山新首相選出以降の数日を大きな関心をもってみてきたが、さまざまな動きを理解するキーワードは「政治主導」だと思う。

 政治主導というのは、政治家(与党議員)が官僚たちに威張り散らすことではない。与党のマニフェストを着実に実行するために、議会多数派(与党)=首相=内閣=大臣・副大臣・政務官(政務3役)が各省官僚に対する政治的指導力を発揮することである。こうした議院内閣制の基軸ラインを貫徹させることが政治主導なのであって、このラインの外で、与党有力者やましてや野党議員が官僚を動かすことは本来の政治主導からの逸脱でしかない。

 自民党政権時代の1980年代からすでに政治主導が実現しつつあるという政治学者もいたが(いわゆる「族議員」現象)、政府・与党の二元体制のもとで、政府に入った政治家たちは当然ながら官僚に依存し、強力な影響力をもつ与党幹部もまた官僚に依存していた状況で、政治家による口利きや利益誘導はあっただろうが、本来の政治主導が確立するわけもない。

 政治改革からの15年間で、小選挙区制(政権選択型の選挙制度)の導入、マニフェスト、官邸機能の強化、副大臣・政務官制度などのインフラが整備されてきたわけだが、有権者の選択の直接の結果として政権交代が起こったことで、ようやく、これらのインフラをフルに活用した本来の議院内閣制型の政治主導への歩みが始まったのである。
 
 しかし、まさに「未知との遭遇」(鳩山首相)であるため、与野党政治家にも、マスコミにも、有権者にもさまざまな動きについての理解に混乱がみられるようだ。そうした無理解からの批判で政治主導への歩みが遅れるのは残念なことである。私も一応政治学者の端くれなので、このブログを借りて、できる限りの解説をしていきたいと思う。

 日本サードセクター経営者協会(JACEVO)の3つの役割の一つは「提言する」である。その役割を有効に果たすためにも、本来の政治主導が不可欠である。そして、民間団体の側もまた、超党派の議員連盟を通じた従来型の不透明な立法活動から転換して、二大政党制に適合した政府や政党への働きかけの新しいスタイルを身につけていくべき時期である。