ヤブコウジ [2011年11月21日(Mon)]
![]() 裏山の植物園では、ヤブコウジ(やぶこうじ科)が赤い実を付けています。万葉歌では、やまたちばな(原文は山橘・夜麻多智婆奈と表記)として5首詠まれています。ここでは次の歌を紹介します。 【歌】 あしひきの 山橘の 色に出でて 我は恋ひなむを 人目難みすな (J-2767) 【口語訳】 (あしひきの) 山橘のように 色に出して わたしは恋することにするが おまえも人目を気にしないがよい 「色に出でて」は、この歌では、言語や素振りに出しての意で、『萬葉集全歌講義』によれば、「周囲の思惑も気にせず相手への恋心を鮮明にする男が、相手にも人目を気にせず自分の恋を承け入れるよう求めた歌」とあります。 同様の表現の歌として、次の一首があります。 【歌】 あしひきの 山橘の 色に出でよ 語らひ継ぎて 逢ふこともあらむ (春日王 C-669) 【口語訳】 (あしひきの) 山橘のように 思いを口に出してしまえ 人が語り伝えてくれて 逢えることもあろう なお、上記二首の「あしひきの 山橘の」は「色」をひきだす序詞で、「山」にかかる枕詞(あしひきの)を含むので有枕序詞といわれます。 |
Posted by
katakago
at 19:02