CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
<< 2020年11月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
最新記事
月別アーカイブ
最新コメント
ヒガンバナ [2011年09月18日(Sun)]

 田んぼの畦道にヒガンバナ(ひがんばな科)が咲いています。万葉歌にいちし(原文は壱師と表記)と詠まれている植物については諸説があり、その一つにヒガンバナがあります。
【歌】 道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は (J-2480)
【口語訳】 道のほとりの いちしの花のように はっきりと 人々は知ってしまった 私の恋しく思っている妻のことを (『萬葉集全歌講義』より)
 物に寄せて思いを述べた歌(寄物陳思歌)で、草や木その他いろいろな物にこと寄せ、関係付けて恋の思いを表現するもので、この歌はいちしの花に託して恋の思いを詠んでいます。上二句は、同音で「いちしろく」を起こす序詞。

 植物として詠まれているのはこの一首のみです。万葉歌で「いちしろし」や「いちしろく」は、この歌も含め、原文では多く「灼然」と表記されています。いちしがどの植物であるかは未だ定説がありません。ヒガンバナの他、クサイチゴ(ばら科)、ギシギシ(たで科)、イタドリ(たで科)、エゴノキ(えごのき科)等を当てる説があります。ヒガンバナ以外は、白または白系統の花です。いちしの花は「いちしろく」にかかるので、白い花を咲かせる植物を当てる考えがあります。新編日本古典文学全集『万葉集』では、『歌経標式』にある「道の辺のいちしの原の白妙のいちしろくしも我恋ひめやも」の歌を引いて、白い花の咲くクサイチゴが相応しいと、頭注に解説されています。

 ヒガンバナ説は、植物学者の牧野富太郎が提唱したものです。「いちしろく」は、「灼然」と表記されているので、燃えるごとくという意味で、目覚めるばかりの花と解釈すると赤いヒガンバナが相応しいと考えたようです。最近(6/4〜8/7)、練馬区立牧野記念庭園記念館で、「牧野富太郎が夢見た万葉の世界」と題する企画展が開催され、そのパンフレット(1枚目)を入手しました。それには上記ヒガンバナの記事が掲載されていました(2枚目)。ヒガンバナの方言調査(松田修ら)により、山口県など西日本に「イチシバナ」や「イチジバナ」など「いちし」に近い方言も見つかっているようです。




 ヒガンバナは、秋の葉のない時に地下の鱗茎から一本の花茎をのばして花を咲かせます。草刈りが頻繁に行われている畦道では、何もなかったところにいつの間にか、あるいは雑草が生い茂っている場合は、ある日突然鮮やかな赤い花が咲いているのに遠くからでも気づくことがあります。このようなことからも、個人的にはヒガンバナはこの歌に相応しいと思っています。
Posted by katakago at 11:16
この記事のURL
https://blog.canpan.info/inagawamanyo/archive/172
コメントする
コメント
プロフィール

katakagoさんの画像
カテゴリアーカイブ
リンク集
https://blog.canpan.info/inagawamanyo/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/inagawamanyo/index2_0.xml