NHKフォーラムに参加して [2010年11月26日(Fri)]
認知症フォーラム
あきらめない 〜最新医療と 社会の支え〜 時 9月4日 午後1:30開演 場所 千葉市民会館 主催 NHK千葉放送局 NHK厚生文化事業団 読売新聞 酷暑でもっとも暑い時間帯にもかかわらずたくさんの人が会場に集まっていて 認知症への関心の高さを感じました。ホワイエのメンバーも8名の参加です。旧稲毛ホワイエ利用者家族の酒井さんがパネリストのお一人であることと 最新の医療情報が聞けることを期待して臨みました。参加できなかった仲間のために、聴き取り得たことのみですが、まとめてみました。(H) 1.基調講演 《暮らしを支える「心・技・体」 〜地域医療連携のこれから〜》 旭神経内科リハビリテーション病院長 旭 俊臣氏 認知症の早期発見とリハビリの重要性、そして地域のネットワークの必要性を話されました ・心・・認知症になっても心は生きている。 技・・リハビリの技術。 体・・内科的合併症も合わせて治療する。 ・早期発見されたら早期改善の為には週3回のデイサービスが望ましい。病状の進行が緩やかとなる ・リハビリは頭と体両方使う。神経心理療法・理学療法・作業療法・言語療法など複合的に行う。 ・リハビリによって機能改善できる。 2.パネルジスカッション (パネリスト3名) 国立病院機構 千葉東病院 神経内科医長 吉山 容正氏 認知症についての説明から最新の診断技術そして新薬に至るまで詳しく説明されました。 ・診断において重要視するのは 問診において日常生活に支障があるかどうか。認知機能テストのみでは誤診してしまうことがある。 ・脳画像SPECT・・脳の血流を見ることによりどのタイプか(アルツハイマー型、レビー小体、前頭側頭型)わかる。MRIより早期に判明。 ・アミロイドペット検査・・β―アミロイドがどの程度たまっているかが分かる。 ・診断技術の進歩によりMCI(軽度認知障害)の段階で分かる為早期に対策が立てられるようになってきた。 ・髄液検査・・髄液中のアミロイドが減少している ・アリセプトは脳の機能を上げる等 早期服用が効果あり。 ・中核症状と周辺症状(BPSD)・・周辺症状は適切なケアなどにより改善の余地がある。 ・抑肝散・・周辺症状改善に使われる。セロトニンの量を増やすことにより幸福感満足感を上げる。(昔からある漢方薬。子どもの疳の虫を抑える薬。) ・新薬3種・・ガランタミン・リバスチグミン・メマンチン 今年2〜3月に申請され1〜2年の内に認定される見通し。リバスチグミンは貼り薬で介護する側にも使いやすいものとなる。 ・治験中・・抗体療法を始めた治験者が紹介され 進行を遅らせる効果が期待されている。 ・ケアのポイント・・認知症の人ができることを見極め辛抱強く待つ。言葉が出ない人には心を読み取る。本人の気持に沿う。 アミロイドが溜まり始めるのは発症の20年前からとの説明に思わず会場からため息が・・。『ひょっとして自分も・・。でももう遅い?!』ただ新薬の開発等大きな光が見えているとのお話しに期待したい。 有限会社プラン・ウエスト代表取締役 宅老所・デイサービスひぐらしのいえ 代表 安西 順子氏 認知症になっても最後まで普通に暮らして欲しい・・という思いで《ひぐらしのいえ》を運営しておられる。 ・認知症に伴う周辺症状・もの忘れ、お漏らし、見当識障害など を特別の事と捉えず、老化に伴う状況の変化と捉えて接する。 ・記憶が薄れても感情はしっかり残っているので、その人に沿った介護を心がけている。 ・本人の心は生きている 最後まで生き生きと暮らして欲しい。 施設に馴染めない利用者に、専門職としてどう対応したら良いか試行錯誤した様子が映像で紹介された。 面倒見が良かったというご家族の話から、人のために立ちたいというご本人の気持を尊重し、失敗を恐れずお茶入れなどお任せしたところ落ち着いてきた。手が出て乱暴な困ったおばあちゃんが穏やかな表情に変化。本人の能力をどう引き出すか職員の粘り強い対応が実った例 *おばあちゃん・・この施設での位置づけがおばあちゃん。 ・松戸市の中核地域生活支援センター《ほっとねっと》24時間365日稼動。このセンターと地域のネットワークのお陰で、一人暮らしで倒れた女性が施設に入ることになった例が紹介された。 認知症の人と家族の会 千葉県支部 世話人 酒井 邦浩氏 1994年奥様が若年性認知症と診断される。当時治る見込みはないと言われ先の明かりが見えず、ご夫婦共に大変落ち込む。特に奥様の不安が大きく『私この先どうなるの?何も悪いことしてないのに』とのつぶやきは傍で寄り添うご家族にとっても大きな不安となる。やがて山谷親平氏の『絶望は愚か者の結論なり』の言葉に出会い、気持も徐々に前向きに。1996年には旅行好きの奥様を伴いイタリアへ旅行された。満面の笑みを浮かべたお二人の写真はとても印象的でした。現在 奥様は長期入所中。 ・介護の過程において身体的負担は慣れればどうにかなるが長時間にわたる精神的負担は大きい。家族の会の同じ悩みを持った者同士の精神的支えが力となる。 ・新薬の開発や新しい診断技術など16年前に比べて隔世の感あり。羨ましいとの感想をもらされた。 現在は家族の会の世話人として 大学生や高齢者対象の講師としてご活躍の酒井さん『もし奥様が認知症にならなかったら』の問いに『今頃叩き出されていたかも』との発言が会場の笑いを誘いました。酒井さんも16年のご苦労を経ての明るい笑顔でした。 参加者の感想 ・認知症になると、原因・治療法とも分からない、と長いことされてきたので、出口の無いトンネルに入ってしまった絶望感があったが、今回『あきらめない・・・』のフォーラムに参加し、出口から光がほの見えてきた、という実感がもてた。 ・フォーラムでの家族の話では、十数年前は、若年性認知症初期、当人の不安に、僕が付いているじゃないか、というしかなかった無念さがひしひしと伝わってきた。ようやく医療による新薬、原因の解明など、光が見えてきたことにほっとしている。 |