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視察旅行(5)2日目のワークショップ [2012年03月31日(Sat)]
今回の視察旅行は2月12日・13日の2日間の予定で実施しました。1日目はかばたツアーたかしま生きもの田んぼ高島市新旭水鳥観察センター上原酒造を見学した後、ワークショップを兼ねた夕食を摂りました。今回の記事では、視察旅行2日目に実施した、ワークショップの様子を報告します。

2日目は、今回のワークショップのテーマである「内なる生物多様性」について、愛媛大学の日鷹一雅准教授が説明を行いました。この「内なる生物多様性」とは、日鷹准教授と農研機構 農村工学研究所の嶺田拓也氏らが3月17日に、日本生態学会全国大会の自由集会「Biodiversity in ours  −外からの生物多様性と内なる生物多様性−」と企画集会『序:なぜ今、里山の在来知?暮らしの中に潜む「内なる生物多様性」』で発表するテーマです。日鷹准教授はこの「内なる生物多様性」について、「生物多様性えひめ戦略(案)の概要について」の中で、『人の暮らしの中には、多様な生物と結びつく知恵や技能が内包されています。

例えば、里山に暮らす夫人が五感を活用し600種にも及ぶ植物を分類し、それを食物やクスリとして生活に利用するとともに、その手法を後世に伝承するなど生物と暮らしを結ぶ知恵。このような、ありふれた暮らしの中に生物多様性の構造や機能が潜んでいることがあります。それらを総称し「内なる生物多様性」と呼ぶこととします』と説明しています。生物学者らがこの生物多様性の維持について訴えるようになる前から、地域資源を活用して暮らしてきた地域の生活の中には、こうした「内なる生物多様性」が取り込まれ、受け継がれてきたのです。

日鷹准教授は、この「生物多様性えひめ戦略」を通じて「内なる生物多様性」を地域戦略に盛り込んだ事例を紹介しました。
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日鷹准教授による「内なる生物多様性」についての説明の後は、静岡県農林技術研究所の稲垣栄洋氏による「静岡県民の内なる生物多様性の評価」、琵琶湖博物館の中井克樹氏による「外から内への生物多様性」など、他の参加者による取組みや課題の紹介がありました。

稲垣氏は静岡県が全国一のの農作物品目数167品目を誇る「ものづくり県」であることを踏まえ、こうした静岡県の農業が地域の自然風土や生物多様性に依存するものであり、特に農業生産の現場である農村には必ず希少種が存在する、生物多様性の豊かな地域であると説明しました。一方、地域住民は希少種よりも、ホタルやドジョウといった身近とされてきた生き物が分布することを喜びます。こうした農村の生物多様性を評価するには、研究者による外部評価ではない、「内なる生物多様性」の評価が必要になります。内なる生物多様性の評価の為には、地域らしさや思い入れ、利用方法を、地域から地域外へと発信することの必要性を、稲垣氏は説明しました。

中井氏は、生物多様性を内と外の2つに分け、「農業の現場における既存の価値観の多様性」を農学における「内」と説明しました。長い時間をかけて地域の気候風土や歴史により育まれたものであり、その生物多様性を伝えて守っていくことの大切さを説明しました。



盛んな意見交換が行われた2日目ですが、この日の昼食でも、初日同様に、琵琶湖の魚や味噌汁を参加者で頂きました。食を通じた生物多様性は、味わって学ぶことが出来て、一石二鳥です。
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視察旅行2日目を終え、いきものマイスターは帰路につきます。今回の視察旅行は、奥能登と滋賀県高島市の間をマイクロバスで片道約6時間かけて往復した、ちょっとした強行軍でした。私達の活動する能登でも、「内なる生物多様性」を利用して生活する人たちが大勢います。漁師は、同じ魚でも成長段階や季節(旬)によって、異なる資源として利用します。春先には能登のあちこちで山菜摘みが行われますが、これも内なる生物多様性の1つと言えるでしょう。私たちいきものマイスターは、生物多様性に根差した能登の暮らしが「内なる生物多様性」に支えられたものであることを理解して、伝えていく必要があるでしょう。


*現在、いきものマイスターは2012年度の受講生(3期生)の募集を行っています。詳しくは、こちらの募集概要をご覧下さい。