クヌギ [2011年06月03日(Fri)]
写真のクヌギは、数年前に苗木を植えたものですが、今は3メートル以上になっています。ただ、未だ実はなりません。クヌギの実(ドングリ)の煎じ汁を用いる橡染めは、鉄の媒染剤では黒色になり、当時、それは一般に下層階級の着る衣の色とされていました。クヌギは万葉歌ではつるはみ(原文は橡と表記)と詠まれています。ここで紹介する歌は、5月18日にエゴノキで紹介した長歌の反歌の一つです。長歌は、遊行女婦(左夫流児)に心を奪われた部下を諭す家持の歌でした。反歌では次のように歌っています。 【歌】 紅は うつろふものそ 橡の なれにし衣に なほ及かめやも (大伴家持 Q-4109) 【口語訳】 紅は 色褪せるもの 橡染めでも 着慣れた衣に やはり及ぼうか 紅染めは一時的には美しいが、そのうち黄褐色に変色する。ここでは、左夫流児のなまめかしさも永続するものでは無いとの譬えとし、ドングリで染めたくすんだ薄黒色の着慣れた衣を、地味だが慣れ親しんだ妻に譬え、それに及ぶものはないと歌っています。 |
Posted by
katakago
at 19:23