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与えられた24時間 [2006年04月30日(Sun)]


エレベーターの扉が開き
彼女がうつむきながら外へ出てくる
彼女を見つけた僕が声を掛けた
「久しぶりやね・・忙しい?」
「うん 少し大変」
「お母さん(彼の)の事は大丈夫やからね」

〜〜〜〜〜

緊急入院で友人が病院に担ぎ込まれた。
彼は5年前に胃癌で一度入院
2年後に肝臓に転移した腫瘍を克服し
その後の骨盤と肋骨、頭蓋骨への転移を
遺伝子治療薬で進行を抑えながら普段どおりに
生活できるまでに回復していた。
担ぎ込まれたことを知ったのは
彼の次女からの悲痛な電話だった。
「お父さんがおっちゃんを呼んでくれって言ってる」

血の気の引いたベッドの上の彼は
「俺はもうあかんかもしれん、でもまだまだ
 いけるかもとも思うねん・・・」
うつろな目の焦点が定まらない錯乱状態だった。

彼の企画で友人たちと日帰りの旅行に行ったのは
1ヶ月前。骨盤の転移が少し進行して車椅子だったが
彼は誰から見ても元気そのものだった。
時間を作って毎日見舞いに行くことにした。
床ずれの悪化と肺への転移がきっかけだったが
床ずれの処置で意識も落ち着き、普段どおりの
悪態をつくまでになった。

そんな状態が3日前に急変し、一時血圧が20台になり
こん睡状態になった。
しかし、友人たちの他愛無い
思い出話を聞いているように思えてしょうがない。
時折、痛がるようなしぐさを見せる。
主治医の処置で外されたモルヒネの投与を再開して
くれるよう彼の娘たちとともに懇願した。

仕事の都合で数時間外した病室に帰ってくると
彼は声は出せないものの意識を取り戻していた。
友人たちにすぐに会いに来るよう連絡。
娘たちと話をして、2年前に様々な事情で離婚した
彼の元嫁に連絡した。

〜〜〜〜〜

「お父さん!お母さんが来たよ」
「お父さん!わかる?」
彼女は彼を見て絶句しながらも
枕元へ行き、彼の手を握った。
「お母さん、お父さんの顔の上で名前を言ったげて」
手を握りなおし、胸元へ持って行った後
顔を近づけた。
「○○ちゃん! 静○よ! わかる?」
彼は大きく首を縦に振った後、顔を歪めて涙を流しながら
彼女の手を強く握るのが見て取れた。
娘たち。居合わせた友人。彼女との確執があったであろう彼の母親
皆が嗚咽とともに見守った。
「お父さーーーん・・・お母さーーーん」」 
娘たちの声が病室に何度となく響いていた。

〜〜〜〜〜

「○○! ちょっと仕事で出て来るわ 3時頃には帰ってくるからな」
翌日昼頃に頷く彼に言い残し病室をでて、帰ってくると昏睡していた。


そして昨日からこん睡状態が続いている。

彼は貴重な24時間を神様から与えられたんだろうか

2006/04/26 記録
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