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新書 新型出生前診断と「命の選択」 [2013年08月08日(Thu)]
香山 リカ (著)
新型出生前診断と「命の選択」(祥伝社新書)
¥ 819

著名な著者の最新刊
豊富な取材とわかりやすい文章で一気に読めます。【KB】

妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる、いわゆる「新型出生前診断」が、2013年4月から日本でも始まった。また、遺伝子を調べることによって、将来発症しやすい病気や確率も判明するようになっている。
このような医療技術の進歩は基本的には望ましい。しかし、最新技術が命に関わる領域に踏み込んだことで、患者と家族は大きな選択を迫られるようになった。その結果、自らの判断が正しかったのか悩む人が増えている。
それに対して私たちはどう考えればいいのだろうか。医学の進歩に、心のケアや倫理は取り残されていないだろうか。現状と課題を、精神科医の立場から考える。

新刊JP編集部の紹介記事をそのまま掲載します。

「産むべきか、産まないべきか」出生前診断で私たちに委ねられる選択
医療の発達によって問われるようになったのが「生命倫理」だ。その中でもとりわけ議論が活発にされてきたのは「死」の部分で、尊厳死や脳死の問題はその代表例ともいえる。
 そして、現在は「生」――「生きる」や「生まれる」ところでの倫理が問われている。その議論の1つが「出生前診断」や「遺伝子検査」だ。
 2013年4月から、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新型出生前診断」(正確には『無侵襲的出生前遺伝学的検査』など)が始まり、以前と比べて「簡単・安全」に胎児がダウン症候群をはじめとした先天性障がいを持っている可能性があるか分かるようになった。また、この検査は妊娠10週からの受診が可能なので、人工妊娠中絶が許されている妊娠22週(正確には21週6日)まで「考える時間」があるということになる。
 ここで問われるのが「生命倫理」だ。精神科医の香山リカ氏は『新型出生前診断と「命の選択」』(祥伝社/刊)で、この答えが出ない問いに対して正面から向き合い、読者たちに問題を提起する。
 香山氏は、検査のハードルが下がったことによって、「誰もが受けられる検査」より「受けないわけにはいかない検査」になりつつあることを指摘する。
 それの何が問題なのか、検査も中絶も選択の自由だと考える人もいるだろう。しかし、それが先天性の障がいを持つ胎児を排除することだと主張する人もいる。何より、妊娠し、喜びいっぱいでその誕生を心待ちにしている男女が、検査の結果「胎児の染色体に“異常”があるかもしれない」と指摘され、突然「数日以内に答えを出してください」という選択を迫られる。そして、「選択の自由」だとか「排除の思想」といった抽象的なことを考える余裕もないまま、答えを出さなければいけないという、非情な現実が待ち受けているのだ。
 晩婚化が進む昨今、高齢出産は当たり前のようになってきた。出産年齢が高齢になればなるほど、先天的な障がいを持って生まれる心配も高まる。そう考えれば、この新型出生前診断はそういった社会の変化に要請されていたものなのかもしれない。たが、前述の男女が対峙した現実をわたしたちは受け入れる覚悟を持っているだろうか?
 『新型出生前診断と「命の選択」』は最終的に、「わたしたちの生命とはいったい何なのか」という問いを読み手に考えさせる。健康とはいったい何をもってして健康なのか、何が障がいで何が健常なのか、生命に優劣はあるのか……考えればキリがない。しかし、今、わたしたちの目の前には、その問いが突きつけられている。
 今年5月にハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がんの発症を防ぐために、両乳房の切除を行ったことを公表した。それは、「乳がんになる確率が87%、卵巣がんになる可能性が50%(いずれも最大で)」という遺伝子検査を受けての選択だった。
 この先に待っている未来に何が起こるか、分かった方がいいと考える人もいるだろう。リスクはできるだけ取り除いておきたいものだし、結果的に苦しむ未来があるならば、できるだけ回避したいと思うのは心情的にも分かる話だ。
 しかし、それが果たして良いと思うかどうかは、おそらく人によって分かれる。もちろん香山氏もその答えは出してくれない。しかし、本書は考えるための入り口に立たせてくれる。そして、思考の森に入るための重要な情報を与えてくれる。
 これからさらに医療技術は進歩するはず。そんな時代の中で、自分なりの選択ができるようになっておきたいものだ。
Posted by 大阪手をつなぐ育成会 at 00:25
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