オミナエシ [2011年07月09日(Sat)]
オミナエシは、万葉歌では、をみなへし(原文では、美人部師・娘子部四・姫部志などと表記)として詠まれています。山上憶良の秋の七種(ななくさ)の歌にも詠まれていますが、園内に植えたものはもう咲き始めています(早生の園芸種からか)。これらの株は、一昨年の春に播種して育てているものです。 【歌】 手に取れば 袖さへにほふ をみなへし この白露に 散らまく惜しも (I-2115) 【口語訳】 手に取ると 袖までも染まる おみなえしが この白露に 散ったら惜しい 秋の雑歌、花を詠む34首のうちの一首。「にほふ」は、色づく、染まるの意味で、おみなえしの、鮮やかな黄色の美しさが詠まれています。 おみなえしは、万葉歌には14首詠まれていますが、次の歌のように、枕詞として詠まれた例もあります。 【歌】 をみなへし 佐紀沢の辺の ま葛原 いつかも繰りて 我が衣に着む (F-1346) 【口語訳】 (をみなへし) 佐紀沢の辺の 葛原は いつになったら手繰り寄せて わたしの衣にして着られることやら 「をみなへし」は「咲き」の意で、地名の「佐紀沢」のサキにかかる枕詞。この歌は、比喩歌で、表の意味は、口語訳(葛を収穫して糸にし、それを布に織って着物にする)のようになりますが、裏の意味は、「ま葛原」を作者(男)が思っている女性に譬えて、早く成長して結婚できるようになって欲しい、と解されます(NHKカルチャー井手至先生の講座で解説)。 なお、植物名を枕詞にする例として、をみなへし佐紀沢に生ふる(C-675)、をみなへし咲野に生ふる白つつじ(I-1905)、をみなへし咲野の芽子に(I-2107)、かきつはた開沼(さきぬ)の菅を(J-2818)、かきつはた開沢(さきさは)に生ふる菅の根の(K-3052)などがあげられます。 |
Posted by
katakago
at 10:18