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2012年度修了課題発表会(1) [2013年03月26日(Tue)]
2013年3月23日(土)、いきものマイスター2012年度の修了課題発表会を実施しました。今回は、7名の修了生が修了課題発表を行いました。今年度はいきものマイスターの事業としての最終年度ということもあり、いきものマイスター最後の修了課題発表会でもあります。


【発表1】農家が伝える能登の田んぼの生物多様性

発表者は、食の安心と安全への関心都会から能登に移り住んだ就農者です。現在、輪島市で19筆の水田で米作りを行っています。今回の発表では、発表者が耕作する水田の生物多様性を紹介して食の安全や環境配慮を伝え、農業への関心を持って貰う方法を探る為に、農家自身が田んぼの生物多様性を伝える方法と効果について研究しました。

発表者は、農家自身が田んぼの生物多様性を伝える手段として、農家自身が案内する田んぼの生き物観察会を実施しました。観察会の為の事前準備として、生き物を見分けて説明する練習を行いました。観察会当日はアンケートを実施して参加者からの反応を確認しました。アンケートでは、当日に見られたゲンゴロウを始め、様々な生き物に対する興味が見られたことから、生き物を見分けて説明する意味があることがわかりました。一方、参加者からは生き物以上に田んぼや農法に対する質問が多く寄せられました。これは、案内者が農家だからこその結果と思われました。
今回実施した観察会を通じて、今後も田んぼと生物多様性を通じて、農家としての米作りへの想いを伝えたいと語りました。

専門家には出来ない、一番田んぼに近い視点が活かされた結果と言えるでしょう。委員からは、「観察会だけではなく、アンケートの実施など今後のことも考えたやり方がとても良い」「農作業は忙しくて大変だが、普通では気付かないことにも気付くことが出来る。長い目で色々やってみて欲しい」との意見がありました。

【発表2】能登らしい染め物と染色エコツアーの提案

発表者は、能登の染物でだからこそ可能なエコツアーをテーマにしました。発表者によると、かつては各家庭で染物が行われていたそうですが、化学染料に代わってしまったことにより、かつて地域で使用されていた染料のデータもなくなってしまったといいます。
まず発表者は、染物の題材として能登で採集される材料を使用した貝染め、キノコ染めについて調べました。発表者は能登で採れるアカニシ貝が持つパープル腺による木綿染を検討した末で、魚屋と連携してアカニシ貝を確保出来れば、エコツアーの可能性に繋がると結論付けました。
次に、染色による里山保全の可能性として、外来種であるオオハンゴンソウを使った草木染のワークショップ、更に各地で増えすぎて問題になるクズを使った草木染のワークショップを実施し、駆除と染物を同時に行う方法を示しました。他に、エコツアーについての調査結果を発表しました。


委員からは、特定の種を集めるのは大変だから、キノコ狩りで集めたいらないキノコ、複数の種の貝類をまとめて使ってはどうかという意見もありましたが、キノコの場合は色が濃く出るものでないと使いにくい、貝の場合はパープル腺を持っている種が限られる、とのことでした。他に、「オオハンゴンソウ使用は外来種駆除と啓発活動になる、他の外来植物でもやって欲しい」「エコツアーについてもっと聞きたい」との意見がありました。


【発表3】食べものを通したコミュニケーションの方法を探る
〜世界とつながる「能登」で生きる私たちにとって大切なものを考えるため〜

発表者は首都圏からの移住者です。発表者は自ら得意とする料理を自己表現、人や地域とのコミュニケーションの手段であると語り、食を通じて地域間の交流や課題を考え、食を仕事としながら、食に関するイベントなどの活動を行っています。発表者は自分の活動の目的について、『みんなで食べる幸せを」(2011年「世界食料デー」世界の食料問題に取り組む団体ハンガーフリーワールドより)考えてみませんか、という投げかけの意味を込めている、と説明します。今回の発表では、自らの更なる活動の為に、様々なコミュニケーションの手法を探りました。

その方法として、発表者は「開発教育」と「ファシリテーション(ファシリテーター)」について学びました。開発教育とは地球社会をよくする為の教育活動です。ファシリテーションは、人々の話題に対して集団による相互作用を促進し、学びの場を促進させることです。ここに開発教育的な視点を持ち込むことで、ファシリテーター自身も「学びに参加する立場」ともなります。他に、発表者が今までに参加した研修、または自身が企画や主催として関わったワークショップなどの活動に触れた上で振り返りの結果として自己評価を行いました。
これまで学んだことや参加した企画から、発表者は自分が今後の活動の為に目指す姿に近いのは地域ファシリテーター(開発教育の視点を持ち、地域における学習をとおして社会変革のプロセスを促進する役割(開発教育協会機関誌『開発教育』No.59より)であり、今後は開発教育やファシリテーターとしての技術などを高め、食を通した学びの場となる活動を続けたい、と結論付けました。

発表者は既に能登で様々な活動を行っている実績と経験があり、その活動を高める為の手法を必要としているようです。委員からは、「能登ならではの開発教育を追求すべき」「開発教育という言葉の説明には時間がかかるだろう」との意見が挙がりました。


【発表4】能登の水田生態系における江の役割と江に対する地域住民の意識の地域間比較

近年では環境意識の高まりにより、水田に生息する生き物に配慮する為に「江」(水田脇に掘られた溝や深み。地域によって呼び名は様々。本来は山水の貯水、そのままでは冷たい水を温めたりする為に使用されるが、中干しなどの落水時に田んぼの生き物の避難場所にもなる。)や水田ビオトープの設置などが行われていますが、設置や維持管理の労力やコストも小さくありません。そこで、奥能登における江の設置状況、利用方法、呼び名などを調べ、江を使った生物多様性の保全手法の基礎資料としました。

1)発表者は江が持つ保全の効果を調べる為、外浦、内浦地域それぞれに江が存在する地域を1箇所ずつ選び、水田内と江における生き物の調査を行ったところ、江ではより多くの生き物が見られました、また既に落水されていた9月にも生き物が見られました。これにより、江が生き物の生息場所となっていることがわかりました。一方、周囲の環境により見られる生き物は異なること、必ずしも希少種の保全に繋がるとは限らないこと、天候などの条件により必ずしも安定した棲み場にはならないこと、江を設置するには目的や地域の状況をしっかり確認する必要がある、とのことでした。

2)江の設置状況、設置場所、呼び名、生息する生き物を調べる為にアンケートを行った結果、奥能登には多くの江が既に存在しており、新たな江を設置せずとも利用が可能であるとわかりました。呼び名は様々であり地域性の影響も強いものが含まれる為、農家への江のPRを行う為には、地域に対する考慮が必要であるとわかりました。

田んぼの生物多様性などの観点から話題に挙がる江についての現状と効果、用法についてしっかりと冷静に調べたことへの評価などが挙がりました。

12年度修了発表会_032357.JPG

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残り3名の発表については、次回の記事で報告する予定です。
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