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紅花染め(続)− 染色工程を踏まえて詠まれた万葉歌 [2015年01月18日(Sun)]
IMG_0789m.jpg

 先週行った紅花染めの液が残っていたので、布の種類を取りそろえてあらためて染色を行ってみました。上の写真の左(上、下)は製品の異なる絹の布、右は木綿のガーゼマフラー(上)と木綿の布(下)。染色は一回だけの操作で木綿の方がよく染まりました。絹を濃く染めるには染液を取り替えて何度も染める必要があるようです(次回に挑戦)。
 万葉歌にはベニバナは、くれなゐ(原文は紅・呉藍などと表記)として29首詠まれていますが、そのなかで染色工程を踏まえて詠まれたと思われる歌があるのでいくつか載せておきます。
【歌】 紅の 深染めの衣 下に着て 上に取り着ば 言なさむかも (F-1313)
【口語訳】 紅花の 濃染(こぞ)めの衣を 下に着て あとで上に取り着たら 人がとかくうわさするだろうな
 巻七の譬喩歌「衣に寄する」にある歌で、「紅の深染めの衣」は入念に深い色に染め上げた紅花染めの衣で艶麗な女性を譬え、「上に取り着なば」は世間に公にして結婚したら、の意を表すと解されています。

【歌】 紅の 八入の衣 朝な朝な なれはすれども いやめづらしも (J-2623)
【口語訳】 紅の 八入に染めた衣のように 朝ごとに馴れてきたが ますますかわいい
 巻十一の寄物陳思(物に寄せて思ひを陳ぶる)歌で、「八入(やしほ)の衣」は、何回も繰り返して染めあげた衣で、入(しほ)は、染色の際色が濃くなるように染液に衣を浸す回数。上二句は、逢うたびごとに愛情の濃さが増すことの比喩の序(『新編日本古典文学全集 萬葉集』より)。

【歌】 紅の 深染めの衣 色深く 染みにしかばか 忘れかねつる (J-2624)
【口語訳】 紅の 濃染めの衣のように 濃い色に 心にしみ込んだせいか 忘れられなくなった
 ここでは紅花染めの染料が衣に染み込むように、相手が自分の心に深く入ったと詠まれています。

【歌】 紅の 深染めの衣を 下に着ば 人の見らくに にほひ出むかも (J-2828)
【口語訳】 紅の 濃い染めの衣を 下に着たら 人が見ている所で 赤く透けて見えはしないだろうか
 譬喩歌で、『萬葉集釈注』では、「紅の深染めの衣」は美しい女を、「下に着る」にその女とひそかに契りを結ぶことを譬えて、そのことが挙動におのずから現れるのを懸念している、と解説されています。 


 ベニバナの赤色色素(カルタミン)を取り出す前に水で溶出される水溶性の黄色色素(サフラワーイエロー)でも染色してみました(写真の左上下が絹、右が木綿のガーゼマフラー)。
IMG_0792m.jpg

 こちらも素材によって染まり具合が異なりました。 


Posted by katakago at 17:53
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