生活保護世帯の子に進学支援拡大
[2010年10月14日(Thu)]
貧困の連鎖を教育支援で食い止める取り組みが行われているそうです。すごく地味なだけに注目です。
ただ、進学しても、必ずしも就職につながるわけではないので、大学や学校自体が変わる必要もありますし、その他に生きる力をつける部分にも支援を強化する必要があるように思います。
生活保護世帯の子に進学支援拡大 無料学習会や塾代補助
2010年10月12日5時29分 朝日新聞
生活保護を受けている家庭の子を対象に、自治体が無料学習会を開いたり塾代を補助したりするなど進学支援に乗り出す例が増えている。低所得や家庭環境が原因で子どもが教育機会を失い、貧困が次世代に引き継がれる「連鎖」を防ごうとの狙いだ。学校が担ってきた学力指導に福祉行政が動き始めた。
9月中旬、埼玉県内の母子家庭を県の教育支援員らが訪ねた時のことだ。母親は中学3年生の息子と並んで、ほっとした表情を見せた。
「夏季講習は7万円かかると聞いたので、子どもを通わせることができなかった。学習教室は助かります」
県は今月2日、生活保護家庭で育つ約650人の中3生を対象に無料の学習教室をスタートさせた。全県レベルでの展開は全国で初めて。参加者を掘り起こそうと、30人の教育支援員らが9月から、家庭訪問を続けている。年間予算は約1億1600万円。生活保護世帯の全日制高校進学率(今春68%)を5ポイント上げるのが目標だ。
大阪府は昨年11月から、生活保護家庭の中3生を公民館に集めて週に2回、学習会を開いている。「夫婦間暴力、虐待など複雑な家庭事情を抱える子もいる」と府の担当者。精神的な支援もできるよう、カウンセラーの資格をもつ元教員を学習支援員に採用した。
地域産業の地盤沈下で、市民19人に1人が生活保護を利用している北海道釧路市。中3生の勉強会に市はNPOと協力して取り組む。「参加する子は将来の街の担い手。学習支援は地域づくりの重要課題です」と担当者は言う。
塾通いや進学時の経済支援に力を入れる自治体も現れた。東京都は2008年度から、生活保護家庭の子が塾に通う費用を補助する制度をスタートした。小学4〜6年は年額5万円、中1と中2は10万円、中3は15万円。昨年度は1億2700万円を都が独自に支出した。板橋区では今春、塾代補助を利用した子の全日制高校進学率は87%で、生活保護世帯全体の71%を上回った。
「貧困の連鎖を教育で断ち切る」。熊本県も昨年度、苦学した蒲島郁夫知事の旗振りで、生活保護世帯から大学や専門学校に進む若者向けの生活費貸し付けを始めた。
行政だけではない。阪神大震災を機に子ども支援を始めたNPO法人「ブレーンヒューマニティー」(兵庫県西宮市)は今春から、生活保護世帯の小学生から高校生までを対象に、塾や予備校で使える年間25万〜50万円分のクーポンを出す支援を始めた。財源は街頭で集めた100万円以上の募金だ。
支援を受けている大阪府の女子生徒(17)は「クーポンがなければ予備校には通えなかった。がんばって合格しないと」
■「貧困の連鎖」断ち切るために
「貧困の連鎖」に関心が高まったきっかけは、堺市健康福祉局の道中隆理事(現・関西国際大教授)が07年に公表した調査結果だ。生活保護を受ける世帯主の25%は、自ら育った家庭も生活保護世帯だった。生活保護世帯の世帯主の学歴は中卒か高校中退が73%を占めた。
国も進学支援に腰をあげた。昨年、参考書代などに使える学習支援費を生活保護に上乗せ。加えて自治体が進学支援に取り組んだ場合の国の補助率を10割に引き上げた。
「教育は学校の役割ではないのか」。自治体には戸惑いも残る。首都圏のある市の生活保護担当課長は「本来は公教育がやるべきこと。でも現実に低学歴が自立の壁になっている。守備範囲を超えているかも知れないが、やるしかない」。
生活保護受給世帯は約138万世帯(6月)と過去最多を更新。財政負担の増加に直面する指定市の担当者は「進学支援に即効性はないが、10年、20年先の保護費軽減につながるはず」と期待を込める。首都大学東京の岡部卓教授も「貧困の連鎖を防ぐ進学・学習支援は未来への投資だ。子どもが社会に貢献できる人材に育ち、納税者となることで、長い目で見れば社会的、財政的な負担も減る」と指摘する。
ただ、失業者の対応に忙殺される福祉事務所の人手不足、学校との連携など、課題も多い。(中塚久美子、清川卓史)
ただ、進学しても、必ずしも就職につながるわけではないので、大学や学校自体が変わる必要もありますし、その他に生きる力をつける部分にも支援を強化する必要があるように思います。
生活保護世帯の子に進学支援拡大 無料学習会や塾代補助
2010年10月12日5時29分 朝日新聞
生活保護を受けている家庭の子を対象に、自治体が無料学習会を開いたり塾代を補助したりするなど進学支援に乗り出す例が増えている。低所得や家庭環境が原因で子どもが教育機会を失い、貧困が次世代に引き継がれる「連鎖」を防ごうとの狙いだ。学校が担ってきた学力指導に福祉行政が動き始めた。
9月中旬、埼玉県内の母子家庭を県の教育支援員らが訪ねた時のことだ。母親は中学3年生の息子と並んで、ほっとした表情を見せた。
「夏季講習は7万円かかると聞いたので、子どもを通わせることができなかった。学習教室は助かります」
県は今月2日、生活保護家庭で育つ約650人の中3生を対象に無料の学習教室をスタートさせた。全県レベルでの展開は全国で初めて。参加者を掘り起こそうと、30人の教育支援員らが9月から、家庭訪問を続けている。年間予算は約1億1600万円。生活保護世帯の全日制高校進学率(今春68%)を5ポイント上げるのが目標だ。
大阪府は昨年11月から、生活保護家庭の中3生を公民館に集めて週に2回、学習会を開いている。「夫婦間暴力、虐待など複雑な家庭事情を抱える子もいる」と府の担当者。精神的な支援もできるよう、カウンセラーの資格をもつ元教員を学習支援員に採用した。
地域産業の地盤沈下で、市民19人に1人が生活保護を利用している北海道釧路市。中3生の勉強会に市はNPOと協力して取り組む。「参加する子は将来の街の担い手。学習支援は地域づくりの重要課題です」と担当者は言う。
塾通いや進学時の経済支援に力を入れる自治体も現れた。東京都は2008年度から、生活保護家庭の子が塾に通う費用を補助する制度をスタートした。小学4〜6年は年額5万円、中1と中2は10万円、中3は15万円。昨年度は1億2700万円を都が独自に支出した。板橋区では今春、塾代補助を利用した子の全日制高校進学率は87%で、生活保護世帯全体の71%を上回った。
「貧困の連鎖を教育で断ち切る」。熊本県も昨年度、苦学した蒲島郁夫知事の旗振りで、生活保護世帯から大学や専門学校に進む若者向けの生活費貸し付けを始めた。
行政だけではない。阪神大震災を機に子ども支援を始めたNPO法人「ブレーンヒューマニティー」(兵庫県西宮市)は今春から、生活保護世帯の小学生から高校生までを対象に、塾や予備校で使える年間25万〜50万円分のクーポンを出す支援を始めた。財源は街頭で集めた100万円以上の募金だ。
支援を受けている大阪府の女子生徒(17)は「クーポンがなければ予備校には通えなかった。がんばって合格しないと」
■「貧困の連鎖」断ち切るために
「貧困の連鎖」に関心が高まったきっかけは、堺市健康福祉局の道中隆理事(現・関西国際大教授)が07年に公表した調査結果だ。生活保護を受ける世帯主の25%は、自ら育った家庭も生活保護世帯だった。生活保護世帯の世帯主の学歴は中卒か高校中退が73%を占めた。
国も進学支援に腰をあげた。昨年、参考書代などに使える学習支援費を生活保護に上乗せ。加えて自治体が進学支援に取り組んだ場合の国の補助率を10割に引き上げた。
「教育は学校の役割ではないのか」。自治体には戸惑いも残る。首都圏のある市の生活保護担当課長は「本来は公教育がやるべきこと。でも現実に低学歴が自立の壁になっている。守備範囲を超えているかも知れないが、やるしかない」。
生活保護受給世帯は約138万世帯(6月)と過去最多を更新。財政負担の増加に直面する指定市の担当者は「進学支援に即効性はないが、10年、20年先の保護費軽減につながるはず」と期待を込める。首都大学東京の岡部卓教授も「貧困の連鎖を防ぐ進学・学習支援は未来への投資だ。子どもが社会に貢献できる人材に育ち、納税者となることで、長い目で見れば社会的、財政的な負担も減る」と指摘する。
ただ、失業者の対応に忙殺される福祉事務所の人手不足、学校との連携など、課題も多い。(中塚久美子、清川卓史)