ナツフジ [2011年08月12日(Fri)]
裏山の斜面で草刈り作業中に、ナツフジの花を見つけました。万葉歌で、ときじきふぢ(原文は非時藤と表記)と詠まれているものが、ナツフジとする説があります(『万葉植物事典』)。但し、多くの注釈書では、普通は5月頃に咲くのが、陰暦の6月(太陽暦の7月)に季節外れに咲いているフジとみられていますが。 【歌】 我がやどの 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹が笑まひを (大伴家持 G-1627) 【口語訳】 家の庭の 時ならぬ藤のように めづらしく 今も見たいものです あなたの笑顔を 題詞によれば、家持が、時期はずれの藤の花と萩の紅葉(もみじ)と二つを折りとって、妻の坂上大嬢に贈った歌二首のうちの一首です。歌を贈った時期は左注に、天平十二年六月(太陽暦740年7月3日〜31日に当たる)とあります。季節外れに咲く花や、季節に先駆けて紅葉する草木に興趣をいだいて詠まれた例は他にもあります(R-4268題詞ほか)。この歌の二句「我がやどの時じき藤の」は、「めづらし」を起こす序詞として用いられています。この歌で「めづらし」は、注釈書では、上からは見ることが稀だの意で続き、下へは、愛すべきだ、心引かれる意でかかると解説されています(『萬葉集釈注』ほか)。 |
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katakago
at 10:52