サネカズラ [2011年11月27日(Sun)]
![]() サネカズラ(もくれん科)の液果が赤く色付きました。8月下旬から9月にかけて黄白色の五弁の花を咲かせ(8/17写真参照)、晩秋に液果が写真のように色づきます。葉は厚手で光沢があり、落葉しないまま色づきます(2枚目の写真)。古名のさなかづらは、滑り葛の意味で、枝の皮の粘液を水に浸出して整髪に用いたので美男葛の一名があります。万葉歌では、さなかずら(原文は狭根葛・核葛と表記)として詠まれています。 【歌】 あしひきの 山さな葛 もみつまで 妹に逢はずや 我が恋ひ居らむ ( I-2296) 【口語訳】 (あしひきの) 山さなかずらが 赤く色づくまでも あの娘に逢わずに わたしは恋し続けることよ 「もみつ」は、草や木の葉が色づくことで、この歌でも原文では、「黄変」と表記されています。カツラ((11/11)、イロハモミジ(11/24)で紹介した歌と同様、紅葉する意で中国(六朝から初唐にかけて)で用いられた字(黄葉)が使われています。 周囲の植物の、季節の推移による変化に目を留めて、妻と逢えないまま過ごす月日の長さを思い嘆いている男の歌です。 なお、多くの注釈書では、サネカズラの葉が色づくと解釈されています。サネカズラは常緑蔓性植物ですが、実際次の写真のように色づいてきます。ただし、液果の鮮やかな赤色に比べれば、それほど綺麗な紅葉とは思えません。液果の色づきと見てもよいのではと思っています。 ![]() この件(「もみつ」の用例)、あらためて気になりましたので、『萬葉集電子総索引(CD−ROM)』(塙書房)で検索しましたところ、実が色づくのに「もみつ」の表現を用いた例は万葉歌にはありませんでした。やはり、注釈書のように解されるのでしょう。 |
Posted by
katakago
at 11:05