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政治哲学「最小不幸社会」 [2010年06月09日(Wed)]
 菅直人首相の就任記者会見で出た言葉が「最小不幸社会の実現」である。おや?間違いなのではと思った人も多いのではないだろうか。最大幸福社会を作るのが、本来の政治の役目なのに、いやにみみっちいことを言ってるなと疑問を持ったのは私だけではあるまい。でも、彼の言わんとしていることは、なるほどと思えないこともない。確かに、政治というものは一部の幸福者を作るためのものではなく、すべての人々が最低の幸福が享受できる社会を実現させるのが目的である。その言葉を解りやすく、「最小不幸社会」と言い換えたのなら納得できよう。

 この菅首相の「最小不幸社会」という政治哲学は、首相になってからの持論ではなくて、既に20代の頃から掲げていたらしい。多くの政治家が、政治哲学らしいものを持っていないというか、公にしていない中で、ずっと持ち続けていてブレないというのも注目に値する。政治家たるもの、けっして揺るぎのない政治哲学を持つべきであろう。何の為に政治家を志したのかまったく解らない二世議員が多い中で、サラリーマンの家庭に育った人が、このような政治哲学を掲げて首相になるというのは素直に歓迎したい。

 権力闘争や派閥力学に縛られて、お金を集めることだけに腐心している派閥の領袖が多い中で、国民の幸福を願って政治を行うという強い決意を示す政治家は好感が持てる。リンカーン米国大統領がゲチスバーグで行った演説は秀逸だ。政治は誰のためにあるのだということをしっかりと示してくれたし、民主政治というものの基本を見事に表わしている。今の日本の政治は誰の為に行っているかと言えば、一部の金融資本家や大企業・富裕者の為に行っているとしか思えない。国家というか経済を成長させるためには、国際競争力を高めて株価を上げるしかないと、国民は思い込まされている。その結果が、こんな不幸な社会を作ってしまったのである。

 菅首相は、最小不幸社会を作ると言っている。皆がそこそこ幸福でいいんじゃないかと思う。最大幸福を一部の人々が求め過ぎると、富の集積が行われ、所得格差や地域格差が生まれる。ワークシェアリング的労働政策を浸透させて、高福祉社会を実現させている北欧・ドイツ・オランダ等は最小不幸社会を実現させている。勿論、高福祉社会は社会保障費が嵩んで税負担が大きい。それでも、安心して老齢を迎えることが出来る社会なら、高い税負担に反対する者はいない。日本の内需が低迷してデフレになっているのは、将来の生活に対する不安からである。

 菅首相が目論んでいるのは、将来に対する国民の不安を払拭して内需型の循環型社会を作ることではないかと思われる。国民それぞれが、「知足」(足るを知る)という言葉に代表されるように、そこそこの幸福で満足して、最小不幸社会の実現の為に協力するという覚悟があれば、消費税増税の道筋も見えてこよう。自分だけが幸福になりたいと思うような国家を政治が作り出してはならない。喜んで所得の再配分に応じて、ワークシェアリングをすることにより、より人間的な生活、つまりはワークライフバランスが取れた社会、それが最小不幸社会なのだと思う。欲望を貪る心を捨てて、皆が幸福になる社会の実現に共に邁進しようではないか。
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