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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


第三極は野合か [2012年11月18日(Sun)]
出張つづきで、なかなか書けていませんが、12月16日総選挙に向けて動きが激しくなっていますね。

さすがに、選挙が近くなってくると、小選挙区制という制度のことをみんな思いだすようです。要するに、定数1を争う以上、1か0なのであり、過半数を取って政権を取るか負けて野党になるかが最大の問題だということです。

第三極論もそうした圧力のもとでようやく本筋に近づきつつあります。つまり、全国の小選挙区に統一候補を立てて過半数議席を狙える体制を構築できるかどうか(構築する意思があるかどうか)が決定的なポイントであって、従来の「みんなの党」のように選挙後の政界再編などというのはピンボケだということです。

なおかつ、民自公で、2015年度まで赤字公債の発行を参議院で止めないという合意を作ったので、参議院多数がなくても最低限の政権運営ができる条件が作られました。要するに、首班指名、予算案、条例で優越的権限をもつ衆議院の多数さえ確保すれば政権が取れるということです。

こういう視点で考えると、本筋を明確に理解しているのは小沢一郎と石原慎太郎だけだということが明らかです。橋下徹は、維新の会の勢いが少し陰ってきたこともあって、ようやく一気に過半数をめざすべきであって、そのためには広範な政党連合を組むことが不可欠であることを急速に理解しつつある感じですね。

こうして、第三極は、石原・橋下グループと小沢グループの二つに集約されつつあります。

最後の論点は、この両グループが政権をめざして小選挙区の候補者統一を含む事前の連携を構築できるかどうか、すべきかどうかという一点です。

政治とカネの問題を引きづる小沢一郎と組むことの利害得失の判断で、橋下は6−4か7−3くらいで組まない方が得策と見ているような感じです。小沢も、社民党との連携に動いているという報道もあります。「脱原発」で勝負するという戦略からはありうることです。

そうはいっても、公示直前くらいのタイミングで、第三極の2グループが連携成立を発表すれば衝撃的なニュースになるとは思います。小沢ー橋下ラインが水面下でまだ続いているのかどうかは気になります。

ここで問題になるのは、最近のマスコミでよく出る「野合」批判です。

政権を取るために政策の違いを無視していいのか、ということですが、ではどこまでの違いなら政権を取るために許されるのかという基準でも持っているのでしょうか。

これは問題の立て方が根本的に間違っていると思います。それぞれの政党や勢力が政策や理念で異なっているのは当然の前提であり、問題は、小選挙区制で意味のある政権選択肢を形成できるかどうか(形成しようとするかどうか)です。

そのためには、全国の小選挙区に統一候補を立てて、自公や民主に勝てるだけの勢力を結集できるかどうかと、その連合が信頼性をもつだけの統一政権政策(マニフェスト)を提示できるかどうかの二点が不可欠です。

マニフェストは、4年間限定の政権政策として、参加する政党がなんとか合意できることのみを書くしかないのであって(だから理念や長期的政策を書く必要はないし、書けるはずもない)、問題は、そうして出来たマニフェストが国民が支持し、信頼できる水準のものになるかどうかです。「野合」という印象を与えるとすれば、それは国民に選ばれないだけの話です。かなり限定的なマニフェストであっても、自公政権や民主党政権に比べればましだという評価が得られる水準でさえあれば勝つこともできます。

ここで、当然ながら、民主党は寄せ集めで、マニフェスト実現を4年間追求することすらできなかったではないかという批判が予想されます。ここには、衆参二院制の矛盾が重大な要因であったことの認識が弱いという問題はありますが、民主党のマニフェストを実現しようとする共通意思の弱さという問題はそのとおりです。

しかし、だから4年間限定のマニフェストを軸にした政権連合の形成(民主党は形は政党ですが、実質は政党連合だったと見た方が正確です)という「オリーブの木」方式が間違いかといえばそうではありません。

政党連合方式が一度失敗したからといって、またばらばらに候補者を立てて共倒れして、結局は自公政権を許すというのでは元の黙阿弥です。

それぞれが単体で政権選択肢となりうる二大政党が確立するまでの間は、政党連合も含めてせめて複数の政権選択肢が用意されることが小選挙区制での政権選択選挙を実現するうえで不可欠です。今後努力すべきことは、そうして勝利した政党連合が、せめて4年間は契約通りにマニフェストを軸にした政権運営に責任をもつという習慣の定着です。

私自身は、一度や二度の失敗があっても、あくまでも政権選択選挙を繰り返すことが、国民の判断能力が向上し、政党、政治家側の統治能力も向上する王道だと考えています。ここで、安心できるから、などという幻想で自公政権にもどるなどというのでは、何のための政治改革だったのかということになります。

誰が好きとか嫌いだとか、負けても政策にこだわるとかいう悪習を捨てて、総選挙の度にぎりぎりの選択で二つの政権選択肢に結集して競い合って国民の審判を受けるという気風をもつ政党や政治家を増やすしかないと思っています。

「野合」批判をする政治評論家や政治学者が多いですが、野合を否定して政治のダイナミズムを犠牲にするか、「野合」を繰り返しながらその質をあげていくことに賭けるかの選択では、私はやはり後者を選びます。

ただし、例外というものはあって、河村たかしについては、そうした選択肢の構成要素の前提条件すら満たしていない(基盤が異なる)という橋下の評価は妥当だと思います。あれほどいいかげんな人を含めることは、名古屋市内での多少の票とはかりにかけてもとても許容できるものではないということでしょう。

河村は最後の受け皿として小沢グループに潜り込んで終わりでしょう。

いずれにしても、小選挙区制という現行制度をきちんと踏まえた戦略的行動を政党や政治家が取り始めているという点では、ようやくイタリアの水準に近づきつつあるといえます。「野合」嫌いの倫理主義のマスコミなどが水をかけて潰さないことを願います。

第三極 [2012年10月04日(Thu)]
一時は「みんなの党」を振った橋下氏ですが、相手が分裂して弱まったことや、維新の会自体の支持率も停滞していることを考慮してか、第三極として連携することを示唆したそうです。

日本維新の会代表の橋下徹大阪市長は4日、みんなの党との関係について「一つの固まりとなり、自民党、民主党、そして第三極という構図を国民に提示するのが、選挙に挑むわれわれの責務だ」と述べ、次期衆院選での連携を模索する考えを示した。市役所内で記者団の質問に答えた。
 橋下氏は「みんなの党と維新の会は政策の中身が一緒だ」として、連携は可能だと強調した。両党の関係をめぐっては、8月に橋下氏とみんなの党の渡辺喜美代表との間で、合流に向けた話し合いが行われたが、不調に終わっていた。 (2012/10/04-20:03)jijiドットコム

そうなると、小沢氏たちとも組むのかどうか、ということになりますね。

小沢氏の「オリーブの木」が現実味を帯びてくるかもしれません。

いずれにしても、選挙後に組む相手を隠しておいて、とりあえず議席をとれるだけとって選挙後に談合という中選挙区制的悪習を捨て、まずは選挙で政権を狙うという戦略を意識しているのならいいことです。

三大勢力で政権選択選挙をやったあとで、どちらが勝とうとも、共同で参議院ねじれ問題について一定の紳士協定を結ぶというのが、とりあえずのベターな見通しかもしれません。そうしたシナリオ通りに行く可能性はまだ恐ろしく低いでしょうが。
代表選、総裁選 [2012年09月07日(Fri)]
民主党代表選が21日、自民党総裁選が26日ということで、ニュースはそればっかりになっています。といっても、主役は橋下徹ですが。

私が一番不満なのは、本来の路線対立を前提にした再編成が隠され、当面の総選挙対策だけを意識した論戦になっていることです。

石原伸晃が総裁なら、民主、公明と組んで増税・社会保障の一体改革をやるわけですから、そういう路線を前面に立てて、それと組もうとする野田総理もそれを明言して代表選をやるべきです。

安倍晋三が総裁なら、橋下と組んでやるわけですから、総選挙前に連合した選択肢を示して総選挙に臨むべきです。

ベストなのは、大きな政府派と小さな政府派がそれぞれ総選挙前に旗幟を鮮明にして二つの選択肢を提示することです。自民党も民主党も、総選挙をやったうえで強いものにつくのではなく、政策路線で総選挙前に分裂すべきです。

ほとんどの政党や政治家が、とりあえず総選挙を有利に戦うことしか考えず、国民に選択肢を示すことをまったく考えていません。マスコミも、政治家側の思惑の内部だけで議論していて、国民側に立って、きちんとした選択肢を示せというメッセージを出しません。

選挙をやった直後に多数派形成の談合が始まるという、中選挙区制や比例代表制に典型の行動を、小選挙区制なのにもかかわらず堂々とやろうとしています。まずは、小選挙区制で選挙をやるということを思い出してほしいものです。

それと、せっかく橋下が統治制度の根本的改革を提起したのですから、特に参議院の廃止については各党、各議員ともに正面から対応してほしいものです。
TPPが軸? [2012年07月11日(Wed)]
10日に、小沢新党の政策が報道され、TPPに反対することが明らかになりました。

そのとたん、翌日に橋下氏がTPP賛成が軸だと言い出しました。

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大阪維新の会を率いる橋下徹大阪市長は11日、小沢一郎元民主党代表が旗揚げする新党と連携する条件について「環太平洋連携協定(TPP)をどうするかが軸。維新の会はTPPに賛成だ。価値観が一致するかどうかが重要で、誰と組むかはどうでもいい話だ」と指摘した。(北海道新聞)
***

誰と組むかはどうでもいい話だ、などと言いながら小沢氏と組むのはいやだということですね。

突然、野田総理を絶賛したり、自民党にもいい人がいると言ったり。

そうすると、どういう勢力編成を考えていることになるのでしょう。プロのアドバイザーがかなりついているので、なかなか興味深いことになりそうです。
維新八策 [2012年07月09日(Mon)]
7月5日に、大阪維新の会が次期衆院選に向けた政策集「維新八策」改訂版を発表しました。

私もいくつかの選挙用マニフェストづくりに関与してきましたが、現在考えうる限りのインパクトのある項目を網羅的にあげていると思います。私の趣味でつまみ食いで紹介してみます。

給付型公約から改革型公約へ
リンゴではなく、リンゴのなる木の土を耕し直します。

自立する個人、地域、国家

決定でき、責任を負う民主主義、統治機構

@統治機構
地方分権型国家
自治体の自立・責任・切磋琢磨
国は国防・外交・通貨・マクロ経済政策などに集中し、内政は地方・都市の自立的経営に任せる
国の仕事は国の財布で、地方の仕事は地方の財布で
国と地方の融合型行政から分離型行政へ

参議院廃止を視野に入れた衆議院優位の強化
条例の上書き権
消費税の地方税化
都市間競争に対応できる多様な大都市制度=大阪都構想
(プロの専門知識も踏まえた的確な分権論です)

A財政・行政改革
首相が年に100日は海外に行ける国会運営
外郭団体、特別会計の徹底見直し
行政のNPO化

B公務員制度改革
公務員を身分から職業を

内閣による人事権の一元化
内閣による公務員の一括採用。社会人中途採用を基本
任期付を原則とする等官民の人材流動化を強化

C教育改革

教育委員会制度の廃止

大学も含めた教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機関の切磋琢磨を促す
精と・保護者による公公間、公私間学校選択の保障

公立学校教員の非公務員化

D社会保障制度改革

個人のチャレンジを促進し、切磋琢磨をサポートする社会保障
若年層を含む現役世代を活性化させる社会保障
負の所得税・ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入

供給サイドへの税投入よりも受益サイドへの直接の税投入を重視(社会保障のバウチャー化)
供給サイドを切磋琢磨させ社会保障の充実を通じて新規事業・雇用を創出

失業対策、生活保障、年金等の社会保障を一元化
努力に応じた、現物支給中心の、最低生活保障制度を創設

(生活保護)現役世代は就労支援を含む自立支援策の実践の義務化
(医療)公的保険の範囲を見直し混合診療を完全解禁

E経済政策・雇用政策・税制
競争力を重視する自由経済
イノベーション促進のための徹底した規制改革
TPP参加、FTA拡大

先進国をリードする脱原発依存体制の構築

民民、官民人材流動化の強化
徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)

正規雇用、非正規雇用の格差是正(同一労働同一賃金の実現)

国民総確定申告制
行政を切磋琢磨させるための寄付税制の拡大
国民総背番号制で所得・資産を完全把握

F外交・防衛


G憲法改正
憲法改正発議要件を3分の2から2分の1へ
首相公選制

憲法9条を変えるか否かの国民投票

書き写していて気づいたことですが、一番お気に入りの言葉は「切磋琢磨」のようです。
全体として、新自由主義を踏まえた「第三の道」、「市場主義3.0」そのものです。
教育でも福祉でもバウチャー制度を徹底して活用するという点も特徴です。
ルグラン『準市場』の訳者としてもうれしいです。

もちろん、以上の政策はほとんどの点で賛成です。

唯一反対の点は、「首相公選」です。
地方自治体の二元代表制の矛盾を批判し、「議会内閣制」を提起したのは誰だったのでしょうか。

衆議院と参議院の二院制の矛盾を正面からテーマとして取り上げたのは大賛成ですが、そのうえで、公選首相と衆議院の多数派がねじれる可能性のある制度をわざわざ入れるというのはどういう意図なのか理解できません。

一院制の小選挙区制型の議院内閣制こそが、決められる民主主義の王道です。

いずれにしても、これらの政策の基調は本来は民主党が掲げるべきだった「第三の道」そのものです。はるかに洗練されて体系性がありますが。

問題は、これを実行できる勢力形成と統治能力ですね。

「オリーブの木」の行方とも絡みますが、さて、橋下氏の政権戦略はどうなるのでしょうか(橋下、松井は市長と知事にとどまるというのは確実なので、そのうえで総選挙において政策を軸に事前に政権連合をどのように構築するかということです)。
「オリーブの木」、リバイバル? [2012年07月05日(Thu)]
2、3日前から、小沢一郎氏が、次の衆院選では「オリーブの木のような形でやればいい」、「いろんな連携が必要だ」と述べたという報道があり、私のところにも2,3のメディアから取材が入ったりしています。

日本版「オリーブの木」の全盛期は1997,8年なので、知っている人は政治部記者でもかなりのベテランになると思います。さすがに、当時からの民主党関係者は覚えている人が多いようですが。

96年のイタリア総選挙は、93年に小選挙区比例代表連用制(小選挙区制が75%)が導入されてから2回目の総選挙でしたが、そこで中道左派連合が僅差で勝利し、イタリアで初めての本格的な中道左派政権ができました。その連合の名前が、オリーブの木(L'Ulivo)だったので、こうした選挙連合の方式が日本でも一躍注目され、旧民主党の菅代表などが旗を振ったりしたわけです。

私も、『「オリーブの木」政権連合』(大村書店、1998年)などという本を出したりして、紹介者の役割を務めました。(もう少し中に入りましたが)

ところで、イタリアの96年総選挙では、中道右派も「自由の極」という選挙連合で戦いました。そもそも、小選挙区制第一回の94年総選挙以来現在まで、イタリアでは右も左も、10以上の政党でそれぞれ選挙連合を組んで戦っているのです。

各小選挙区で1議席を争い、勝てばほぼ確実に政権が取れるのですから、みすみす味方同士共倒れにならないように、候補者を統一して戦った方がいいというのは、ゲームができる小学生でもわかることです。(ところが、日本では政治家たちがそれを理解しないまま、民主党は何度も共倒れで、総選挙に連続4回も負け続けたわけですが・・・)

しかし、「オリーブの木」、より正確にはイタリア型の政権連合のポイントは、ただ政党間の連合を組むということではありません。

総選挙における政権選択肢として、共通マニフェスト(4年間の政権期間は遵守するものとして)、統一首相候補を掲げ、すべての小選挙区で候補者を統一するということが要件です。総選挙の後ではなく前に、有権者にとっての政権選択肢として提示し、選挙で勝って初めて正当性をもって政権を担うということが核心です。

「みんなの党」や自民党の長老たちが考えているような、選挙後の無原則な離合集散とはまったく異質なものです。

ところで、現在の政治状況で総選挙をやるとすれば、三党合意で国会を仕切っている民主党、自民党、公明党が正式に連合を組んで一つの選択肢を提示するのが筋です。

だとすれば、それに対抗する選択肢を提示しようとする勢力が、小選挙区で勝てるように、もう一つの政権連合を結成するのは当然です。

もちろん、両者はそれぞれ、マニフェスト(今度は4年間ちゃんと守ってね!)、首相候補(4年間続けてね!)を提示する責務があります。

都知事の石原さんや大阪維新の会の松井幹事長、みんなの党の渡辺さんや江田さんなどが、小沢とは絶対組まないと言っています。もちろん、組まないという戦略もありですが、それでも三党連合に勝てるという見通しが必要です。負けても小沢とは組まない、というのは政治家ではありません。

これだけ嫌われている小沢氏が、「オリーブの木」に言及するのは、どれだけ分かっておられるか知りませんが、政策だけを基準に連合を組むべきだという筋の通ったメッセージを出すということを意味します。

小選挙区制原理主義者の小沢氏ですから、分かって言っている可能性が高いです。

さて、ほかの反三党連合の諸勢力はどういう反応をするでしょうか。

いずれにしても、政党というものの成熟度が強度に低いことが証明されてしまった日本では、せめて4年間はマニフェストを基礎に共同歩調をとるという訓練からはじめる方がいいかもしれません。選挙直後ではなく選挙の直前にやるのなら、日本の政治家たちが大好きな離合集散、政界再編も何の問題もありません。

とりあえず、4年の任期中は一つの勢力として活動してくれさえすれば、有権者にとっての政権選択は意味を持ちます。民主党のように、形は一つの政党でも、4年間すらマニフェスト実現のために歩調を合わせられないのに比べれば、百倍もましです。

また、小沢新党? [2012年06月22日(Fri)]
消費税増税をめぐって、小沢グループが54人(民主党が過半数を割る数字)を目指して離党届を集めているそうです。40人は越したという報道がありました。

消費税増税の採決前の離党、ないし反対投票を理由に除名された後で新党を結成するというシナリオのようです。(ブラフという可能性もありますが、野田総理の強硬姿勢からして反対投票したら必然的に離党に追い込まれるでしょう。)

こうした新党では、小選挙区で、民主党、自民党、みんなの党・大阪維新の会連合という3勢力との競争で議席を得ることは難しそうです。自民党と連合の争いで、しかも連合の方が優勢だと思います。

維新の会の松井知事は小沢氏との連携を明確に否定する発言を今日したそうです。橋下氏ではないというところに多少の含みはありますが、維新の会としての姿勢はひっくり返ることはないでしょう。

そうすると、小沢新党は意味のある連携相手なしに戦うことになり、ごく少数の議席しか得られないことは確実です。

むしろ、消費税採決は欠席ないし白票にとどめて除名を回避したうえで、9月の民主党代表選挙で民主党執行部を掌握する戦略の方が有効だと思います。

小沢氏は、どうも一つの政党をじっくり育てるという意欲に乏しく、すぐに新党を作るということを繰り返してきています。それが、自民党以外にまともな政党を育てることに失敗してきたという日本政治の重大な問題点を生んだ大きな原因でもありました。

壊し屋と呼ばれる所以です。

現在の動きがブラフであり、小沢氏の本筋の戦略が民主党掌握であることを期待しますが、ここまで高く上げたこぶしを下ろすとかなりのダメージになりそうですね。民主党という政党にほとんど愛着がないということを示したうえで代表選に臨むというのもしらけます。

いずれにしても、この数日で帰趨は明らかになります。
小沢控訴 [2012年05月10日(Thu)]
やはり、という感じですが、指定弁護士3人は小沢無罪判決を控訴することを決定しました。この裁判の政治性をまったく無視した悪い意味で法律家的な判断です。そもそも、指定弁護士に控訴の権限があるということ自体がおかしいと思います。

いずれにしても、これでまた裁判を口実にした小沢VS反小沢の抗争が続くことになります。

検察がここまでやって有罪にできなかった以上、政治家の評価は政治で決着をつけるしかないでしょう。私自身は、最初の検察不起訴、今回の強制起訴での1審無罪判決という経過からみて、小沢氏が民主党代表になって首相になることにはまったく問題はないと思います。

指定弁護士の判断を受けて、刑事被告人が首相になることに問題があるというような議論がマスコミや民主党内に出ているようですが、3人の弁護士の判断で政治家の評価を左右するということのおかしさに気付かないのでしょうか。これで最高裁まで行って無罪だった場合、小沢氏の政治家としての機会を奪った責任は誰がとるというのでしょうか。

イタリアのベルルスコーニが、被告人どころか有罪判決が出ても平気で首相を続けたのは行き過ぎでしょうが、政治は政治で決着をつけるというイタリアの割り切り方は日本も見習うべきだと思います。

それにしても、いつのまにか、また、小沢氏以外で首相にしてみたい政治家が皆無という状況になってしまいました。

2008年の大連立の失敗で小沢氏の役割は終わったと判断したのですが、ほかの政治家たちのあまりの水準の低さが判明してみると、時期尚早な判断だったといわざるをえません。

問題は、小沢氏が陸山会事件、政治資金問題について国民に直接踏み込んだ説明をすること、当面の権力闘争を超えてどのような日本政治像(要するにどのような二大政党)を将来に想定しているのかを提示することができるかどうかです。

わかるやつがわかればいい、というスタイルを変えるほどの決意があるでしょうか。新旧の要素を混在させている小沢氏が、旧自民党田中派政治家を本当に超えられるかどうかの試金石だと思います。
小沢判決 [2012年04月26日(Thu)]
判決理由などはテレビ報道程度しかわかりませんが、共謀を認定するには証拠不十分ということのようです。そして、検察の捜査について厳しい批判がなされているようです。他方で、4億円の会計処理についての小沢事務所の作為も指摘しているようです。

司法関係者としては、共謀について控訴してさらに審理を求める余地があるという意見に傾くかもしれませんが、いやおうなくこれほど政治的になってしまっている裁判ですから、政治的に判断して控訴せず、あとは国会などの場で政治的に扱っていくべきだと考えます。

そのためには、小沢氏にも、司法判断が出た以上、これ以上説明する必要はない、などというこれまでのような対応をやめ、政治家として政治的批判には堂々と反論するという姿勢に転換すべきだと思います。

そのうえで、小沢氏の政治責任の評価は、たとえば彼が民主党代表として臨む総選挙ないし衆参同日選挙によって確定するのが望ましいと思います。

小沢氏が嫌いな人たちも、司法を使って抑えるという方針は捨てて、あくまでも政治的に対決するべきではないでしょうか。

とはいえ、指定弁護士にも控訴権があるという解釈がテレビなどでは主流のようで、指定弁護士が法律的観点からだけ判断する可能性が高そうです。

しかし、検察審査会の議決というある意味政治的な経過で行われた裁判ですから、それを法律的観点だけから判断して控訴するというのには違和感が強いです。これだけ政治的な裁判を、法律的観点だけから判断するということ自体が政治的であることを認識すべきですが、弁護士さんたちですから多分無理でしょう。

検察審査会の制度がこういう事件では無理がある(政治的に利用される余地が大きい)というのが明らかになったわけですから、これ以上事態をこじらせず、司法を使った政治から正面からの政治へと舞台を転換するのが総合的に見ていいというのが私の意見です。
小沢判決、前夜 [2012年04月26日(Thu)]
いよいよ、小沢裁判の判決が明朝10時に迫りました。

マスコミ関係者は固唾をのんで待っているのでしょう。結果についてはまったく予測がつかないようです。判決が出た瞬間から、雪崩のような報道があふれることでしょう。

有罪か無害かについては、裁判所の判断を待つしかないわけですが、検察のあまりに政治的なやり方や証拠改ざんなどの体質を考えると無罪を期待する方に傾きます。ただ、秘書の行動を政治家が知らなかったで通るという従来の慣習を今後も維持していいのかという疑問も強いです。

とりあえず政治的側面だけで考えてみます。

おそらく、有罪でも、小沢氏は晩年の田中角栄のように無罪を主張して控訴しつつ政治的な影響力も行使し続ける可能性が高いと思われます。闇将軍の再来で、日本政治は深刻に歪められることになるでしょう。民主党の分裂の可能性も高まり、めちゃくちゃな政界再編の渦に巻き込まれるでしょう。

無罪なら、9月の代表選で民主党代表に返り咲き、首相として09年マニフェストの原点に戻る形で衆参同日選挙に勝負を賭けることになります。大阪の橋下氏も引っ張り込むかもしれません。自民党はじめ、野党にとっては最悪のシナリオでしょう。

政治的シナリオとしては後者の方がまだ救いがありそうですが・・・。