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官邸斜向かい〜霞門の眼 by 石川和男

政治・経済・社会の動向から明日明後日を読むということで。


国会議員歳費削減 〜 改正案を来年の国会に提出へ 民主党 [2010年11月12日(Fri)]

 一昨日の毎日新聞ネット記事によると、民主党は議員歳費を1割削減する議員歳費法改正案を来年の通常国会に提出するとのこと。

<記事要約>
・民主党は国家公務員給与削減を目指しており、議員自らも身を切る姿勢を示す狙い。
・議員歳費は1人当たり月額129万7000円。
・02〜04年度に歳費1割削減実施。
・マニフェストで議員定数削減による経費節減を含めた「議員歳費2割削減」を掲げた。
・定数削減は意見の隔たりがあるため、歳費削減を先行実施。

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 できない相談は最初からするものではないという話。人数と金額を総合して「議員歳費2割削減」なので、議員歳費1割削減後に、更に歳費削減ないし定数削減を実施しないと計算が合わない。

 “国家公務員総人件費2割削減”もマニフェストに掲げられているが、同様の手法があり得る。先行的に給与水準を1割削減し、次に更なる給与水準削減か定員削減を行い、総合して総人件費を2割削ると説明するという方法。

 この場合、最初の1割削減から次の1割見合分削減までには、相当の期間を要することが予想される。それほどの胆力はない。自ら身を削ることの難しさは、議員や官僚のみならず、一般の経済活動や社会生活でも同様。

 議員も官僚も特段特殊な人々ではない。“抵抗”の言い訳はそれぞれ違うが、本質は誰しも同じ。但し、議員歳費と公務員人件費に限ると、提案される場合は『縮小均衡』以外の選択肢があるとは思えない。そこが民間との大きな相違点ではある。
財政 〜 埋蔵金頼みに限界 [2010年08月22日(Sun)]

 今朝の日経新聞によると、11年度予算編成で「埋蔵金」活用に黄信号が出ているとのこと。

【記事概略】
・10年度予算の税外収入のうち特別会計の積立金と剰余金から8兆円を捻出。財投と外為の両特会で7.7兆円。
・財投特会積立金は10年度末0.1兆円。剰余金も金利低下で年1兆円。
・09年度決算で29.8兆円発生した剰余金も国債償還に充てる分以外は9.1兆円。
・積立金182兆円のうち7割は年金支払い原資で取崩は難。
・20.6兆円の積立金がある外為は円高によって保有外債の為替評価損が積立金を上回る「赤字」状態。

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 財務省発の記事だろうが、事実は事実。従来型の発想での可採埋蔵金はほぼ枯渇しているも同然だという話。積立金として眼前に100兆円規模のものがあるが、誰もそれを可採埋蔵金だとは思っていない。

 現政権は、財務省の言い分を超越してまで可採埋蔵金額を増やそうとはしていないようだ。だとしても、財務省主導だと批判するのは不的確。財務省が主導しようがしまいが、年金積立金に手を付けないのであれば衝撃はない。

 民主党マニフェストの善し悪しは別として、それを満たす予算は捻出できない。あとは、国家公務員及び地方公務員の総人件費からどの程度を振り替えることができるかではないか。他の政策財源は殆ど削減できない以上、仕方ない。
 
国会議員歳費法改正案 〜 7月分の大半を自主返納  [2010年08月04日(Wed)]

 今日の時事通信によると、 国会議員歳費を日割り計算して一部を自主返納できるようにする国会議員歳費法改正案が衆院本会議で全会一致で可決、参院に送付されたとのこと。

<記事抜粋>
・現行法では、7月参院選で当選した新人と返り咲いた議員は任期が始まった7月26日から6日間だけの活動で1カ月分歳費全額支給。
・改正案は7月分(約130万円)のうち任期前25日間分について自主返納できるようにした。
・対象議員は59人。 
・議員歳費を日割り支給にする法改正は、秋の臨時国会に先送り。

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 こういう時でないと読みもしない法律を改正するという話。議員立法であっという間に立案・成立させようと思えばできる。今まで是正されてこなかったのが不思議。法案要綱を見ると、報道には書かれていないことがあることがわかる。

 この法案は、議員歳費と秘書給与の日割り化に関するものだが、それぞれの扱いが異なる。詳しいことは法案を見れば書いてあるが、一般的に直ちには理解し難いだろう。

 これによって、歳費等の“貰い過ぎ”への世論の反発に配慮したとされている。遅きに失したと言わざるを得ない。本件だけに留まらないが、世論なるものをいかにして量るのか。

 結局は、メディアの報道振りに大きく拠ることになるのだろう。勿論、先送りされた本格的改正案が成立しないことには、評価のしようもないことは間違いない。
歳費日割り 〜 「自主返納」軸に [2010年07月28日(Wed)]

 今夜の時事通信によると、与野党は月単位支給されている議員歳費を日割りに改める法案について30日召集の臨時国会で成立を目指とのこと。

<記事抜粋>
・歳費返納は認められていないが、民主党は日割り返納する場合は禁止規定を適用しないとする歳費法改正案をまとめた。
・初めから任期日数分を支給する本格的な日割り法案は、細部調整に時間がかかるとされ、秋以降に先送り。

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 法案そのものを見ていないので全体を評するには尚早だが、方向性としては時宜を得たものとされるようになる。日割り対象経費を細かに検証しておく必要がある。議院本人の給与の他、秘書給与やその他諸経費の取扱いにも注意を要する。

 議員や秘書の給与変動率は、本件は来るべき公務員総人件費削減率の多寡に大きな影響を与えるだろう。来週の臨時国会の期間が短いことを以て廃案とされる可能性はある。

 時間がなければ、本格的日割りとの一括法案で対処するのでも良い。どの政党が抵抗するか、その踏み絵になる。抵抗勢力は、永田町よりも霞が関に多くいるかもしれない。それは、官僚だけではない。
予算要求基準 〜 「各省一律10%減」 [2010年07月23日(Fri)]

 今日の読売新聞ネット記事によると、政府は11年度シーリングに社会保障費などを除いた歳出の一律10%削減を盛り込む方針とのこと。

【記事抜粋】
・民主党が提言した医療や環境に重点投資する特別枠2兆円財源を捻出するため。
・歳出大枠は71兆円以下を堅持。
・地方交付税(17.5兆円)、社会保障費(27.3兆円)、子ども手当など実施済みの民主党マニフェスト関連予算(3兆円)を除いた23兆円を10%削減対象。

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 参院選で敗北を喫したマニフェストの関連予算を堅持するのは説明し切れないという話。地方交付税と社会保障費を真剣を必要最低限にしていこうとしなければ、10%削減など達成しようもない。

 この二つを維持しながら10%削減ができるほどの政治力を、今の内閣が持ち得るのだろうか。昨年大勝した衆院選直後でさえ、財務大臣以外に真の“査定大臣”は現れたとは言えない。

 まして子ども手当などのマニフェスト関連予算については、参院選の結果が何ら斟酌されていない。旧自民党政権時代の配分比率不変の法則を打破してメリハリを付けるのは大変結構なことだが、総額は膨れ上がってはどうしようもない。

 予算組替えは、理念だけ掲げても進まない。首相と財務相が強くならなければなし得ない。破滅的キャラの要求大臣が一人でもいれば、かなりの刺激にはなるだろう。
概算要求基準 〜 特別枠2兆円 [2010年07月22日(Thu)]

 今日の時事通信によると、政府・民主党は11年度概算要求基準に関し、医療や環境に重点配分する2兆円「特別枠」を設けるとのこと。

〔記事概要〕
・社会保障費自然増分1.3兆円も加え、財源は無駄削減徹底で捻出。
・民主党政調会は概算要求基準提言をまとめた中で2兆円特別枠を設置し、デフレ脱却や経済成長、雇用確保、マニフェスト実施に充てるべきとした。
・提言には、国家公務員人件費など予算無駄排除も盛り込んだが、具体的削減規模は明記しなかった。
・財源確保について、城島政調会長代理は「特別会計を含め、無駄な事業をゼロベースで見直す中で生み出していく」。 

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 昨年の政権交代以降に醸し出されたもの以外の“無駄”を出すとなれば、それは各予算費目ではなく、予算の執行期間や転用可能範囲といった配分技術の高度化しか方法はないと思料。

 各予算項目の中から“無駄”なるものを出そうとするならば、できない相談を今年もしてしまうかもしれないという話になる。記事での表現手法にもよるのだろうが、国家公務員人件費を“無駄”と記述するのは過誤だ。

 実質上のシーリング復活としなければ、昨年秋からの今年度予算編成と同じ轍を踏むことになることは明らか。『一律1割削減』などというのは、本来はナンセンスなことである。案の定、出てはすぐ消えたが、他に妙案はない。

 現実問題として今の政権構造では、その他に“公平性”を印象付ける手法を見つけることはできそうにない。総理の個性と強さが参院選敗北によって吹き飛ばされたので、財務省が主導するしかない。本当に財務省主導であれば、こんなに借金は増えなかっただろう。
議員歳費の削減議論 〜 引き下げデモクラシー [2010年07月21日(Wed)]

 今日の産経新聞ネット記事によると、仙谷官房長官は民主党が参院選マニフェストに関し注文をつけたとのこと。

<記事抜粋>
・議員経費削減に関し、「みんなが低い方に合わせるように足を引っ張り合うことが果たしていいのか。『引き下げデモクラシー』みたいなことには気をつけて議論してほしい」。
・新議員会館について「豪華すぎる」とする報道に、「トイレが200何カ所あって多すぎるとの意見があるが、大勢が集まるときに一番考えなきゃいけない話だ」。

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 議員歳費も、公設秘書給与も、公務員人件費も、永田町や霞が関に勤務している場合を考えると決して高くはなく、寧ろ低いとさえ感じる。しかし、この類の話はどこに最低ラインを求めるかが先行してしまいがち。

 そうなると当然に、北海道から沖縄までの全国平均云々となる。或いは極端な例では、最低賃金との比較を出そうとする向きが出てくる可能性もある。都会の公務と田舎の公務で、生活面も含めて費用はどうあるべきか。

 最低賃金制度は都道府県ごとなので、公務賃金も都道府県ごとにすべきとの議論も出てくるか。低い方に足を引っ張ることは望ましいとは思えない。公務賃金水準を無駄という視点で見るかどうかというのもある。

 今の世情、それは非常に危険なこと。賃金水準の多寡ではなく、総費用と配分方法を考えないといけない。そうすれば、自ずと“引き下げデモクラシー”ではなくなる。結局、全員で均等な痛みを享受し合うことにするのが最善という結論になるだろう。(但し、それを断行するかどうかは、それこそ政治判断となる。)
国会改革関連法案 〜 国会審議は活性化するか [2010年05月15日(Sat)]

 昨日の時事通信によると、与党3党は官僚答弁制限などを盛り込んだ国会改革関連法案を提出したとのこと。

〔記事抜粋〕
・民主党政治改革推進本部の岡島事務局次長は「官僚主導から政治主導の国会に変えたい」、「全会一致の努力は続ける」。
・法案は官僚答弁を制限し、内閣法制局長官を国会答弁が認められている「政府特別補佐人」から除外。副大臣と政務官の増員も。

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 衆院に提出されたのは、「国会審議の活性化のための国会法等の一部を改正する法律案」と「衆議院規則の一部を改正する規則案」の2つ。内閣府の副大臣や、内閣府・法務省・厚生労働省・国土交通省の政務官を増員するとともに、内閣法制局長官の国会答弁を禁止することで国会審議の活性化を図ろうという趣旨。

 政府参考人もなくす。こうした制度変更は猛反対されるような性格のものでもないが、他の重要法案を差し置いてまで先行的に成立させる必要性にも乏しい。法案の成否に強い興味を持っているのは、与党議員と与党職員だけではないだろうか。

 国会改革関連法案や政治主導確立法案は、昨秋の政権交代を体制面で顕すものと思料されるが、遅きに失した感が大きい。今更言っても仕方ないが、政権交代直後に与党提出による一括法案として臨時国会で処理すべきであった。

 そうであれば、もっと話題性を振り撒いていただろう。時機を間違えると、中身まで間違っているように見えてしまう。これによって国会審議が活性化しなくなることはないだろうが、活性化するとも思えない。殆ど何も変わらないのではないか。
  
政治主導確立法案 [2010年05月13日(Thu)]

 今夜の時事通信によると、国家戦略室の「局」への格上げを柱とする政治主導確立法案は審議入りしたとのこと。

≪記事概要≫
・鳩山首相は「外交分野も含めて、首相がその時の情勢を踏まえて必要と認める場合には国家戦略局の所掌事務となり得る」。
・戦略局所掌事務について、経済運営や予算編成に関する基本方針の企画立案のほか、「首相が指定するもの」と定めている。首相は「既に気候変動問題などは所掌事務としている」。 
・内閣官房長官や各府省政務三役を補佐するため、内閣政務参事や政務調査官を新設、民間人や与党職員らを登用。

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 この“政治主導確立法案”の正式名は、「政府の政策決定過程における政治主導の確立のための内閣法等の一部を改正する法律案」。概要要綱を御参照。そもそも、提出主体が内閣官房であることについて大いなる違和感を感じる人は多いだろう。何故、議員立法案としないのか。

 政府の政策決定過程における政治主導の確立のため、内閣官房に国家戦略局を、内閣府に行政刷新会議及び税制調査会をそれぞれ設置する訳だが、この3つとも昨年の政権発足後直ちに設置された。担当閣僚のパフォーマンス如何であると言うべき。

 国家戦略官や内閣政務参事といった政治任用職は新設ではあるが、冷めた見方をすれば、担当閣僚が誰の言うことを聴くかによって物事の方向性は決まる。権限の有無ではなく、担当閣僚との相性。

 この法案は成立させるに越したことはないが、成立しなくとも実務面で十分賄える。与党職員が行政職に就くことができることは目新しい。それが最大目的だとは思わないが、実質的な新しい利権がここにあることは間違いない。
 
厚労相と労政審 〜 どちらの言い分が正鵠を射ているか [2010年04月02日(Fri)]

 昨日の読売新聞ネット記事によると、政府が労政審答申内容を変更して派遣法改正案を国会提出したことに対し、労政審は答申を尊重するよう求める意見書を長妻厚労相に提出したとのこと。

【記事抜粋】
・意見書は「公労使3者により真摯な議論を積み重ね、ぎりぎりの調整を行った結果であることにかんがみれば遺憾」。厚労相は「重く受け止める」。
・製造業派遣原則禁止を盛り込んだ同法改正案を巡っては、雇用期間に定めのない派遣労働者に限り「事前面接」解禁が労政審答申に盛り込まれた。
・社国両党が「派遣労働者の差別を助長する」と、この規定を削除した改正案が提出。

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 政策内容を考慮しなければ、与党内調整の結果が優先されるべきだという話。労政審の言い分は理解できるが、所詮は一閣僚の諮問機関に過ぎず、その権能は大臣諮問に対して答申することでしかない。その限りにおいて、厚労相の対応は当然のこと。

 脱官僚・政治主導を掲げる政権であれば尚更、労政審意見書通りにはできないはず。政策と政治が全然違うことはよくあること。厚労相の「重く受け止める」との語り口は定番。「重く受け止める」だけで十分である。

 本改正案は雇用情勢の改善に帰結しないので、規制強化が施されることを以て一部の主張が達成されるだけで終わるだろう。雇用情勢は経済状況如何であり、派遣切りなど失業者対策は社会的安全網政策で賄うべきものだ。

 実は、それらは既に相当程度のものが用意されている。情報の伝播範囲や手続の利便性が施策効果を左右している。殆どの場合、立法上の問題ではなく、行政上の問題であると思われる。
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