社会福祉施設経営者同友会 会長 茨木範宏 名で要望が出されました。
社会福祉施設経営者同友会(以下「福祉同友会」)は、民間の社会福祉事業・施設の経営者が、民主的な法人・施設運営をめざし、経営と利用者と職員を守り、権利としての社会福祉を守り発展させることを目的に1985年に発足、幅広い協力共同のとりくみ、民間社会福祉経営ならではの先駆性や創造性を発揮した研究・学習のとりくみを行ってきました。
今、その権利としての社会福祉が、社会福祉基礎構造改革をはじめとした制度改変のなかで市場化・営利化が促進され、また自己責任と自助・共助の押しつけにより、本来の人権保障としての役割が歪められようとしています。
特にこの間議論をされてきた社会福祉法人制度改革が、4月3日「社会福祉法等の一部を改正する法律案(以下「改正法案」)」として閣議決定され、国会審議に入りました。
この「改正法案」は、一部の社会福祉法人の不正や、明確な定めのない「いわゆる内部留保」問題をはじめとした社会福祉法人バッシングを背景に、社会福祉法人が「余裕財産(内部留保)」を再投下して「地域における公益的な取り組み(社会貢献)」を行うことを法律で義務化するなど、政治や市場の失敗によるさまざまな社会福祉の諸課題に対して、社会福祉法人が自己責任で自主的慈善事業として実施することを求めるなど、戦後築いてきた社会福祉事業のあり方を大きく変質させるものとなっています。また「改正法案」では「地域における公益的な取り組み」を「社会福祉充実事業」、「余裕財産」を「社会福祉充実残額」と呼ぶなど、公的責任による社会福祉充実を社会福祉法人に肩代わりさせる今回の法案の性格をそのまま表す露骨な表現となっています。
福祉同友会は、社会福祉事業に責任をもつ経営者として、この「法案」に承服できるものではなく見直しを求めるとともに、あらためて憲法25条に基づく権利としての社会福祉を守り拡充するために、以下の要求をします。
1.社会福祉法24条(経営の原則)改正で、生活困窮者等への支援を社会福祉法人の責務と定めるのではなく、それらは国・自治体の公的な責任において行うこと。
2.経営組織の見直しとして、社会福祉法人への評議員会必置など一律の導入(小規模法人への経過措置はあるが)を行わないこと。
3.財務規律の強化として、「社会福祉充実残額」を「社会福祉充実事業」に計画的に再投資させるという、社会福祉法61条違反となる社会福祉法人の自主性への不当な関与をやめること。
4.福祉人材確保が難しい中でそれに逆行し、また事業所の負担増で経営を圧迫する「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」の障害者支援施設に係る公費助成の廃止を行わないこと。
2015年4月10日
社会福祉施設経営者同友会 会長 茨木範宏
以上です。