アカネの花 [2011年09月14日(Wed)]
アカネ(あかね科の多年草)の小さな白い花が咲いています。特別に植えたわけではなく、植物園の垣根に絡まって生えているものです。これまで気づかなかったのですが、その気になって周りを探すと万葉歌に詠まれた植物の多くは意外と身近に生えているものです。アカネは、万葉歌では(原文では、茜・茜草・赤根等と表記)、植物そのものを詠んだ歌は無く、「あかねさす」として茜色の照り映える意で、枕詞(日・紫・月・照・昼などにかかる)として用いられています。 【歌】 あかねさす 日の暮れぬれば すべをなみ 千度嘆きて 恋ひつつそ居る (K-2901) 【口語訳】 (あかねさす) 日が暮れてしまうと 遣る瀬なくて 幾度も嘆いて 恋い慕っている 『萬葉集釈注』には、「あたりが次第に暗くなって行く中で、男の訪れを待つやるせない気持ちを述べた歌」とあります(当時は、男が女のもとに通う通い婚)。巻11には次のような歌もあります。 【歌】 何時はしも 恋ひぬ時とは あらねども 夕かたまけて 恋はすべなし (J-2373) 【口語訳】 いつといって 恋しくない時など ないけれど 夕方近くになると格別 恋はもう遣る瀬ない なお、紫にかかる例としては、6/11掲載の次の歌がありました。 【歌】 あかねさす 紫草野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る (額田王 @-20) アカネの根は黄褐色で乾燥すると赤黄色になり(プルプリンという色素を含む)、茜染の原料となります(上代染めの緋色の染料)。 |
Posted by
katakago
at 10:59