タチツボスミレ [2012年04月09日(Mon)]
裏山の斜面でタチツボスミレ(すみれ科)が一斉に咲き始めました。スミレは日本では50種あまりが知られており、和名は「墨入れ」を略したもので、花の形が大工の使う墨壺に似るためといわれています。
万葉歌には4首詠まれています(原文は須美礼と表記)。 【歌】 春の野に すみれ摘みにと 来し我そ 野をなつかしみ 一夜寝にける (山部赤人 G-1424) 【口語訳】 春の野に菫つみにやって来た私は 快い春の野に魅せられて とうとうそこで一夜を寝明かしてしまいました (『萬葉集全注』より) この歌は、『古今和歌集』の仮名序にも引用されています。
大伴池主の長歌にもスミレが詠まれています。その一部を載せておきます。 【歌】 ・・・・ 山辺には 桜花散り かほ鳥の 間なくしば鳴く 春の野に すみれを摘むと 白たへの 袖折り返し 紅の 赤裳裾引き 娘子らは 思ひ乱れて 君待つと うら恋すなり 心ぐし いざ見に行かな ことはたなゆひ (P-3973) 【口語訳】 ・・・ 山辺には 桜花が散り かお鳥が 絶え間なく鳴く 春の野で すみれを摘もうと (白たへの) 袖を折り曲げ 紅の 赤裳の裾を引き 乙女たちは 思い乱れて あなたを待って 恋い慕っているということです いとしいではありませんか さあ見に行きましょう ことはたなゆひ(この句は未詳) 野外での若菜摘み(野遊び)は、豊穣を予祝して春先に行われる民間の行事で、この二首はいずれも食用としてのスミレを詠んだとみられています。
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Posted by
katakago
at 18:03