今日の先生 K市立小学校教諭
今回は,K市立で小学校をされている先生にインタビューさせていただきました。
前編では,地域連携教育のこと,授業作りのことについてのお話です!
インタビュアー(以下:イ)
先生が勤められている学校ではキッズベンチャーという取り組みがなされていますが、地域連携教育の魅力とはなんでしょうか?
先生:1つは子どもにとって魅力があること。もう1つは地域が力をつけることですね。今まで、地域を教育するということに関しては、学校はあまり意識しなかったのですが、キッズベンチャーという取り組みを通して、地域が伸びるなということを実感しました。そして、子どもにとっては新鮮で刺激になりますからね。
やはり、先生にも限界があります。そこで、ゲストティーチャーを招くこともありました。今までのゲストティーチャーとの関係は技術の提供のみで、より良い人間関係を築くということは難しかった。けれど、キッズベンチャーは長期の取り組みだったので、ボランティアの方と子どもが雑談出来るほどに、世代を超えた良い人間関係が築くことができました。技術の提供という、当初期待していた以上のものが出来ました。また、人間関係を築くことを目的としていた取り組みが浅はかだったなと思わされました。子どもにとって、新鮮な気持ちで臨める学習の機会になって本当に良かったと思っています。
それに、ひとたび人間関係が築けると継続しますよね。地域の人が授業を見に来てくれたり、道で声をかけたりしてくれる。そうなると、知り合いの人の顔が浮かんで、子どもも悪いこと出来なくなっちゃいますよね。出会って、関係が継続していくこと、これこそが子どもにとって良いところなんです。
そして、雑談ができると言うことは地域文化の伝承につながります。廃れると思った文化が継承される可能性がある。キッズベンチャーで正月用品の店がありました。そこでは商品を作りながら、子どもがボランティアの方の話を聞いて、お正月の文化について勉強しているんですよ。「これ大事やな、おばちゃん」って具合に。もしかすると、国分地区で長く受け継がれていたことが継承されて、地域が力をつけるかもしれない。
技術提供という目的外のところから、自然と人間関係が形成され、学びが生まれる。これは教師だと、距離が近すぎて難しくなるんですよね。ボランティアの方がほどよい距離でいてくれるからこそだと思います。
イ:先生が持つ、育てたい子ども像というのは何でしょうか?
先生:まず、わかってほしいのが,教員を目指す理由として「子どもが好き」だけというのは残念です。それは誰にでもいえますし、それだけなら他にも職業の選択肢がありますよね。私が常に念頭においているのは2つあります。1つは個人個人が幸せになること。それには仲間作りであったり、コミュニケーション能力であったり、学力であったり、いろいろな力を伸ばす必要がありますが、全ては幸せになってほしいためです。2つ目は国を創る人間を創る。グローバル社会において、国にとらわれているのはどうかと思うけど、日本人として日本の文化を継承し、日本の国を創る人間を育てるというのが私の持つ子ども像ですね。
イ:普段の教科学習においても、このことを意識しておられるのでしょうか。
先生:もちろん!漢字1つが、幸せかどうかを分けることがありますからね。
イ:どのように、子どもたちに説明するのでしょうか?
先生:入試を例に取ることもありますね。「試験のときに、漢字1つ間違えたから合格できなかったら嫌だよね?」という具合に。理科も社会も算数でも同じです。色んな例を挙げます。「災害が起こったとき、どうするんだー。君は生き延びれるのか?」みたいな感じに遊びながらも真剣にします。子どもの興味を引くために、題材選びも真剣に選びます。
イ:勉強は何のためにするのかを子どもたちに聞かれたらどう答えますか?
先生:出来るだけ、勉強が必要なシチュエーションを子どもたちに考えさせます。確かに、生活に全く必要の無いものもあるかもしれない。けど、みんな好奇心がありますよね。この好奇心が関心・意欲につながるんだと思います。子どもの好奇心のどこがくすぐられるかわからないけど、役に立たないかもしれないけど、「おもしろそうやん!」と提示する。そのために、題材選びと同様に、提示の仕方も工夫します。
これは、マグロを釣るときの釣り針です。すごく大きいでしょう。マグロを獲るときはこれを2500本つけた、120キロの延縄を使うんです。これを子どもたちに見せると
「エサは?」
「長さは?」
「値段は?」
「めっちゃ大変やん!」
という風に、どんどん教科書に無い広がりが生まれます。マグロに打ち込まれていたこの銛も同じように、子どもの興味を引きましたね。
他にも、実験室でアルコールランプのアルコールを、わざと机にこぼして火をつけたこともあります。危ないと思うかもしれませんが、実験室の机は耐火性があるので燃えません。火も段々と小さくなって最後には消えてしまいます。これは安全指導にもつながりますよね。これも、教材研究の一つです。指導要領の改訂などで教えることは減ってしまいましたが、工夫次第で好奇心をくすぐるように教えることは可能です。