新書 地下水は語る [2014年10月05日(Sun)]
守田 優 (著)
「地下水は語る――見えない資源の危機」 (岩波新書) \760(税抜き) 沈む大地、涸れる湧水 東京吉祥寺にある井の頭池は、50年ほど前までは自然の湧水を湛えていましたが、今では井戸で汲み上げた水が補給されています。著者によると、これは多摩東部地区での上水用井戸での地下水汲み上げの影響で、湧水を供給していた地下水が、さらに深い部分の帯水層に「漏水」しているためだそうです。つまり、多摩東部地区で使っている水道は、地下水の大きな循環を変えるほどの負荷になっているのです。普段は使えて当然のように思っている水道にも、このような問題が隠れていることに驚きました。 また、地下水は長いこと「私水」とされてきましたが、大量揚水の時代になって「公共の水」と捉える必要性が出てきた歴史も語られます。地盤沈下やハイテク汚染があまり話題にならなくなった昨今ですが、問題が消えているわけではないこともわかります。福島原発の地下水についても触れています。 地下水という貴重な資源の存在をあらためて見直してはいかがでしょうか。 (新書編集部 千葉克彦) 目次です はじめに 世界の地下水の危機と日本 第1章 沈む大地 1 沈み行く東京 2 地盤沈下と地下水 3 東京ゼロメートル地帯 4 地盤沈下の現在 第2章 涸渇する名水 1 都市をうるおす湧水 2 井の頭池はなぜ涸渇したか 3 水循環不全という地下水障害 第3章 地下水と日本人 1 湧き水と井戸 2 井戸掘削の技術革新 第4章 環境としての地下水 1 有機塩素化合物による汚染 2 地下水が地下駅を持ち上げる 3 地下鉄が地下水を堰き止める 第5章 地下水とどう付き合うか 1 地下水は誰のものか 2 「公共の水」としての地下水 3 地下水の将来 深刻でもありながら楽しい1冊です【KB】 |
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大阪手をつなぐ育成会
at 00:34