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カールじいさんの空飛ぶ家 [2010年01月06日(Wed)]
 表題の映画はアニメながら、観客にあまり子ども見当たらない。どちらかというと、おじさんとおばさんが多い。元々ディズニーのアニメのコンセプトは、大人と子どもが共に楽しめるものだから当然だし、ピクサーの映像作りには定評があるので、大人の厳しい鑑賞眼に耐え得る秀作だ。

 映画の批評は、おしなべて厳しい意見が多い。それは、その人にとっての期待度に応えられないからであって、その映画そのものが詰まらない訳ではない。いろんな人たちにとって興味のあるテーマを何とか入れようとするあまり、盛り沢山のテーマにする傾向もあるので、主要なテーマがぼやけてしまうことがある。敢えて辛口のコメントをすれば、そんな傾向にある映画だったかもしれない。がしかし、私は見ていて楽しかった。

 ディズニー映画の永遠のテーマは、人間愛(生物愛)と自己成長に伴う自立にあると思うが、主人公のカールじいさんとラッセルという子どもが、犬や怪鳥らと共に絆を深めていくプロセスが楽しい。そして、カールとラッセルが共に大切なものに気付き、自分自身の力でしっかりと歩んで行けるようになる自己成長へのステップに感動する。

 このような映画を見ると感じるのだが、アメリカという国はすごく奥深い精神文化を持っているものだと感心する。リーマン・ショックから起きた金融破綻や、その後の金融資本家の行動を見ていると、自己中心的で拝金主義に凝り固まった魑魅魍魎どもが跳梁跋扈するとんでもない国、それがアメリカだと思いがちである。しかし、こんな素晴らしい映画を作る善良で誠実なアメリカ人もいるということが解り、ほっとする自分がいる。

 カールじいさんは、お金も力も名誉もなく身寄りもない孤独な老人である。杖をつかなければ歩けない、いわゆるよぼよぼの老人だ。それが、今は亡き愛妻のため、そして少し生意気だけど憎めないラッセル少年のために、衰えた肉体を酷使して大活躍してしまうシーンは圧巻である。年老いて世話になるばかりが、老齢の方の生きる道ではないということを、示してくれる。そして、どちらかというと口ばっかりで役に立たない少年が、人助けを通して自立していく姿も美しい。

 人間には、計り知れない能力が秘められていて、自分の為でなく愛する誰かの為に何事かを為そうとするときに、その秘められた力を遺憾なく発揮できるのだ。ラッセル少年や怪鳥ケヴィンを守るために、カールじいさんは獅子奮迅の働きをして見事悪者から救うのだ。そして、いつの間にか杖なしで歩けるようになるのである。人は自ら変わろうと思わなければ変化できないということも、見事なストーリーで教えてくれる。いい映画を鑑賞させてもらった。
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