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新書 牛乳とタマゴの科学 [2013年08月10日(Sat)]
ここにケーキがある。主原料は小麦とタマゴ、牛乳である。だが、これらを用意しただけではつくれない。小麦は粉にしなければならず、タマゴは白味だけ取り出して泡立てなければならないし、牛乳を使ってクリームやバターをつくらなければならないからである。いずれも人間に知恵がなければ生まれなかった材料と、これらの特徴を最大限に活かすことで初めてつくることができる。科学がいまのように発達していない時代に先人の知恵が生んだ傑作、それがケーキである。
ところで生まれて初めて口にした畜産物は牛乳とタマゴという人は多いだろう。本書で述べることは食卓にのぼるその牛乳とタマゴについてである。牛乳は牛が、タマゴはニワトリが生産する。牛は哺乳類、ニワトリは鳥類に属す。牛乳は容量ではかり、タマゴは個数でかぞえる。利用方法にも大きな違いがある。ところが意外なことに共通点も多い。
第一は、生きた動物が生産することだ。乳を飲むため動物を殺す必要はなく、鳥はタマゴを産んだあとも何事もなく生きつづける。一部の菜食主義者にとっては、そのことが乳またはタマゴを食べる理由にもなっている。
第二に、牛乳とタマゴ、それらを加工して食べることに制約をもうけた宗教がないことだ。むしろすべての宗教が牛乳を奨励するほどである。ところが肉に制約をもうける宗教は多く、イスラム教やユダヤ教は豚肉を、ヒンズー教は牛肉を食べることを禁じている。例外は羊肉くらいだろうが、それでもイスラム教はハラール(食べることを許すもの)をもうけている。仏教の教えから日本でも、奈良時代以降明治初期まで牛やニワトリを殺すことを禁じていた。
第三の共通点は、子孫の継続に関係することだ。哺乳類は母乳で子をそだて、鳥類はタマゴの栄養を使ってヒナになる。乳やタマゴに成長や発生に必要な栄養が含まれていなければ子孫の存続など不可能である。これらのことから完全栄養食品といわれるのも不思議はない。
以上のことは、多くの食材のなかで牛乳とタマゴに特有かつ希有な特徴である。ところで早い時期から狩りをしたり飼育して肉を食べていたことにくらべ、牛乳とタマゴの歴史は意外に新しい。入手が容易でなく、量も少なかったのだ。知恵をしぼって改良した結果、いまの乳牛は祖先の一〇倍の牛乳をだし、ニワトリは五〇倍のタマゴを産むようになった。このことによって今日のように日常的に食べられるようになったのだ。まさに牛乳とタマゴは知恵と努力の産物である。そしてその努力はとどまるところを知らず、乳製品や卵製品をつくり食生活を豊かにした。どうして牛やニワトリは想像もつかないような驚異的な能力を発揮できるようになったのか、牛乳とタマゴという身近な食べ物の歴史を振り返りながら、また、意外に知られていない牛乳とタマゴを科学することによって、私たちの知恵との関係をさぐるのが本書のめざすことである。

はじめにからの引用。

酒井 仙吉 (著)
「牛乳とタマゴの科学」(ブルーバックス)
¥ 945

人間の知恵と執念がつくりだした食品の王様
毎日食卓に並ぶ牛乳とタマゴこそ、人間が健康で豊かな食生活を送ることを可能にした最高の食品です。牛乳とタマゴはどうやって大量生産できるようになったのか、なぜ乳製品やタマゴは体によいのか、タマゴは本当にコレステロールの原因になるのか、バターとマーガリンではどちらが体によいのかなど、牛乳とタマゴに関する身近な話題が満載。

楽しく読める一冊です。【KB】
Posted by 大阪手をつなぐ育成会 at 00:30
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