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〔後房雄のブログ〕

現実関与型の政治学者が、日本政治、自治体改革、NPOやサードセクターの動向などについて話題を提供しています。一応研究者なので、面白かった本や論文の紹介もします。


名古屋市議会の悩み [2009年11月22日(Sun)]
11月20日に河村市長から「政治ボランティア条例」案が提出され、否決の場合の議会解散直接請求の体制もできつつある中で、市議会は対応に悩んでいることと思われます。河村さんは、ともかく選挙が大好きで、しかも桁外れに強いときているだけに、始末に終えませんね。ご苦労をお察しします。

@条例案可決の場合と、A条例案否決の場合は、それぞれシナリオがはっきりしています。問題はその中間のシナリオがありうるかどうかでしょう。

現在浮上しているのは、市民税10%減税と地域委員会の二大公約は認めたうえで、議員の定数・報酬については半減ではなく、マニフェストに記載された「一割削減」の線で妥協できないかという案のようです。

仮に、そうした形で修正された条例案が議員提案されて可決されたとしたら、どのようなシナリオが考えられるでしょうか。

政治のボランティア化は河村さんの一貫した持論ですが、マニフェストではその第一歩として一割削減となっているのは事実です。それだけに、それが議員提案で実現してしまっても議会解散の大義名分があるかどうかは問題です。

しかし他方で、市民から見れば、名古屋市議が年間2350万円もの法外な所得をもらっているということ自体びっくり仰天に違いありません。議会開会日は90日ほどですから、それ以外は事実上の選挙運動という私的活動をしながら報酬をもらっているということになります。驚くのは、議会に一日出席すると、給与とは別に1万円の費用弁償というものが支給されるということです。

こうした実態を知った上で、市民が1割削減で納得するとはとても考えられません。市民が納得しないなかでは、市長も河村サポーターズも妥協することは難しくなります。特に選挙が大好きな河村さんは、もともと妥協して選挙を回避する動機があまりありませんし。

とはいえ、二大公約と一割削減という妥協案が議会内部の折衝でまとまる可能性は限りなく小さいというのが記者さんたちの観測です。たしかに、今それでまとまるくらいなら、ここまでの状況にはなっていないでしょうから。

とすると、一部の議員さんが修正条例案を議員提案して、議員ごとに賛成と反対に分かれるというシナリオも浮かんできます。可決されれば、そこで河村与党多数派が形成されることになります。否決されても、少数派ですが河村与党が形成されることになります。

その河村与党も加わって議会解散直接請求運動が始まれば、なかなか面白い展開になりそうですね。

いずれにしても、議会解散、再選挙になれば、河村チルドレンが圧倒的に強いでしょうから、議会の構成が一変することは確実でしょう。

2350万円の自己保身は、その場合には破滅につながります。かといって、条例案に賛成して当選できたとしても、報酬は半減となります。もちろん、ちゃんとした議員活動をする上では何の支障もないわけですが。

まさに河村さんが言うように、職業議員(食うための議員)からパブリックサーバントになるかどうかの決断を一人ひとりの議員が迫られているということです。自己保身が破滅につながることを分かりながら決断できない人が多いかもしれません。

ちなみに、私が記者会見で、現状の二元代表制は限界に来ていると述べたことをある自民党市議が、経営アドバイザー経験者が現状の公的制度を批判するなどけしからんとブログに書いているようですが、自民党は結党以来、与党でありながら「自主憲法の制定」を綱領に掲げ続けてきたのではなかったでしょうか。公職にありながら、現状の法律や制度の改善策を考えたり提案したりすることに何の問題もありません。

しかも、この議員さんは、私が議会一元制を解決策として主張したことも知らないに違いありません。それとも、知っているけれども、議会多数派で自治体運営に責任をもつなどという面倒なことはご免で、現在のような拒否権をちらつかせて文句だけつけていればよい状況を守りたいということなのでしょうか。

どこの自治体議会からも前向きの提案が出されないので、おそらくは民主党政権、原口総務大臣が進めている地方自治法の全面改正のなかで議会一元制が可能になってはじめて議員さんも本気で今後のことを考えることになるのでしょう。

地方議会のあり方が根本的に問われようとしてるなかで、自己改革が最も遅れている名古屋市議会の自浄能力がどうであろうと、大勢に影響はないのかもしれません。しかし、市民の手で、新しい「自治体のかたち」を名古屋市で実現することができるなら、今後の日本の自治体の再生にとって大きな刺激とモデルを提供することになります。どちらが、名古屋市民にとってよいシナリオなのでしょうか。

皆さん、明日23日の午前11時に千種区役所2階講堂に集まってください。いっしょに名古屋市の新しいかたちを考えましょう。





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