鉄道の安全対策は無駄遣い
[2006年04月25日(Tue)]
昨年の4月25日JR西日本福知山線脱線事故が起きた。
事故は速度を出しすぎていたことによる転覆脱線とみられ、捜査本部は引き続き高見運転士の当時の心理状況の解明を進めると未だに報道されているが。実はまだ事故調査委員会の事故報告書もまとまっていない状況なんですよね。
おそらく捜査本部は今回の件で、車両などの事故原因について調べることが出来る権限や能力や機能のいずれか又は複数がないため、動けないという事情があるが、捜査をしていないと国民が安心しないので、自分たちが出来る捜査として、既に亡くなった運転士の当時の心理状況の解明を進めると発表したのだろう。
んー、心理というのは、人によってそれぞれちがうのに、個体の検査データのない既に亡くなった方に対し、状況証拠だけで事故原因を予想し解明するというのは、かなり乱暴な行為で、場合によっては、事故原因を創ることさえ出来てしまう。やり方によっては、事実はわからないのに、亡くなった高見運転士やその家族がが全く浮かばれない事になる可能性を持っている。
その一方で、国土交通省は事故後、原因を特定出来ていない早い段階で、鉄道各社に新型でコストのかかる自動列車制御装置ATS-Pを設置するようにと言っている。
これもおかしな話しだ。
しかも、鉄道アナリストの川島令三さんは、「なぜ福知山線脱線事故は起こったのか」という本で、旧型ATSに対しての認識不足を指摘している。そして、システムを新型に変更するのではなく、旧型ATSのままで速度を調べる地上子を追加するだけで事故が防げた可能性を指摘している。
もし、川島令三さんの指摘が的確なのであれば。国土交通省は、事業の現状やATSのしくみを理解せずに、中小私鉄の財政では導入の負担の大きい提案をしていることになる。しかも、旧型もうまくつかえば、安価に同じ効果を出せるのであれば、国土交通省は、無駄遣いを推奨していることになる。
一方、儲かっている鉄道は話しが違ってくる。安全という事がウリになるだけに、過剰投資をしているようだ。
いずれにしても、鉄道の安全対策は無駄遣いを促進しているようなのだ。
それにしても、この脱線事故はナゾが多い。
まず、マンションに車両がめり込むなど4両が大破しているのに、ブレーキに問題がなかっただとか発表をしたり。事故調査委員会が、ボルスタレス台車が要因の一つだと言いたげだったにもかかわらず、ボルスタレス台車のボも言わないってこともあったそうだ。
おそらく、このあたりは、業界からの圧力があった可能性がある。
ブレーキに関しては、脱線事故を起こした207系の0番台と1000番台の混成編成では、ブレーキの効きに時間差が発生する曰く付きの組み合わせだったわけだし。
台車に関しては、問題点を指摘される前に、207系の台車に改良を加えた。
これは、営団地下鉄(現東京メトロ)の日比谷線の脱線事故の後。表向きには何も発表せずに改良を加えたことと似ている。
要は、問題がわかっていたから、問題が起きたから素早く対応したけど、表向きに原因を知っていたとは言えないから、密かに改良をしたのだ。
これを、自動車で行うとリコール隠しというんですよね。
つまり、JR西日本や車両メーカーは207系の脱線の原因が分かっていた可能性が高い。ブレーキの問題もわかっていたから早い段階で隠した可能性もある。
自動列車停止装置にしろ、ブレーキや台車にしろ、なんとなくお金の流れが臭ってきそうな、不可解な現象がおきている。
その一方で、保線や車両点検などの、鉄道の基本的なメンテナンス不良も増えているんですよね。
ゆりかもめの脱輪事故も、構造上の問題の可能性もあるが、普段からの点検で防げる事故という説もある。そして、207系が期限切れのブレーキホースを使っていたなど。広報的なインパクトの強い安全対策システムに金をかけているわりに、保守要員の人員削減が原因と思える事が起きている。
IRについで、CSRが広まってきているが。そのような時流の中で、企業の広報は見せかけだけの投資に力を入れ、人を削ることで利益を生み出している傾向があるが、鉄道業界でも儲かっている企業は、このパターンにはまっているのかも知れない。
そのために、せっかく過剰とも言える安全対策のシステムを導入しても、基本的な事をする人を減らしている事により、システムが機能したとしても基本的な理由で事故を起こし、高額なみてくれのいいシステムを無駄なものになっている可能性が高い。
参考文献
「なぜ福知山線脱線事故は起こったのか」
著者:川島令三
出版社:草思社
発行年月:2005年08月
ISBN:4794214286
参考記事
----------------------------------------------------------------------
鉄道121社、半数「安全投資は負担」 本社調査
2006年04月24日06時14分 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0424/OSK200604230030.html
25日で発生から1年となるJR宝塚線(福知山線)の脱線事故をきっかけに国土交通省が全国の鉄道事業者に義務づけた安全施策への対応をめぐり、全国121の鉄道事業者のうちほぼ半数の事業者が経営への影響が及ぶ水準の負担が生じると考えていることが、朝日新聞社のアンケートでわかった。JRや大手私鉄が整備の前倒しや国の基準を上回る独自の対策を予定する一方で、中小私鉄や第三セクターは負担増により他の施設への投資が難しくなるなど、「安全格差」が広がりかねない実態が浮かんでいる。
安全対策コストの増額が経営に与えた影響
アンケートは、国内で鉄道を運営する事業者のうち、路面電車や貨物などを除く136社に発送し、121社(89%)から回答があった。
「事故後に安全投資を増額した」としたのは35社(28.9%)で、この負担増について23社(19.0%)が「経営に影響が生じた」と回答した。「将来その恐れがある」とする35社(28.9%)を加えると半数近くに達した。額を回答した30社の合計は132億5850万円(05年度)で、このうち事故を起こしたJR西日本が100億円を占めた。
国土交通省は今年3月に鉄道技術基準の省令を改正し、(1)曲線で速度超過を防ぐ自動列車停止装置(ATS)などの速度制限装置(2)運転士の急病などの異常時に列車を自動停止させる装置(3)速度やブレーキなど運転状況を自動記録する装置――を中心に安全対策を義務化。2〜10年以内に終えるよう求めている。
JRや都市部の私鉄、地下鉄などの大手は、「安全が最大のサービスになる」(各社)などとして積極的に取り組む姿勢が目立った。
なかには「国交省の通達でATS整備を迫られた地点はなかったが、都営浅草線で10年度までに最新鋭のATSを導入し、ATC(自動列車制御装置)並みの速度制御をする」(東京都交通局)、「高架橋の補修と曲線の改良工事を前倒しする」(京浜急行)など、上乗せの改善をする社もあった。
一方、赤字や資金不足に悩む地方の中小事業者は、基準を満たすための支出だけで経営への影響が出るとして、心配する声が目立った。「会社を倒産させても安全を確保するということはできない」(土佐くろしお鉄道)、「本来計画していた安全のための設備投資が後回しになる」(中四国の三セク)、「(新しい設備の)維持管理経費が経営に影響してくる」(肥薩おれんじ鉄道)――など深刻な意見が相次いだ。
これらの設備投資には国の近代化補助を利用できるが、最低でも20%の自己負担が生じる。このため、国への要望を挙げた63社のうち、「非常に厳しい経営状況。補助金の拡充がなければ経営ができない」(中部の私鉄)など、安全対策への国庫補助の充実を求める記述が40社と約3分の2を占めた。
事故は速度を出しすぎていたことによる転覆脱線とみられ、捜査本部は引き続き高見運転士の当時の心理状況の解明を進めると未だに報道されているが。実はまだ事故調査委員会の事故報告書もまとまっていない状況なんですよね。
おそらく捜査本部は今回の件で、車両などの事故原因について調べることが出来る権限や能力や機能のいずれか又は複数がないため、動けないという事情があるが、捜査をしていないと国民が安心しないので、自分たちが出来る捜査として、既に亡くなった運転士の当時の心理状況の解明を進めると発表したのだろう。
んー、心理というのは、人によってそれぞれちがうのに、個体の検査データのない既に亡くなった方に対し、状況証拠だけで事故原因を予想し解明するというのは、かなり乱暴な行為で、場合によっては、事故原因を創ることさえ出来てしまう。やり方によっては、事実はわからないのに、亡くなった高見運転士やその家族がが全く浮かばれない事になる可能性を持っている。
その一方で、国土交通省は事故後、原因を特定出来ていない早い段階で、鉄道各社に新型でコストのかかる自動列車制御装置ATS-Pを設置するようにと言っている。
これもおかしな話しだ。
しかも、鉄道アナリストの川島令三さんは、「なぜ福知山線脱線事故は起こったのか」という本で、旧型ATSに対しての認識不足を指摘している。そして、システムを新型に変更するのではなく、旧型ATSのままで速度を調べる地上子を追加するだけで事故が防げた可能性を指摘している。
もし、川島令三さんの指摘が的確なのであれば。国土交通省は、事業の現状やATSのしくみを理解せずに、中小私鉄の財政では導入の負担の大きい提案をしていることになる。しかも、旧型もうまくつかえば、安価に同じ効果を出せるのであれば、国土交通省は、無駄遣いを推奨していることになる。
一方、儲かっている鉄道は話しが違ってくる。安全という事がウリになるだけに、過剰投資をしているようだ。
いずれにしても、鉄道の安全対策は無駄遣いを促進しているようなのだ。
それにしても、この脱線事故はナゾが多い。
まず、マンションに車両がめり込むなど4両が大破しているのに、ブレーキに問題がなかっただとか発表をしたり。事故調査委員会が、ボルスタレス台車が要因の一つだと言いたげだったにもかかわらず、ボルスタレス台車のボも言わないってこともあったそうだ。
おそらく、このあたりは、業界からの圧力があった可能性がある。
ブレーキに関しては、脱線事故を起こした207系の0番台と1000番台の混成編成では、ブレーキの効きに時間差が発生する曰く付きの組み合わせだったわけだし。
台車に関しては、問題点を指摘される前に、207系の台車に改良を加えた。
これは、営団地下鉄(現東京メトロ)の日比谷線の脱線事故の後。表向きには何も発表せずに改良を加えたことと似ている。
要は、問題がわかっていたから、問題が起きたから素早く対応したけど、表向きに原因を知っていたとは言えないから、密かに改良をしたのだ。
これを、自動車で行うとリコール隠しというんですよね。
つまり、JR西日本や車両メーカーは207系の脱線の原因が分かっていた可能性が高い。ブレーキの問題もわかっていたから早い段階で隠した可能性もある。
自動列車停止装置にしろ、ブレーキや台車にしろ、なんとなくお金の流れが臭ってきそうな、不可解な現象がおきている。
その一方で、保線や車両点検などの、鉄道の基本的なメンテナンス不良も増えているんですよね。
ゆりかもめの脱輪事故も、構造上の問題の可能性もあるが、普段からの点検で防げる事故という説もある。そして、207系が期限切れのブレーキホースを使っていたなど。広報的なインパクトの強い安全対策システムに金をかけているわりに、保守要員の人員削減が原因と思える事が起きている。
IRについで、CSRが広まってきているが。そのような時流の中で、企業の広報は見せかけだけの投資に力を入れ、人を削ることで利益を生み出している傾向があるが、鉄道業界でも儲かっている企業は、このパターンにはまっているのかも知れない。
そのために、せっかく過剰とも言える安全対策のシステムを導入しても、基本的な事をする人を減らしている事により、システムが機能したとしても基本的な理由で事故を起こし、高額なみてくれのいいシステムを無駄なものになっている可能性が高い。
参考文献
「なぜ福知山線脱線事故は起こったのか」
著者:川島令三
出版社:草思社
発行年月:2005年08月
ISBN:4794214286
参考記事
----------------------------------------------------------------------
鉄道121社、半数「安全投資は負担」 本社調査
2006年04月24日06時14分 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0424/OSK200604230030.html
25日で発生から1年となるJR宝塚線(福知山線)の脱線事故をきっかけに国土交通省が全国の鉄道事業者に義務づけた安全施策への対応をめぐり、全国121の鉄道事業者のうちほぼ半数の事業者が経営への影響が及ぶ水準の負担が生じると考えていることが、朝日新聞社のアンケートでわかった。JRや大手私鉄が整備の前倒しや国の基準を上回る独自の対策を予定する一方で、中小私鉄や第三セクターは負担増により他の施設への投資が難しくなるなど、「安全格差」が広がりかねない実態が浮かんでいる。
安全対策コストの増額が経営に与えた影響
アンケートは、国内で鉄道を運営する事業者のうち、路面電車や貨物などを除く136社に発送し、121社(89%)から回答があった。
「事故後に安全投資を増額した」としたのは35社(28.9%)で、この負担増について23社(19.0%)が「経営に影響が生じた」と回答した。「将来その恐れがある」とする35社(28.9%)を加えると半数近くに達した。額を回答した30社の合計は132億5850万円(05年度)で、このうち事故を起こしたJR西日本が100億円を占めた。
国土交通省は今年3月に鉄道技術基準の省令を改正し、(1)曲線で速度超過を防ぐ自動列車停止装置(ATS)などの速度制限装置(2)運転士の急病などの異常時に列車を自動停止させる装置(3)速度やブレーキなど運転状況を自動記録する装置――を中心に安全対策を義務化。2〜10年以内に終えるよう求めている。
JRや都市部の私鉄、地下鉄などの大手は、「安全が最大のサービスになる」(各社)などとして積極的に取り組む姿勢が目立った。
なかには「国交省の通達でATS整備を迫られた地点はなかったが、都営浅草線で10年度までに最新鋭のATSを導入し、ATC(自動列車制御装置)並みの速度制御をする」(東京都交通局)、「高架橋の補修と曲線の改良工事を前倒しする」(京浜急行)など、上乗せの改善をする社もあった。
一方、赤字や資金不足に悩む地方の中小事業者は、基準を満たすための支出だけで経営への影響が出るとして、心配する声が目立った。「会社を倒産させても安全を確保するということはできない」(土佐くろしお鉄道)、「本来計画していた安全のための設備投資が後回しになる」(中四国の三セク)、「(新しい設備の)維持管理経費が経営に影響してくる」(肥薩おれんじ鉄道)――など深刻な意見が相次いだ。
これらの設備投資には国の近代化補助を利用できるが、最低でも20%の自己負担が生じる。このため、国への要望を挙げた63社のうち、「非常に厳しい経営状況。補助金の拡充がなければ経営ができない」(中部の私鉄)など、安全対策への国庫補助の充実を求める記述が40社と約3分の2を占めた。