オニビシの花 [2011年08月06日(Sat)]
今朝、オニビシ(普通のヒシに比べ大型)の白い花が咲いていました。ヒシは池に生えるひし科の一年草で、泥中から長い茎を出して水面に達し、光沢のある菱形の葉を多く浮かべ、夏に白い花を咲かせます(花は一日で閉じる)。実には棘があり食用になります。万葉歌には、二首詠まれています(原文は菱と表記)。 【歌】 君がため 浮沼の池の 菱摘むと 我が染めし袖 濡れにけるかも (柿本人麻呂歌集 F-1249) 【口語訳】 あなたのために 浮沼の池の 菱を摘んでいるうちに 自分で染めた袖は 濡れてしまいました 羈旅にして作る歌90首のうちの一首。「我が染めし袖」の「我」は、女性である作者で、ヒシの実を摘んで男をもてなす女の立場の歌とみられています(『萬葉集全注』)。集中のもう一首は、 【歌】 豊国の 企救の池なる 菱の末を 摘むとや妹が み袖濡れけむ (O-3876) 【口語訳】 豊国の 企救の池にある 菱の実を 摘もうとしておまえは 袖を濡らしたのか この歌は、豊国(豊前・豊後の総称)の海人の歌と題されており、『萬葉集全注』によれば、「今の女の歌(F-1249筆者注)を男の立場から歌い替えたようなところがある。この二首のもとは水辺生活者の間で歌われていた謡いものであったろう」とあります。 |
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katakago
at 09:46