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ツゲの花 [2012年05月30日(Wed)]
ツゲ(つげ科)の花が咲いています(写真はイヌツゲと思われます)。ツゲは材質が堅く櫛材として用いられ、ツゲが詠まれた万葉歌6首中5首までが「黄楊の櫛」として詠まれています。昨年5/31の記事にその一つを掲載していますが、ここでは、別の歌を紹介します。 今年の4/22に、「飛鳥を愛する会」の現地講座で処女塚(おとめつか)古墳を訪れた折、その日の記事にも紹介しましたが、「摂津国葦屋(あしのや)の菟原処女(うないおとめ)を、葦屋の菟原壮士(おとこ)と和泉(いずみ)の千沼(ちぬ)壮士とが妻問いしたが、二人の愛を共には受け難いことを嘆いて処女は自殺し、二人の壮士もその後を追って死んでいった」、という葦屋の処女塚にまつわる伝説があります。これを題材にした田辺福麻呂歌集や高橋虫麻呂歌集の歌が、『万葉集』巻九の挽歌に載せられています。 これに追和する歌を大伴家持が詠んでいます(長歌と反歌)。その反歌を載せておきます。 【歌】 処女らが 後のしるしと 黄楊小櫛 生ひ代はり生ひて なびきけらしも (R-4212) 【口語訳】 娘子の後世への思い出のしるしにと、黄楊(つげ)の櫛は木となって生え変り、生い茂って枝葉を横になびかしたものらしい (『萬葉集全注』より) 長歌(R-4211)の後半は、 「 ・・・・露霜の 過ぎましにけれ 奥つ城を ここと定めて 後の世の 聞き継ぐ人も いや遠に 偲ひにせよと 黄楊小櫛 然刺しけらし 生ひてなびけり」(・・・冷たい露の消えるようにはかなくなってしまわれたとは。それでお墓をここと定めて、後の世の聞き伝える人も、いつまでも偲ぶよすがにしてほしいと、娘子の形見の黄楊の櫛をこうして墓に刺したのだろう。 それが生い茂って枝葉を靡かせている) となっており、反歌はこれを補強して説明した表現となっています(『萬葉集全注』より)。
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Posted by
katakago
at 13:10
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