
平成25年 沖縄戦戦没者遺骨収集活動 1[2013年02月12日(Tue)]
平成25年 沖縄戦戦没者遺骨収集活動 1
今年も沖縄県へ遺骨収集に行ってまいりました。
日程は2月7日〜10日の4日間です。
今回はいつものように那覇市の国吉勇氏と青森の浜田哲二・律子ご夫妻をはじめ、神戸の正木麻衣子氏と沖縄県のY氏にもご協力をいただきました。
場所は沖縄本島の南部に位置する糸満市糸洲(いとす)で、多くの壕やガマがある場所です。
現場に到着し、まずは状況を確認します。
約10メートル離れた2つの人工壕を同時に調査していきます。
1つは奥行きが約2メートルで天井が2.5メートルほどの浅い自然壕ですが、この小さな壕ではすでに多くのご遺骨をお迎えされていました。
もうひとつは、急勾配下りの奥行き約15メートルの軍構築の人工壕で、突き当りから鋭角に左へ折れ曲がり再び急勾配で登り、その先約10メートルほどで別の出口へつながっていますが、一番奥から出口への上り坂はかなりの土砂が崩れ落ちていました。
人工壕の入口。入口は狭く、四つん這いではいらなくてはならない。
また、入口の頭上は今にも崩れ落ちてきそうな岩を、垂れさがる木の根やツルが支えているだけで、非常に危険な状態。
また、入口の頭上は今にも崩れ落ちてきそうな岩を、垂れさがる木の根やツルが支えているだけで、非常に危険な状態。
中に入るとやはり火炎放射器で真っ黒に焼かれていました。
相変わらず、真っ黒に焼かれた壕の側壁
内部から入口を望む。
1メートルあるかないかの狭い入口
1メートルあるかないかの狭い入口
とりあえずは2人ほどで作業ができるかというくらいに天井が崩れ落ちており、蓄積した土砂は約1メートルにもなっています。
この土砂をいつものように当時の地盤まで掘り下げなくてはなりません。
真っ暗な中、国吉氏と共に掘り続けると、いつものように小銃弾などの遺留品が出てきます。
壁の黒いところの一番下のラインまで土砂が蓄積しているのがおわかりだろうか。
ラインから当時の地盤まで約1メートルを手で掘り下げる。
ラインから当時の地盤まで約1メートルを手で掘り下げる。
湿気が多く蒸し暑い中をもくもくと手際よく掘り続ける国吉氏。
とても74歳とは思えない動きだ。
とても74歳とは思えない動きだ。
さらに掘るとハブラシが出てきました。
わかりにくいが、「ライオン」と書かれている
さらに掘るともう一本ハブラシが。
このハブラシは資生堂と書かれており、きちんとセルロイドのケースに納められていました。
おそらく、指揮官クラスの将校が使用していたのでしょう。
「資生堂」の文字が書かれている
掘り続けること数十分、今度は陶器の食器類が多くでてくるが、御遺骨はかけらも出てきません。
割れた食器や茶碗がつぎつぎにでてくるなか、ひょうたん型をした小さなものを発見。
なんと、箸置きでした。
かわいい箸置き
裏側を見れば箸置きとよくわかる
この壕の周辺はかなり多くのゴミが捨てられているので、はじめは現代ゴミかとも思いましたが、戦時中の地盤付近で出土したことと、ここはそれまでだれも調査していない場所であることから、戦時中のものだとわかります。
国吉氏も「こんな形のものは、はじめてだ」と、興味深々。
このあと鍋なども出たことから、おそらくこの付近は炊事場だったのかもしれません。
さらに掘ると国吉氏が軍刀を腰につりさげるために装着するベルト「略刀帯」の左に刀と略刀帯を繋げておく「グルメット」と呼ばれるものを発見しました。
通常、グルメットは帯刀する下士官以上の者が装着しているのですが、普通は幅2センチほどで細く、長さは25センチ〜30センチの皮製の軍官給品ですが、今回出たものは皮の部分が編み上げた鎖で出来たものでした。
これは将校などがよく特注したものです。(写真を撮るのを忘れました)
その後は軍官給品の茶碗が出てきたのですが、これがまた国吉氏も見たことが無いものらしいです。
これまで、この壕では御遺骨が全くでていないことから、もしかしたら隊長や参謀などの上級将校が使用していた可能性が高いようです。
その後はアンプルや方位磁石、一升瓶に入った燃料(軽油のような匂いがしました)ほかの遺留品がでてきました。
この日出てきた遺留品。
グルメットは国吉氏が持っていたため写真がありません。
グルメットは国吉氏が持っていたため写真がありません。
美しい絵柄が焼かれた茶碗。軍の官給品を示す「岐」の文字が見える
軍官給品としては珍しい、「梅とウグイス」の柄
燃料が入った一升瓶
「NODA SHOYU」と書かれている
一方、もうひとつの壕では正木氏とY氏が地道に作業しています。
こちらのほうは、どちらかと言えば遺留品はほとんどなく、御遺骨だけがたくさん出ています。
正木麻衣子氏は国吉氏とともに活動をはじめて、9年のベテランです。
大きな御遺骨はもちろん、粉々に砕け散った小さなかけらも見逃さずに丁寧に拾い集めています。
細かいひとかけらも逃さず慣れた手つきで丁寧に御遺骨を集め続ける、正木麻衣子氏
土のう袋いっぱいに集められた御遺骨
やはり、細かい作業は女性にお任せして、男性はせっせと体力仕事のほうがいいみたいですね。
こうして時間が来たので、第1日目の活動は終了としました。