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ムンテラ [2010年05月28日(Fri)]
 ムンテラという言葉を聞いたことがあるであろうか。医療用語であり、医師が患者さんに病状を説明することを言う。元々、ドイツ語でありムントMunt=口と、テラピーTherapie=治療をつなげた言葉で、直訳すると口での治療となる。つまり、言葉で治療するという意味であり、患者さんを言葉で言いくるめるという意味にも取られやすい。したがって、病院によってはムンテラという言葉を使用禁止にしている場合もあるらしい。病院の中では、医療関係者の間だけで使われていて、患者さんには使用しない言葉である。

 このムンテラであるが、医師はインフォームドコンセントが重視されていることもあり、かなり丁寧にする傾向にある。昔は、「黙ってオレの治療を受け入れなさい、嫌なら治療をしませんよ」という態度をする医師が多かったが、最近は病名の告知も包み隠さずするようになった。ましてや、後で訴訟を起こされるのを極端嫌う傾向もあり、必要以上に丁寧なムンテラをするようになった。患者さんの権利意識も高まっていて、かなり神経質な態度でムンテラする医師も多い。中には、ムンテラした内容を、患者さんや家族がメモするのさえ嫌う医師もいるらしい。そんな愚かな医師もいるというのは、情けないことである。

 さて、そんなムンテラであるが、どうも困った傾向にあるらしい。治療後に苦情を言われたり訴訟を起こされたりするのを避ける為なのか、最悪の治療結果を事前に告げることが多い。さらには、治らないということを告げる傾向にあるという。例えば、余命なんかも最短の期間を告げるというのだ。また、手術の予後も悪く言う傾向にある。それでなくても、病気になって沈みがちな患者さんに、悪い結果をことさら言うのは、どうなのだろうか。かえって、病気を治すという気力を削いでしまわないだろうか。治療を受ける前に、がっかりさせることを言ったら、治療効果がなくなるように思えて仕方ない。

 どうして、医師はそんなに弱気になってしまったのであろうか。確かに訴訟を起こされるからと、自己保身のためという意味もあるが、それ以上に何か別な意味があるような気がする。おそらく医師たちは、悪意があってしているのではなく、無意識のうちにであろうが、最悪の治療結果を告げる。そうすれば、もしその最悪の治療結果以上に良くなれば、自分の治療効果が予想以上にあり、名医ということになる。予想した以下の治療結果になったら、ヘボ医者として蔑まれる。だとしたら、医師はどちらの治療予想をするだろうか。悪い治療結果を予想するに決まっている。

 しかし、本当の名医は自信を持って良い治療結果を告げるのである。特に神の手と呼ばれるような、世界的な名医は決まって、「大丈夫ですよ、治ります。心配ないですよ」と患者さんに告知する。そして、結果もその通りになるのである。患者さんは、安心して先生に身を委ねるし、精神的にもリラックスするので、手術の予後も実にいいのである。だから、益々名医の治療結果はあがることになるのである。ところが、自信のない医師は、最悪の結果ばかりを言うものだから、患者さんは益々不安になり、ストレスも高まり治療結果は予想したとおりになりやすいのである。

 人間は、予想したとおりの未来になることが多い。特に悪い結果を予想すると、そうなる場合が多い。おそらく無意識下でそう思い込みやすいのであろう。そうすると、無意識がその未来を実現しようと働いてしまうのである。だから、ムンテラはけっして悪い結果ばかりを告げてはいけないのだ。ましてや、医師自身も自分で言ったその言葉を自分の耳で聞いているのだ。無意識のうちに、その結果になる行動をしてしまう傾向になる。言葉は言霊である。言葉にしたとたんに一人歩きするのである。名医は、良い治療結果を告げるし、ヘボ医者は悪い結果をことさら告げる傾向にあるということを知っていると、医師の選択を誤らない。悪い結果ばかりを言う医師に当たったら、セカンドオピニオンを選択したほうが良い。ムンテラの仕方で、医師の良し悪しが解るのだ。
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