GID(性同一性障害)を題材にした劇団「トランス☆プロジェクト」第六回公演『カミングアウト』を見てきました。
二日目で平日の昼の公演、しかもトークイベント無しと言うことでしたが、けっこうたくさんの方が見に来ていました。
吉祥寺にある武蔵野市の吉祥寺シアターの設備が、けっこう立派でびっくり。20年ほど前、関西地区の公共の小劇場で、いくつかの小さな劇団の公演の舞台周りの仕事を何度かしたけど、いろいろと大変でした。それから比べると、十分すぎますね。オーソドックスではなく、ちょっと癖もあるけど、自由度も高そう。その分、照明のプログラムを組むのも大変そうだけど・・・。
ストーリーは、三人兄弟の一番末の少女が、自分の性に違和感を持っていたのですが、ある日カミングアウトした。その直後あたりから話が展開してゆきます。
チラシのイラストには、ビリヤードの玉の上に、人が立っている絵が描かれていますが。カミングアウトをきっかけに、身の回りの多くの人々に、いろんな影響を与えてゆきます。
その身の回りの人の中にも、カミングアウトをしていないGIDの人も混じっています。カミングアウトを切っ掛けに、GIDであることをシェアする人もいれば、そうでない人もいる。立場上、カミングアウト出来ない人もいるし。なんとなく、自分もそうだというメッセージを送る人もいる。
急激な変化に対応できない、家族の姿もある。
そういや、四谷の家に住んでいた時、家から徒歩10分のところに、同性愛者の家族の心のケアをする所がありました。さすが新宿二丁目というところ。
カミングアウトは、当事者もすごくエネルギーがいるけど、周りもすごくエネルギーがいる。
さてさて、この舞台でのGIDは、女性であるけど、自分の性に違和感というパータンが多かったわけですが。それだけでも、いろんなカタチがあるということが、キャラクター設定されていたのが興味深かったです。
女らしいけど、女の人しか好きになれない、同性愛と言われるパターン。(同性愛の場合も、相手がトランスジェンダーの女性でないとダメというパターンもある)男性と結婚し女として生活しているけど、男勝りな感じで仕事に打ち込んでいる。などなど。
よく、●●障害とかなんとか、一つの名前がついてしまうと、一つのパターンにまとめてしまう傾向というのがありますが。●●について困っているということでは一つのグループとして捉える事が出来るが、実際は様々なパターンがある事が多い。
けっこう、このあたりは、伝わっていない事だと思うんですよね。
人間って、女性ホルモンと男性ホルモンを両方持っているわけですが。
男性と女性との境目って、グラデーション状という話があります。
そして、自分のアイデンティティとしての性、社会的な位置づけでの性も、男女の境界は、様々なカタチがあるし、それぞれのパラメーターの上でグラデーション状なのではないかという感触があります。
ってことは、多かれ少なかれ、ほとんどの人がGIDの要素を持っているんじゃないかと思っちゃうのよね。
その自分に対する違和感を感じやすいか、そうでないかは、社会的な要因も大きいように思うんですよね。
オカマちゃんの多いタイでは、生活が厳しく、しかも、男性らしさを求める傾向の強い地域で、けっこうオカマちゃんの割合が高いと言われています。
自分を守るために、性の違和感を一気に表面に出してしまうってのもあると思います。
ジェンダーからの解放って感じでしょうか。
性別が逆ですが、フェミニズムというか、女性の解放運動と共通した要因ではないかと思われます。表現方法はずいぶんと違いますが・・・・。
なお、タイのオカマちゃんの一部には、貧困のため、ショービジネスの仕事を得るためオカマやニューハーフになるパターンも存在します。こちらは、GIDとは言えないかも・・・。
その一方で、社会的な要因でなく、気がつけば、体の性と、心の性が違っていて。第二次性徴期になって、その違和感に、ショックを受けてしまうって事もある。
こちらは、前述のジェンダーからの解放って感じとかなりニュアンスが違う。
どっちがどうのとは言えない面もあるけど、カミングアウトは大変だと思うわけです。
タイのオカマちゃんの場合は、カミングアウトしたら、男性らしさから逃れられるという大きなメリットがあるから。社会的なデメリットはあるけど、デメリットよりメリットが大きいようにおもうけど。
後者は、体の性と、心の性が違っているデメリットの方が、大きく感じてしまうように思えてなりません。
この場合、思春期の第2次性徴を一時止めるため抗ホルモン剤は有効だと思います。
どちらの性を選ぶのか、ありのままを受け容れるのか、どのように判断するのかは、本人次第ですが。体の性徴の現れを抑える事で、自分のアイデンティティを判断する時間が稼げるメリットは大きいように思います。
てなことで、語り出すと止まらなくなりそうな、GIDという命題。
約90分の舞台で、ちょいとまじめに、ちょいとくすっと笑って、役者さんの鍛えた演技を見つつ、みなさんも、考えてみませんか。
新しい自分や視点、社会と出会えるかも。
あと2日ありますよ。
最近、関連するニュースも報じられました。
小6男児に抗ホルモン剤=性同一性障害、小児で初−大阪医科大
心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)と診断された兵庫県内の小学校6年の男児(12)に対し、大阪医科大ジェンダークリニック(大阪府高槻市)が、思春期の第2次性徴を一時止めるため抗ホルモン剤を用いた治療を始めることが20日、分かった。GIDの治療で小児に抗ホルモン剤を投与するのは国内初とみられる。
男児の主治医で同クリニックの康純准教授によると、男児は来月から月に1回、抗ホルモン剤「LHRHアゴニスト」を注射する治療を受ける。ホルモンの分泌を抑制する薬剤で、第2次性徴が早い思春期早発症の小児に投与されることもあり、重い副作用の例は少ないという。
GID学会理事長の中塚幹也岡山大教授によると、GID治療では数年前に岡山大が当時16歳の女子高生に投与した例があるが、中学生以下では国内初とみられる。
男児は昨年8月以降、男性ホルモンが増加し、第2次性徴が始まった。大阪医科大は10月から抗ホルモン剤の投与について学内で審議を重ね、最終的に倫理委員会で承認され決定した。(2011/01/20-11:36)時事通信トランス☆プロジェクト 第6回本公演
「カミングアウト」
構成・演出 花房徹
<ストーリー>
ある日、ある家族の中で「カミングアウト」があった。
それから奇妙な時間、日々が流れた。
カミングアウトには勇気が必要。
それを受け取った人々は自分の中のカミングアウトを探すのかも知れない。
そう、ビリヤードのように、一つ一つの玉は八方に散り、一人一人孤独と向き合った。
<日時>
2011年1月27日(木)〜30日(日)
<会場>
吉祥寺シアター
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-22
TEL 0422-22-0911
<タイムスケジュール>
27日(木) 19:30 ★
28日(金) 15:00/19:30
29日(土) 15:00
30日(日) 15:00
※受付時間は開演の1時間前です。開場は開演30分前
★…アフタートークあり
【アフタートークゲスト】
◎針間克己(はりまメンタルクリニック院長)
◎上川あや(世田谷区議会議員)
◎杉山文野(「ダブルハッピネス」著者)
<料金>
※全席指定
前売予約 一般:3500円 (当日3800円)
学生:2500円 (当日共・要学生証提示)
ペア:6300円 (前売・予約のみ取り扱い)
<チケット販売開始>
2010年12月6日(月) 13:00
<チケット購入方法>
電話予約:080-3580-3103
メール予約:ticket.transproject@gmail.com
こりっち予約:PC用
https://ticket.corich.jp/apply/24262/携帯用 http://ticket.corich.jp/apply/24262/
※メールでご予約の際は件名を「チケッと予約」とし、本文に「お名前・観劇日時・枚数・ご連絡先」をご明記の上お申し込みください。
※前売り予約の受付は公演日の前日23時までにお願いします。
※受付は開演の10分前までにお済ませください。10分前を過ぎますと、ご予約を頂いてもお席をご用意できない場合もあります。
<キャスト>
月嶋紫乃 冴瑪悠 原田夕遠 アサト SHIGERU
水谷誠司 あづみれいか 山崎ここ
中山由佳 にいみ花帆 おおたにっち
三浦ゆかり 荒木さち 池田理枝
佐藤昌枝 国枝昌人
<スタッフ>
舞台装置:志田原貴子
照明:田向澄男
音響:上田道崇
舞台監督:小嶋次郎
ヘアメイク:山口勇
制作:増坂由夏 岡田美奈子
<協賛>
ソフトバンクモバイル株式会社
<企画・製作>
トランス☆プロジェクト
<お問い合わせ先>
トランス☆プロジェクト
【メール】info_transproject @ yahoo.co.jp
【HP】
http://transproject.web.fc2.com/「稽古日誌」公開中!
http://translesson.blog85.fc2.com/