婚姻要件の国籍法規定は違憲
[2008年06月05日(Thu)]
このブログでは、国際結婚とか離婚とかそういうことにも触れているのですが。最高裁で国籍法規定が違憲という画期的な判決が出た。
これで、法律を変えなくてはならなくなる。
地味なニュースだけど、20組に一組が国際結婚といわれるぐらい国を超えた関係が増えている状況なだけに、影響が大きいかと思われます。
<婚外子>婚姻要件の国籍法規定は違憲 最高裁大法廷判決
(毎日新聞 - 06月04日 16:21)
結婚していない日本人父とフィリピン人母10組の間に生まれた子ども10人が、国に日本国籍の確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田(仁郎、に、ろう)長官)は4日、出生後の国籍取得に両親の婚姻を必要とする国籍法の規定を違憲と初判断した。大法廷は「遅くとも03年には、規定は合理的理由のない差別を生じさせ、法の下の平等を定めた憲法に反する」と述べ、10人全員の日本国籍を確認した。
最高裁が法律の規定を違憲としたのは、在外邦人の選挙権を制限した公職選挙法を巡る訴訟の判決(05年9月)以来で8件目。国会は早急な法改正を迫られる。
国籍法3条1項は、未婚の日本人父と外国人母の子について、父の出生後認知と両親の婚姻の両方を日本国籍取得の条件とする。原告は関東地方などに住む8〜14歳で、父の認知を得て03〜05年に国籍取得を届け出たが、認められなかった。
大法廷は、同項が設けられた84年当時は規定に合理性があったが、その後の家族生活や親子関係の意識変化、多様化で、立法目的にそぐわなくなっていると指摘。「国籍取得は基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持ち、不利益は見過ごせない」と述べた。
国側は「出生後認知のみで国籍を取得できるとするのは、裁判所が新たな制度を設けることになり、立法権の侵害だ」と主張。大法廷は「原告の救済の観点から、婚姻要件を除いた部分を満たせば国籍取得を認めるというのが合憲的解釈」と退けた。
裁判官15人中12人が違憲と判断し、このうち9人が多数意見。藤田(宙靖、とき、やす)、甲斐中辰夫、堀籠幸男の3裁判官は、原告の国籍取得を認める規定がない立法不作為を違憲とした。藤田裁判官は「現行法の拡張解釈で救済できる」として日本国籍を認めたが、甲斐中、堀籠両裁判官は「違憲状態の解消は国会に委ねるべきだ」と反対意見を述べた。
横尾和子、津野修、古田佑紀の3裁判官は「家族の生活状況に顕著な変化があるとは思われず、規定には合理性があり合憲」と反対意見を述べた。
1審は違憲判断し10人の日本国籍を認めたが、2審は憲法判断をせずに原告逆転敗訴としていた。【北村和巳】
◇鵜判決のポイント
▽婚姻の有無で国籍取得を区別する国籍法3条1項は、遅くとも03年当時には合理的な理由のない差別として憲法に違反する
▽出生後認知された子は、同項が定める要件のうち、両親の婚姻以外が満たされれば国籍取得が認められる。原告は取得届提出で日本国籍を取得した
【ことば】日本国籍の取得 国籍法2条は出生時に法律上の父か母が日本人なら子は日本国籍を取得すると定める。母が日本人ならば無条件に子は日本国籍。日本人父と外国人母の子の場合は、出生時に両親が結婚しているか、未婚でも妊娠中に父が認知していれば日本国籍を取得する。一方、生後認知された婚外子は3条1項の規定で、20歳までに両親が結婚し嫡出子の立場を得た場合に限って法相への届け出で日本国籍を取得できる。この場合、外国籍と日本国籍の二つを持つことになり、22歳までに国籍を選択しなければならない。
▽原告側代理人の話 不合理な差別を正面から違憲と認め、高く評価できる。同じ境遇にある多くの子どもたちに希望を与える。
▽鳩山邦夫法相の話 国籍法の規定が憲法違反とされたことは厳粛に受け止めている。判決内容を十分に検討して適切に対応したい。
◇実情踏まえた判断
棚村政行・早稲田大大学院教授(家族法)の話 画期的な判決で、婚外子差別を禁じた国際人権B規約や子どもの権利条約を尊重した判断だ。価値観の多様化やグローバル化の中で国際的な家族が増えている日本の実情を踏まえている点も妥当。重要な権利でもある国籍について、結婚しているかどうかという親の事情で差別するのは問題だ。婚外子差別の合理性を問う判決で、民法の相続分の差別などにも大きな影響を与えるだろう。
◇家族目巡る法制度に影響
最高裁判決は、民法と同様に法律婚による「家族の結びつき」を重視する国籍法の見直しを迫った。最高裁が婚外子差別を違憲と判断したのは初めてで、家族を巡る法制度にも影響を与える可能性がある。
夫婦別姓など家族関係の価値観は多様化している。事実婚や婚外子の増加で婚外子差別の見直しを求める声が高まり、住民票や戸籍では婚外子を区別する記載が撤廃された。
一方で、国籍法の差別規定は維持されてきた。日本人父・外国人母の婚外子で国籍が認められない子どもたちは国内に数万人、海外にも相当数いるとの試算もある。国籍がなければ参政権を得られず、就職や日本在留でも制限を受ける。同法の規定は違憲との学説が有力になっていた。
判決は救済の道を開いたが、直ちに婚姻要件が無効になるわけではない。原告と同じ境遇の子どもが法務局に届け出ても自動的に国籍は認められないとみられ、法務省は「窓口で混乱が起きないよう対処したい」と話す。同省は法改正に向けた検討を始めたが、どこまでさかのぼって救済するかや婚姻以外の要件を盛り込むかなどが議論になるだろう。
婚外子差別では、遺産相続を嫡出子の半分とする民法の規定が残る。法制審議会は96年、相続分を同一にするよう法相に答申したが、たなざらしのままだ。最高裁判決の意味は重く、相続規定の論議が再燃するのは必至だ。【北村和巳、坂本高志】
これで、法律を変えなくてはならなくなる。
地味なニュースだけど、20組に一組が国際結婚といわれるぐらい国を超えた関係が増えている状況なだけに、影響が大きいかと思われます。
<婚外子>婚姻要件の国籍法規定は違憲 最高裁大法廷判決
(毎日新聞 - 06月04日 16:21)
結婚していない日本人父とフィリピン人母10組の間に生まれた子ども10人が、国に日本国籍の確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田(仁郎、に、ろう)長官)は4日、出生後の国籍取得に両親の婚姻を必要とする国籍法の規定を違憲と初判断した。大法廷は「遅くとも03年には、規定は合理的理由のない差別を生じさせ、法の下の平等を定めた憲法に反する」と述べ、10人全員の日本国籍を確認した。
最高裁が法律の規定を違憲としたのは、在外邦人の選挙権を制限した公職選挙法を巡る訴訟の判決(05年9月)以来で8件目。国会は早急な法改正を迫られる。
国籍法3条1項は、未婚の日本人父と外国人母の子について、父の出生後認知と両親の婚姻の両方を日本国籍取得の条件とする。原告は関東地方などに住む8〜14歳で、父の認知を得て03〜05年に国籍取得を届け出たが、認められなかった。
大法廷は、同項が設けられた84年当時は規定に合理性があったが、その後の家族生活や親子関係の意識変化、多様化で、立法目的にそぐわなくなっていると指摘。「国籍取得は基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持ち、不利益は見過ごせない」と述べた。
国側は「出生後認知のみで国籍を取得できるとするのは、裁判所が新たな制度を設けることになり、立法権の侵害だ」と主張。大法廷は「原告の救済の観点から、婚姻要件を除いた部分を満たせば国籍取得を認めるというのが合憲的解釈」と退けた。
裁判官15人中12人が違憲と判断し、このうち9人が多数意見。藤田(宙靖、とき、やす)、甲斐中辰夫、堀籠幸男の3裁判官は、原告の国籍取得を認める規定がない立法不作為を違憲とした。藤田裁判官は「現行法の拡張解釈で救済できる」として日本国籍を認めたが、甲斐中、堀籠両裁判官は「違憲状態の解消は国会に委ねるべきだ」と反対意見を述べた。
横尾和子、津野修、古田佑紀の3裁判官は「家族の生活状況に顕著な変化があるとは思われず、規定には合理性があり合憲」と反対意見を述べた。
1審は違憲判断し10人の日本国籍を認めたが、2審は憲法判断をせずに原告逆転敗訴としていた。【北村和巳】
◇鵜判決のポイント
▽婚姻の有無で国籍取得を区別する国籍法3条1項は、遅くとも03年当時には合理的な理由のない差別として憲法に違反する
▽出生後認知された子は、同項が定める要件のうち、両親の婚姻以外が満たされれば国籍取得が認められる。原告は取得届提出で日本国籍を取得した
【ことば】日本国籍の取得 国籍法2条は出生時に法律上の父か母が日本人なら子は日本国籍を取得すると定める。母が日本人ならば無条件に子は日本国籍。日本人父と外国人母の子の場合は、出生時に両親が結婚しているか、未婚でも妊娠中に父が認知していれば日本国籍を取得する。一方、生後認知された婚外子は3条1項の規定で、20歳までに両親が結婚し嫡出子の立場を得た場合に限って法相への届け出で日本国籍を取得できる。この場合、外国籍と日本国籍の二つを持つことになり、22歳までに国籍を選択しなければならない。
▽原告側代理人の話 不合理な差別を正面から違憲と認め、高く評価できる。同じ境遇にある多くの子どもたちに希望を与える。
▽鳩山邦夫法相の話 国籍法の規定が憲法違反とされたことは厳粛に受け止めている。判決内容を十分に検討して適切に対応したい。
◇実情踏まえた判断
棚村政行・早稲田大大学院教授(家族法)の話 画期的な判決で、婚外子差別を禁じた国際人権B規約や子どもの権利条約を尊重した判断だ。価値観の多様化やグローバル化の中で国際的な家族が増えている日本の実情を踏まえている点も妥当。重要な権利でもある国籍について、結婚しているかどうかという親の事情で差別するのは問題だ。婚外子差別の合理性を問う判決で、民法の相続分の差別などにも大きな影響を与えるだろう。
◇家族目巡る法制度に影響
最高裁判決は、民法と同様に法律婚による「家族の結びつき」を重視する国籍法の見直しを迫った。最高裁が婚外子差別を違憲と判断したのは初めてで、家族を巡る法制度にも影響を与える可能性がある。
夫婦別姓など家族関係の価値観は多様化している。事実婚や婚外子の増加で婚外子差別の見直しを求める声が高まり、住民票や戸籍では婚外子を区別する記載が撤廃された。
一方で、国籍法の差別規定は維持されてきた。日本人父・外国人母の婚外子で国籍が認められない子どもたちは国内に数万人、海外にも相当数いるとの試算もある。国籍がなければ参政権を得られず、就職や日本在留でも制限を受ける。同法の規定は違憲との学説が有力になっていた。
判決は救済の道を開いたが、直ちに婚姻要件が無効になるわけではない。原告と同じ境遇の子どもが法務局に届け出ても自動的に国籍は認められないとみられ、法務省は「窓口で混乱が起きないよう対処したい」と話す。同省は法改正に向けた検討を始めたが、どこまでさかのぼって救済するかや婚姻以外の要件を盛り込むかなどが議論になるだろう。
婚外子差別では、遺産相続を嫡出子の半分とする民法の規定が残る。法制審議会は96年、相続分を同一にするよう法相に答申したが、たなざらしのままだ。最高裁判決の意味は重く、相続規定の論議が再燃するのは必至だ。【北村和巳、坂本高志】