菅さんを信じきれない「性格的なもの」
非礼極まる菅とバイデン、正当性薄い新政権と歩む日米関係は茨の道 (ironna.jp)
https://ironna.jp/article/16536ロバート・D・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所代表、元在沖縄米海兵隊政務外交部次長)
2016年の米大統領選で、劇的な「逆転勝利」によって誕生したドナルド・トランプ政権だったが、今回は、新型コロナ禍にもかかわらず辛うじて「逆転勝利」としているジョー・バイデンが政権を発足させるだろう。
バイデンの「勝利」ついて、いち早く「お祝い」の言葉を発した菅義偉(すが・よしひで)首相は、果たして本当のバイデンを知っているのかと疑問を持たざる得ないほどの政治的な失敗と、外交非礼であったと筆者は見ている。
つまり、いくらメディアが「当確」と報じても、相手(この場合は現職の大統領)は、「敗北」宣言を行わず、制度的な手続きが完了しない限り、「勝利」を勝手に宣言したほうに「おめでとう」と言ってはダメだ。
一人の米国人として、菅首相の行動は米国への内政干渉であると感じ、強い不快感を覚え、とても残念だった。なぜなら、バイデン陣営は、メディアやIT企業をはじめ世論や世界のリーダーたちの祝福のメッセージを利用して、争い中の選挙結果を後押ししようとしたからだ。せっかく、トランプは、安倍晋三前首相とよい関係を築いてきたのに、菅首相はトランプを無視し、政敵のバイデンと組んだのだ。
それがプラスになればよいのだが、そうなると思わない。周知の通り、バイデンは中国寄りの政治家だ。これは彼の次男のハンターに関連していることだけではなく、以前からだ。取り巻きの人物も中国絡みばかりである。
そもそも、日米中は歴史的に三者関係にある。19世紀半ばからだが、激しくなり始めたのは、第一次世界大戦中からだ。第二次世界大戦前、戦時中、そしてその後、一貫して、そのバランスは三者関係を決定してきた。
この三者関係は、どちらかのほうに傾けば、バランスが崩れる。バイデン政権になれば、中国に傾き、日米中の関係が崩れる。少なくとも対中宥和政策になり、中国寄りになることは間違いない。
とはいえ、表面的な日米関係は基本的に良好になるだろう。なぜなら駐日米国大使などには知日、親日の人物が登用される見通しだからだ。日本政府に有益な情報がもたらされ、協力関係を維持するはずだ。
ただ
、2つの問題がある。まず1つは、クリントン政権、オバマ政権でリサイクルされた人物など多くの無能な人々が要職に登用され、それが日米関係に悪影響を与えることだ。
もう1つの問題は、バイデン政権が、日本の意思決定過程にかつてないほど介入することが予想される点だ。つまり日本の自由度は完全になくなると言っても過言ではない。
バイデンはどういう人物かを8年間のオバマ・バイデン(副大統領)政権(09年1月〜17年1月)で分かるはずだ。最も知られている内政干渉は、13年12月、安倍首相が靖国神社を参拝した際、オバマ政権は日本をけん制した。
国務省で作成され、在日米大使館が発表した声明では「Disappointed(落胆した)」との表現が使用された。その対応の中心だったのはバイデンで、当時一部のメディアが報道していた。
靖国参拝を巡っては、実は在日米軍の関係者に「靖国神社に行くな」というような命令が在日米軍司令部か在日米大使館のどちらかから発されたと記憶している。その当時、筆者は文官として在沖米海兵隊司令部に勤めていたが、その指示を無視した。こうした指示は、(一般論として)信教の自由を侵害するものだったからだ。
筆者には、日本を誇り高く思っている日本人の妻と子供たちがいるため、何度か靖国神社を参拝している。また、日本の歴史や文化を専門的に研究している者として、実際に体験しなければ理解できないからだ。
本題に戻るが、
バイデン政権になった場合、日韓関係の「修復」を強制させるだけでなく、日中関係にも介入してくるだろう。最も懸念しているのは、やはり尖閣諸島問題だ。振り返れば、日本は尖閣諸島を含む沖縄が返還された1972年以降、実効支配らしいの政策をとってこなかった。
中でも象徴的なのは、2012年の衆院選を控えた当時野党だった自民党が、政権奪取目的としか思えないが、「尖閣諸島に公務員を常駐させる」と公約しながら、約8年間の安倍政権、菅政権はすでに3カ月が経過しても、いまだ実現していないことだ。
おそらく中国を意識して遠慮してきたのだろうが、著書「尖閣問題の起源」(名古屋大学出版会)にも詳述している通り、そもそも発言権がない中国になぜ遠慮しているのか不思議でしょうがない。
また、実効支配を示すチャンスを全く生かしていないのも事実だ。尖閣諸島にヘリポートや避難港、気象台、灯台を建設しておらず、これらは全て国際公共財であるにもかかわらず、日本政府が遠慮している。
これは無責任の極みだ。
なぜなら、遠慮することで、中国に自信を与え、この半世紀で徐々に規模が大きくなり、回数を重ねているが、中国の沿岸警備隊「海警」(実際には白く塗って装っている軍艦が多い)や潜水艦、飛行機、情報収集能力搭載する「漁船」などを使って領海、領空の侵犯を繰り返してきた。
既成事実を重ねているだけでなく、防空・防衛などの日本の弱い部分を試している。このままであれば、いずれ尖閣諸島を巡って戦争になりかねない。
戦争を避けたいらなら、宥和政策ではなく、上記のように、しっかりした実効支配を示すべきだ。これこそ、日本は、尖閣諸島が自国の領土であるとの自信を世界に示すことになり、行政的な抑止力になる。
もし、それでも中国が攻撃した場合、国際社会は日本の味方になる。そうしなければ、「尖閣諸島はやはり日本の領土ではない」と捉え、日本の政治・外交・防衛上の支援をしなくなる。
これは中国の狙いであり、日本を孤立させることだ。外国人である筆者が確信しているが、日本人の「生命と財産」、日本の領土を守る義務がある為政者たちが分かっていないからだろう。早く中国の恐ろしさに気付くべきだ。
中国と深い関係にあるバイデン政権になれば尖閣諸島を巡るもっと恐ろしいシナリオもあるが、それは別の機会で述べたい。
そして、日本が尖閣諸島問題に関して自由に行動できるのは、あと数週間だけだ。来年1月20日の大統領就任式でバイデン政権が誕生すれば、日本の自由度、すなわち主権はなくなる。繰り返すが、日本は主権国家として、自由に行動できるのは、あと数週間だけだ。さらに、バイデン政権が誕生した場合、日本政府にとってもう1つの重要な問題がある。それは正当性と世論だ。要するに、メディアや裁判が認めるか否かではなく、大統領選の投開票で不正があったことは明らかだ。
少なくとも、筆者をはじめ、多くの米国の有権者はそう思っている。そのため、バイデンは大統領になっても、正当性のあまりない政権になる。政権発足から国内外で正当性が問われ、脆弱な大統領としてスタートするということだ。
だからこそ、バイデンも、トランプ陣営と協力して、公平・公正に結果を検証すべきだったが、非協力的だっただけではなく、「次期大統領事務所(Office of the President-Elect)」を設立し、菅首相をはじめ外国の首脳たちから祝賀を受理し、電話会議を行うなど既成事実を重ねていこうとした。
だが、手続きはまだ終わっていない。少なくとも、相手であるトランプはいわゆる敗北宣言をしていない。現職大統領へのバイデンの軽視姿勢を、国民は簡単に忘れない。
面白いことに、バイデンが勝って、トランプが負けたと思う日本人も少ない。そう思わないにしても、今回の米大統領選が公平・公正に行われたと認識している日本人もあまりいないようだ。
重要なのは、この現状だ。日本人の多くが、バイデン政権の米国に違和感を覚え、離れていくだろう。これは日米関係にとってよくないだけではなく、不信を孕む日米関係を担わざるを得ない菅政権にも打撃を与え始めている。
つまり、こうした健全的な疑問を持つ日本人は、今後、いち早くバイデンに「お祝い」のメッセージを送り、バイデン「次期大統領」とベタベタな関係になろうとした菅首相に強い不信感を抱いている。新型コロナの対応も相まって、支持率が下落し始めており、安倍前首相でさえ(多くの政策運用上で)「裏切られた」と思っている菅政権との大きな乖離に発展していくだろう。(文中一部敬称略)
非礼極まる菅とバイデン、正当性薄い新政権と歩む日米関係は茨の道