新書 科学者が人間であること [2013年11月03日(Sun)]
中村 桂子 (著)
「科学者が人間であること」(岩波新書) ¥ 840 大震災を経てなお変われぬ日本へ 「あの大きな災害から二年半を経過した今、科学者が変わったようには見えません。…それどころか今、「経済成長が重要でありそれを支える科学技術を振興する」という亡霊のような言葉が飛び交っています。ここには人間はいません。……私たちって人間なんですというあたりまえのことに眼を向けない専門家によって動かされていく社会がまた始まっているとしたら、やはり「科学者が人間であること」という、あたりまえすぎることを言わなければならないと思うのです。」 (「おわりに」より) 「科学者が人間であること」というタイトルに、あたりまえのこと、と思われた方もあるかもしれません。しかし私たちが生きるこの社会は今、そのあたりまえのことが、あたりまえに行なわれているでしょうか?―本書は、著者のそうした率直な、しかし深い疑問からスタートしています。 本書において著者が何度も繰り返している言葉は、「人間は生きものであり、自然の中にある」という、これまた「あたりまえ」のことです。しかし、例えば一日中空調のきいた部屋で過ごし、食事の代わりにビタミン剤を飲み、飛行機や新幹線で高速移動し、植物や動物に接する機会もほとんどない暮らしの中で、私たちはこの「あたりまえ」をどれほど実感できているでしょうか? こうした科学技術文明のただ中に生きながらも、ひたすら「役に立つ」「お金になる」技術を求めていくのではなく、日常生活を送り、思考を深める一個の「人間」であるという原点に戻ることで、この国の未来像はどのように描けるか。哲学者・大森荘蔵や、宮沢賢治、南方熊楠らの思考を導きの糸としながら、著者は熱意をこめて語りかけています。ぜひご一読ください。 【KB】 |
Posted by
大阪手をつなぐ育成会
at 00:31