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官邸斜向かい〜霞門の眼 by 石川和男

政治・経済・社会の動向から明日明後日を読むということで。


国税庁 〜 あっせん廃止で退職者8割減 [2010年07月10日(Sat)]

 今夕の東京新聞によると、国税庁は60歳定年前に勧奨退職した幹部に長年けてきた顧問先のあっせんを廃止したとのこと。

【記事要旨】
・あっせん対象幹部退職者数は昨年(399人)83%減となる68人に激減。
・長年、国税庁は定年1〜2年前に勧奨退職幹部の生活補償名目で顧問先をあっせん。
・税務職員として23年以上勤務すると所定研修を受ければ無試験で税理士になれる。
・退職せず継続を選んだ幹部は国家公務員定年(来年3月末)を延長、来年7月まで勤務。
・昨年退職358人が平均1人7.5件のあっせんを受け、月額44万9千円の報酬。

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 複雑極まりない税務に長けた人材を相当期間活用し続けることが合理的でないはずはない。たった1年の延長で大丈夫なのかは、実際に1年後にならないとわからない。税理士需要が高いことはその証左である。

 一定年齢に達したら一律に退職させる慣行が本格的に見直される契機になると良いのではないか。職場の高齢化を憂いでも仕方ない。今すぐ10年も高齢化する訳ではない。

 公務員のリストラ手法について、路頭に迷わせるクビ切りが現実には進まないことがわかっている以上、痛みを公務員全体で分かち合うのが次の手段となる。公務のワークシェアリングを本格的に検討着手されたい。
 
国土交通省 〜 「長期固定ローンの供給支援のあり方に関する検討会」報告書 [2010年07月07日(Wed)]

 今朝の日経新聞によると、国土交通省は住宅金融支援機構の組織改革について論点を整理した「長期固定ローンの供給支援のあり方検討会」の報告書をまとめたとのこと。

≪記事抜粋≫
・報告書は、短期資金を原資とする民間金融機関が長期固定ローンを供給するのは「少なくとも現状では限界があり、証券化手法による支援が必要」との見解。
・住宅ローン証券化市場が成熟してきた段階で公的関与をできる限り縮小すべきと指摘。
・具体策は「(同機構による)証券化の範囲の縮小」、「民間資本の導入」など意見が分かれた。
 
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 報告書の概要本文参考資料を適宜参照されたい。報告書の内容は、住宅ローン債権証券化の実施主体に係る組織論を除けば、至極ごもっともな内容となっている。

 住宅機構は国交省所管の独立行政法人であるため、国交省の検討委員会の結論として民営化や民間売却といった業務実施態勢の改革が結論になるはずはない。過剰融資防止の環境整備を前提とすれば、政策の方向性は正しいのだが、組織論で腰砕け。

 民間人が多数を占める検討委で独法による証券化業務の継続が答申されることに憂いを以て留意しなければならない。行政機構の自己改革は、およそ期待が持てないという話。公的機関であっても、儲けて納税するビジネスモデルをどんどん構築していくべき。
天下り45%が金銭交付先 07〜09年 [2010年06月30日(Wed)]

 今朝の東京新聞によると、総務省は国家公務員再就職調査の中間報告を公表したとのこと。

【記事概略】
・07〜09年に退職した本省企画官級以上で再就職が確認できた延べ3471人のうち金銭交付団体への再就職は約45%1577人。
・出身省庁所管法人には1668人が再就職。
・省庁あっせんが確認できたか略歴送付があったと考えられるケースは半分以上の1785人。
・国所管公益法人役員への再就職状況は09年12月時点で3270法人に公務員OB役員8965人。

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 民主党政権の責任ではないという話。金銭交付団体でなくとも、斡旋したくなる団体は数多ある。補助金・委託費だけでなく、例えば規制執行の独占的委託先がそれ。規制権限がある以上、その執行の効率化を図るという大義はこれまで立ち易かった。

 独法や公益法人は、行政事務のアウトソーシング先になっている場合が多い。公務のワークシェアリングは、こうした外郭団体への業務委任で実態上では定着している。外郭化することで、無意味な費用が発生している。それを削ることで外郭団体は不要となる。

 外郭団体を削減したとしても、その分の雇用が直ちに失われることにはならない。現役国家公務員のリストラは期待できない。新規採用待機組がリストラ対象になる。官僚組織にとっては、組織の新陳代謝よりも大事なことがある。一般国民にとっては、功罪両面がある。
国家公務員 〜 採用大幅減 [2010年05月21日(Fri)]

 今日の朝日新聞ネット記事によると、鳩山内閣は来年度の国家公務員一般職の新規採用者数を09年度比で約4割減らす方針を閣議決定したとのこと。

【記事要約】
・来年度採用上限を4783人とした上で、治安担う職種1279人、口蹄疫対策にあたる動物検疫所獣医師、航空交通管制官を削減対象外。
・09年度採用実績(7845人)比削減率は全体で39%、治安職種を除くと47%。
・原口総務相は「減らすと安全や命にかかわるところは除外した」と説明。
・民主党マニフェスト「天下りあっせん禁止」により定年前退職者が激減することから、鳩山首相が検討指示。
・総務省が職種ごと抑制率を、本省1種と2種は2割減▽刑務官など専門性の高い職種は5割減▽出先機関は8割減――と各省に通知。

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 国家公務員という業種も高齢化していくという話。国全体がそうなのだから、国家公務員だけ従前通りの新陳代謝を維持するのは合理的とは思われない。若年層業務を壮年層が徐々にシェアしていくことになる。

 1〜3年生の仕事を4〜6年生も分担する ―― 今までの役所の常識からするとあり得ないことだろうが、経済社会情勢の変化に真っ先に追従すべきなのは、民間にとってもさることながら、国家公務員にとっても当然のことであるはず。

 天下り斡旋禁止による措置だとの説明だが、そうであるならば尚更、天下り先への税金投入額の縮減幅と採用大幅減による税金投入額の縮減幅を精確に対比させる必要がある。採用大幅減の決定の事実だけではなく、国家的メリットを示さなければ国民から真の評価は得られない。
制度変更ばかりで結局は業務が存続する官業 [2010年03月29日(Mon)]

 今夕の時事通信によると、枝野行政刷新相は仕分け第2弾対象となる独立行政法人について「独法通則法廃止をゴールにしたい」と、現行制度廃止を目指すとのこと。

【記事抜粋】
・独法制度について「失敗だった。あまりにも性格の違う各種の仕事を(独法を定める)通則法という一つのルールの中で動かそうとしているので、合理的な制度運営になっていない」。
・「今の独法を大幅に再編して、今の形の外郭団体もあるだろうし、違う法人形態もあるだろう。役所の外局、付属機関みたいな形でやった方が効率的な部分もあるのではないか」。
・政府高官は「イメージとしては5年ぐらい」と、制度廃止までには5年程度との見通し。

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 法人形態と業務存否は無関係であったという話。民業と官業の違いは、一度始めると廃すことができるかできないか、であろう。官業については、必要資金を出す側に業務の必要性を厳しく問う場がないことが本質的問題。

 公的資金を要する業務の全てを行政庁内に逆戻りさせ、行政庁における総人件費(人件費以外の名目での人件費も含む)に厳格なシーリングを敷く以外に、効果的な方法は見当たらない。事業仕分け第2弾には期待を寄せたいが、今から5年の経過期間を語るようではどうしようもない。

 政府系金融機関の統廃合や完全民営化でさえ、施行から2年も経たないうちから組織分割や疑似民営化への路線変更が現実味を帯びている。経済情勢の激変との理由付けはよくあることだが、経済情勢の変化に追従させるべきは、官業組織の在り方ではなく官業業務の在り方である。

 公務員のクビをかける話にすると、毎度同じ轍を踏むことになる。官業改革は、公務員ないし公務員OBのクビをかける話ではなく、別の痛みをシェアしていく話に転換していかないと前進できないだろう。(下手をすると、後退してしまう。)
公務員の出向と天下り問題の関係 [2010年03月21日(Sun)]

 今朝の日経新聞によると、政府は国家公務員の出向先を広げるとのこと。

≪記事抜粋≫
・これまで大学など研究機関に限られていたが、NPOや公益法人も加える。
・省外に異動しやすい仕組みを整えて定員に空きをつくり、新規採用枠確保狙い。
・公務員は3年間出向できる。08年7月時点の利用者356人。給与は出向先が支払い、不足分の一部を国が手当て。
・天下りあっせん禁止を受け、給与水準の高い50代職員が大量滞留し、新卒者採用計画を策定しづらくなっている現状。
・仙谷国家戦略相は「民間企業でいえば、希望退職のような制度を改めてつくる必要があるかもしれない」と、退職金上積みで公務員が早期退職しやすい仕組みが課題との認識。

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 公務員に係る総人件費の内訳を明確にした上で、その予算額水準が上がらない仕組みを作っていかなければならないという話。NPOや公益法人への出向先拡大は当該法人の財務内容で判断されるべき。出向元が当該法人の監督官庁であってもなくてもあまり関係ない。たすき掛けで十分となる。

 新規採用枠を確保するのではなく、本来は縮小していくしかない。しかし、そうはならないのが官の世界。必要性を自分たちだけで決めることができてしまう。人件費補助付き出向期間を延長できるようにすれば、天下り回避策の成果としての天下りモドキとなる。

 人事システムを複雑化すればするほど、抜け道の在り処が見え難くなる。記事にあるような人事システムを政治主導で作るとなると、結果として、政治主導の天下りモドキが増殖することになる。だとしても、監督官庁による予算の使途先でないことぐらいは担保されなければならないだろう。
退職金上積みと天下り根絶 [2010年03月05日(Fri)]

 今夜の時事通信によると、 前原国交相は閣僚懇で定年前退職者に対して天下りを認めない代わりに退職金上積みを検討するよう提案、仙谷国家戦略相と枝野行政刷新相が法改正含め対応するとのこと。

〔記事概略〕
・前原国交相は「(今の)早期勧奨退職をなくして定年まで働くことになると、(公務員定数が決まっているため)新しい人が採れない」と、天下りをやめた場合、新規採用枠が減り中堅、若手の人事が滞るとの懸念。 
・国交省の早期勧奨退職者は09年度で約520人。直嶋経産相、菅副総理兼財務相、原口総務相らが提案に同調。

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 天下り後の期待所得額を退職金上積み額としてしまうと天文学的数値になるので全く話にならないという話。真のニーズ無き天下りの根絶のために退職金上積みを検討しようという姿勢は評価されるべきだが、よほど遠慮がちな数値でないと、時勢の問題として許容されない気がする。

 今の経済社会状況からすると、民間の感覚では、退職金上積みではなく、ただのリストラはしないのかといった感情論が噴出するのではないか。冷静に考えると決してそんなことはないのだが、何故公務員だけが、と。

 特に民主党の場合、マニフェストで国家公務員総人件費2割削減という目標が今もまだ生きているようなので、これとの整合性も突かれてしまう。新規採用が減って中堅・若手人事が滞るというのは、懸念材料ではなく必然的帰結と捉えるべき。

 国全体の少子高齢化が今後ますます進んでいく中で、公務員の世界だけ新陳代謝を滞りなく、というのは通用しないだろう。いずれにせよ、上積み退職金総額と天下り人件費総額の類型例をキメ細かに示しつつ議論を開始されたい。 
解読困難な法律案だという惨状はいつまで続くのか [2010年02月20日(Sat)]

 昨日閣議決定された国家公務員法等の一部を改正する法律案(法案骨子、要綱、法案本体、新旧対照表)は、下記添付ファイルの通り。


kossi.pdf

youkou.pdf

honbun.pdf

sinkyu.pdf
 

 解読困難ないし不可能な文面ばかりであるが、これが我が国の国会提出法案の実情である。こういった国民を見下したような政治・行政の慣行こそ、真っ先に事業仕分けの対象にされるべきだ。どんな専門家も、この法案を単体だけで理解することはできない。

 給与体系を改めずに次官・局長・部長を同格化するのは、責任と報酬が見合わないことを宣しているようなもの。非常に不可解な行政組織論である。今回の改正案は第一弾に過ぎず、給与法・労働基本権など残存懸案事項の改正を第二弾として次期通常国会に提出すると決意表明しているのは良いことだが、選挙前なので支持母体である官公労などの支持が得られないことを恐れていることを図らずも曝け出した形になってしまった。

 一瞬話題に上った次官存廃に係る条項は、附則第9条第1項として「政府は、この法律による幹部職員の任用に関する制度の創設の趣旨を踏まえつつ、議院内閣制の下、国家公務員がその役割をより適切に果たす体制を整備する観点から、事務次官その他の幹部職員の位置付け及び役割について検討するものとする。」とある。

 この条文の主語である「政府」とは行政府のことで、言わば霞ヶ関を指す。霞が関から猛反発を喰らっている次官存廃の検討を霞ヶ関に委ねること自体、そもそも大間違い。政治主導になる訳がない。主語を「国」としないといけない。そうすれば、少なくとも形式上だけでも、立法府(や司法府)も含まれるので政治主導(=国会議員主導)になり得る。

 ただ、附則に規定されているので、霞ヶ関の反発はあるだろうが、一応近い将来において検討対象になっていることが法律として規定されることになる。問題は、マニフェストで掲げた「国家公務員総人件費2割削減」である。給与法体系の見直しを強く決意しているのであれば、次官存廃論と同様に附則に規定すべきであったが、そうなっていない。国会で修正できるかどうか、民主党の本気度はそこでも問われることになる。野党にしても、そこを攻め所にできるかどうかが問われるだろう。
公務員制度改革が盛り上がらない理由 [2010年02月18日(Thu)]

 昨日の日経新聞ネット記事今日の日経新聞ネット記事によると、明日の閣議決定が予定されている国家公務員法等一部改正案について、政府は一部修正を加えたとのこと。

≪記事概略≫
・付則に、今秋の抜本改革時に向け「事務次官その他の幹部の位置付け、役割について検討する」と明記。
・内閣人事局の局長に、副大臣や首相の指名した人物が就任できる規定を盛り込む。局長は官房副長官から指名する方針で松井孝治氏が挙がっていたが、選択肢を広げる。
・仙谷国家戦略相は「人事局長は官房副長官または副大臣、その他首相の指名する者、と変わった」。

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 先の衆院選マニフェストとの整合性は全く説明できないという話。高速道路無料化や暫定税率廃止は財政悪化に直結するので、昨今の税収落ち込みに鑑みれば、それらを修正することは政策的には許容され得る。しかし、官僚制度・天下り問題については、そうはいかない。

 次官廃止はいったん見送りのようだが、官僚バッシング勢力にとっては期待外れに違いない。もっとも、次官を廃止しようがしまいが、我々一般庶民には何ら関係ない。だから関心度が高まらない。輿論が盛り上がる道理がない。

<参考:過去の関連ブログ記事>
  → https://blog.canpan.info/ishikawa/archive/768
  → https://blog.canpan.info/ishikawa/archive/766 

 次官を廃止すれば、ほんの一瞬だけ溜飲を下げることができる。しかし、日本経済社会への迅速な裨益が見出せない。そこが残念極まりない。従前型の公務員制度改革の悲運の主因がここにある。公務員制度改革は、公務労働市場改革に昇華させる時機に来ている。
次官・局長・部長を同格にするという不可解・・・ [2010年02月15日(Mon)]

 今夜の産経新聞ネット記事によると、鳩山首相は国家公務員法改正案で、事務次官、局長、部長の3クラスを同格にする条文を盛り込むとのこと。

≪記事抜粋≫
・当初、次官と局長を統合して部長と区別する2段階職制を導入、次官から部長への降任を可能にする特例規定案。
・当初案は、降任に「勤務実績が劣る」「他の職員の方がより優れた業績を上げると十分見込まれる」を必要。
・給与はポストに応じる現行制度を維持。次官(年収2290万円)が部長(同1590万円)に降格すれば年収は700万円減。
・官僚側は「政治家のご用聞きになるだけの職員が増えるのではないか」。
・首相は「やる気があれば(幹部に)抜擢。やる気がない人には厳しい。(法改正は)公務員にやる気を持ってもらうため」。

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 次官・局長・部長を統合することによって、3階級それぞれの責任分担と名称分担の整合性はなくなるという話。不可解な決着内容ではあるが、そのうち誰も興味を持たなくなるだろう。いったん提出はするが時間切れで廃案に持ち込むというのも十分あり得る。

 公務員制度改革は、内容的なものよりも国民的関心度の低さにその難しさが隠れている。次官・局長・部長の3階級統合によっても、国民経済にとって何らの裨益も見出せない。

 各府省横断的な幹部人事は一歩前進ではあるが、一握りの幹部ポストの流動化だけでは、堅牢な縦割行政の打破は望めない。相当人数を抱えるラインで流動化させないといけない。

 公務員制度改革の機運は数年前に熟したが、今はもう冷めている感じがする。仕切り直しで機運を高める仕掛けをしないと、そう易々と盛り上がるものでもない。『行革担保債』のようなもので改革断行を担保する手法もある。財政に直結させないと、輿論も追従してこないのではないだろうか。