今日の先生 寺田宏之先生
今回のインタビューは、河南町の小学校の先生にインタビューしました。今回は小学校の話ではなく、先生が以前体育の教員として勤めておられた、中学校での生徒指導の話を中心にインタビューしました。
インタビュアー(以下:イ)
先生は、子どもたちの非行を防ぐためにどんなことに気をつけていますか?
先生
まず生徒、保護者との信頼関係を築くこと。例えば、風邪で休んだ生徒がいれば家庭訪問に行く。「様子はどうですか?」と少しでも顔を見せることで親御さんの安心感にもつながる。またその近くに他の生徒の家があるならついでに訪問します。悪い事をしたときだけ、連絡をするようでは信頼関係は出来ない。だから少しでも顔を見せて日頃からコミュニケーションをよく取るようにしてるよ。保護者とのコミュニケーションだけでなくて生徒とゲームをするのでも、じゃんけんするだけでも訪問する理由は何でもいいねん。とにかく、毎日が積み重ねやね。信頼関係が出来てくると、保護者の方からも連絡をくれるようになるから。あと、保護者からの電話で5分以上かかりそうやったら家まで行って顔見て話すほうがいいよ。
学校での関係作りも大切。中学校は、教科担任制で自分以外に子どもたちを見てくれる先生がたくさんいてるから、各時間の先生に「○○君ちょっと気に掛けて、様子見といてください」という風にお願いして、情報をもらう。イジメや非行を防ぐには先生同士が連携をとって生徒の把握をすることも大事やね。
それと、学校内で問題が起きた時の先生の対応を生徒はみてるで。正面から向き合ってくれる先生やと子どもが感じるかどうか。これも大切。例えば、注意できない先生、反抗的な言葉を聞き流してしまうような先生には、子どもは心を打ち明けてくれへんと思う。「先生が真剣に叱ってる。」「この一言にどう返すんやろ。」しっかり見て聴いてるよ。どんな時も最後まで生徒と向き合うことが大事。
みなさんはどうでしょう?いわゆる「やんちゃな子」と先生の関係をよく見ていませんでしたか?
イジメが起こったら、まずは生徒ひとりひとりを見る。被害者といじめ集団ではなく、いじめ集団の中の一人ひとりと対話する。だって一人の人間なんやから思いは違うやろ?その時は少ししか理解できなくても、じっくり向き合って、その体験を通してその子自身がどう生きていくのかを一緒に考える指導が大切ちゃうかな。
イ:厳しく指導していくのも大切だと思いますか?
そうやね、厳しい指導は必要やと思う。でも叱りつけるだけの指導じゃないで。自分が子どもやったら嫌やろ?普段そんなに関わらへん先生にいきなり怒られたら・・・。日頃から自分のいいところいっぱい見つけて、いっぱい褒めて、全身で自分のこと思ってくれる先生やったら多少厳しく叱られても思いが伝わると思う。もちろん他の生徒や保護者にも伝わる。厳しい指導をするためには、指導前に30倍の関係作り、指導後に30倍のフォローをしてるよ。ただし他の生徒が見てる前では引かへん。悪いことしたら全力で叱る。その代わりあとでゆっくり話し聞いて何日もかけてその子のフォローをするよ。やっぱり子どもは可愛い。それが一番にあるから厳しい指導も出来る!
イ:ありがとうございます。それでは、質問を変えまして・・・先生はバスケ部の顧問をされていましたが、もし自分が経験したことの無いクラブ顧問を任されたらどうしますか?
先生:
それはもう・・・・やるしかないやろ(笑)意地でも傍にいて、一緒にクラブする!一緒に走ったり、練習後に一人残って練習したり・・・。それがどんなにヘタクソでも、部員一人ひとりの弱点をみてどうしたら克服出来るか調べて、一緒に考えて、練習につきあってくれるような先生の姿を見たら子どもたちは絶対に馬鹿にしたりせーへんよ。子どもたちは素直やから。 でも、どうしても無理なら断ることも大切やな。
イ:なるほど、では先生が、先生同士の関係について気をつけていることはどんなことですか?
先生:
連携をとっていこうということは、同僚の先生方ともよく話してるよ。小学校やと中学校に比べて、多くの生徒を教える機会が少ないから、ちょっとしたことでも連携を取り合うようにしてる。小さなことが大きなことに発展することもよくあるからね。やっぱり子どもたちに何があったかを知ってるか知らんかでは接し方も違ってくるしね。
イ:先生が考える「教師」とは何ですか?
先生:
難しい質問やな〜・・(笑)普通にしてるだけやしな〜・・生きざまかな。今まで生きてきた人間性そのままが俺の教師像やと思う。自分とは違う人間を演じたりできへんからなぁ。いい教師を演じたって子どもは見透かすしね。
イ:では先生に必要な力とは何ですか?
先生:
子どもをしっかり見る力と職場を見る力。職場を見る力と言うのは、これはプロデュースすることにつながってくるんやけど、どんな先生がいて、その先生とどう連携をとっていくかを考える力。いろんな場面に適した先生をプロデュースする!でも、これも子どもたちとの関係と同じように日々の信頼関係が大切やからある程度経験を積んでからできるようになったらいいと思うよ。
イ:それでは最後に、教師を目指す人へメッセージをお願いします!
先生:
必ずしも教師になる必要はない!特に教育学部や教育系の大学に入ったら道が一本になりがちやと思うけど、教師になることだけがすごいことでもないしね。もっと自分に向いてることが見つかるかもしらん。いろいろな子どもやいろいろな職業の保護者がいてるし、学生の間にいろんなことをやってみて教師の道を考えたらいい。
教師の仕事はテレビドラマみたいな甘い仕事じゃないけど、あまり肩肘張らずに力を抜いて、自分らしさを大切にして教師になったらええと思うよ。こどもたちはドラマよりも一人ひとりがめちゃめちゃ可愛いから!何事も迷うくらいなら一回やってみたらいい!
インタビュー感想
初めての教師インタビュー。緊張していたけど、いざ先生に会ってみると全然大丈夫でした。今回、先生から体罰やいじめについて伺いました。僕にしたら、「体罰をするのってあかんやろ…」と思っていたのですが、お話を聞いていると「ん〜」となってしまいました。中学生の子たちなら、真っ向からぶつかりあう事で分かることもあるのかなぁと少し納得したところも。「子どもは大人が見ているよりも、教師をよく見ている」という言葉は、人と人が関わりあうのに手抜きはないということなんやと感じました。先生を見ていると、良い教師像らしくあろうとする教師は、子どもよりも自分を見てしまい子どもをしっかり見れへんから、もっと自由にやってみいと言われている様でした。おもしろい先生に会えて良かったです。(大阪教育大学1回生)
今日のインタビューで、自分の理想に近い先生に出会ったと思いました。とにかく生徒との距離が近い先生で、その為に本当に広く心配りができる人だと感じました。先生はそれを当たり前のことだと言っていましたが、生徒一人ひとりと100%で向き合うことは、簡単にできることではないと思います。私も、子供の目線に立って物事が考えられる先生になりたいと心から思いました!!最後に、迷うならやったらいい!!という先生の言葉がとても心に残りました。貴重な話が聞けて、本当に楽しかったです。ありがとうございました。(大阪教育大学1回生)
私の中学時代の恩師にインタビューをさせていただきました。中学校3年間、先生の姿を間近に感じてきた私にとって、改めて先生の思いをお聞きするのはとても新鮮でしたが、お聞きする中で中学時代の先生の姿をたくさん思い出し「教師とは、自分の人間性、生きざまそのものや」とおっしゃったことにとても納得しました。いつお会いしても寺田先生は寺田先生のままで、精神的に苦しかった進路選択の時、「いつでも好きなときに話しにおいで」とたくさん時間をとって教室で思いを受け止めてくださった先生のままでした。これほどに自分に正直で、あるがままの心で向き合ってくださった先生に出会えたことがとても嬉しく、誇りに思います。ありがとうございました。(四天王寺大学4回生)