フタリシズカ [2011年05月21日(Sat)]
万葉歌に詠まれている、つぎね(原文では次嶺と表記)が、せんりょう科のヒトリシズカ、フタリシズカとする説があります(『和名抄』に、及己(豆木禰久佐)とある)。ヒトリシズカは、先月花が咲き終わっていますので、ここではフタリシズカの写真を掲載しました。「つぎね」は、次の一首のみ詠まれています。 【歌】 つぎねふ 山背道を 他夫の 馬より行くに 己夫し 徒歩より行けば 見るごとに 音のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見と 我が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領巾 負ひ並め持ちて 馬買へ我が背 (L-3314) 【口語訳】 (つぎねふ) 山城道を よそのご主人は 馬で行くのに 私の夫は 歩いて行くので 見るたびに 泣けてきます それを思うと 心が痛みます (たらちねの) 母の形見に わたしが持っている ます鏡に 蜻蛉領巾を 合わせて負い持って行き 馬をお買いなさいあなた これは、問答歌の長歌(妻の歌)で、ある本の反歌(夫の歌)に、次の歌があります。 馬買はば 妹徒歩ならむ よしゑやし 石は踏むとも 我は二人行かむ (L-3317) 馬を買ったら お前が歩くことになるだろう えいままよ 石は踏んでも 二人で行こうよ 夫婦がお互いの思いやりの心を詠んだ1300年前のこれらの歌を、かって結婚式の祝辞で紹介したことがあります。 なお、山背道にかかる枕詞としてのつぎねふ(次嶺経)は、植物名ではなくていくつもの嶺を越えて行く意味で、山背道にかかるとする説もあります。 |
Posted by
katakago
at 13:16