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2017年10月25日

idea11月号二言三言「一関市の魅力と造形教育」こぼれ話

ideaに掲載できなかったお話を「こぼれ話」としてご紹介します。

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造形おじさん(幼児造形指導員)菅原順一さん


◎毎月の施設での造形遊び

【菅原】今年の春から一関の子ども達の学童保育所で造形あそびが始まり、その季節に合わせて子どもたちといろんなものを作って遊んでいます。今月はハロウィン、オバケカボチャや蜘蛛の巣で室内を飾り、部屋中ハロウィンムード。

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【菅原】吉田恵子さんとは「新垣勉 おしゃべりコンサート」からお付き合いが始まり、それに関連したことをお手伝いしていますが、今年からはさらに吉田さんが関わっている千厩町の「宅老所」で造形遊びをやることになり月1回通っています。幼児の造形指導は、老人でも障がい者でも基本は同じで、自分でモノを作り出す世界は楽しいわけです。

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【小野寺】では、今は2か所の施設で造形を行っているんですか?
【菅原】うん。学童は最初、月1回のだったけど月2回にしてほしいと言われ、今では月に2回行くことになり、地域の子どもたちの夏休み造形や、大東町の学童施設での造形あそびや〜次々に予定が詰まって「幸せな田舎暮らしのご隠居生活」はどこへやら…ちっともスローライフじゃなくなってきた(笑)


◎障がいをもつ子と関わり気づいたこと

【小野寺】実は我々のところも障がい者支援をしてるんですよ。事業所は市役所の近くで、元あった角掛小児科さんの建物をそのままお借りしてやっています。主に自閉症とか知的障害の子なんですが、うちの方は子どもから大人まで受け入れられる体制ができていて、就学前の子ども達の療育もやっていますし、小学生の放課後デイサービスもやっています。
【菅原】清明支援学校もだけど、一関では障がいを持っている方の施設が結構数多くありますよね。
【小野寺】我々の目的は「障がいを持っている子達を支えていく」とか「家族だけだと負担が大きいので、地域や皆で支えられるまちをつくる」なんですが、まちづくりの一環としてやっているのは福祉の現場だけでは広がらないからなんです。こうやって地域づくりに関わりながら障がい者の方達と健常者の方達の橋渡しをするような形をとっていかないと、どうも理解が得られないというか。自閉症などをもっている子達が敬遠されてしまうんじゃなくて、なんとなく「この子自閉症かもしれない」とか、そういう気づきをつくっていかなきゃいけないということで街づくりも行っているんですね。
【菅原】保育科の学生達は養護施設や児童施設に実習があり、僕も実習指導で施設に伺い、そこの園長先生にお話を聞くんだけど、障がい児施設などでは、現場を経験しない限り解らないことがたくさんあることに気づかされる。これは先日の話なのですが、「マジックの線に沿ってハサミで切ってね」と言ったときに、健常児であればすぐに切り始めるけど、障がいを持った子の場合、「線の真ん中を切るのか、外側を切るのか内側を切るのか〜」と質問が出た。これは、指導の側では予測しない質問で、現場を経験して初めてわかること。「どこでもいいんだけどさ、じゃあ真ん中切りな」と言うと線の真ん中を丁寧に丁寧にはみ出さないように切って行く。当然時間がかかる、そういう子がクラスに一人いると、クラス指導をする先生にとっては、次に進むときに足手まといになる。皆作業が終わっているのに一人だけなかなか終わらない。一事が万事、時間の流れが違う子を普通クラスで指導するのは無理ということになる。
その子の側からすれば「先生が言う通りに一生懸命やっている」わけで、この一生懸命さは悪いことじゃない、「時計の速さが違う」だけなのに、それを障がいと言っていいのか?と思っちゃうよね。
【小野寺】人によっては個性と言いますよね。
【菅原】そういう子達と付き合う時、もう何十年も同じような仕事をしていて、今まで私が気づけなかったことを気づかさせてくれる機会になる。


◎子どもから高齢者までが楽しめる造形遊び

【菅原】折込チラシの紙を切って、折って、ホチキスで止めるだけでこんなものが作れるんだよ。

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【菅原】(写真の物を目線の高さから指先で前に押し出すように飛ばすと、くるくると回転しながら飛ぶ)
【小野寺】おぉぉー、すごい!
【菅原】おもしろいでしょ。単純な作りなのに、意外性のある飛び方をする、しかも制作時間3分。
【菅原】「宅老所」の皆さんと一緒に造形遊びをするんだけど、こういうモノを作って遊べることに気づくと、孫たちに高いお金を出しておもちゃを買ってあげるんじゃなくて、身近な材料で子どもたちと一緒に作って遊べるおじいちゃん・おばあちゃんになるよね。子どもたち自身が、自分の知恵で「遊びを創り出せる子育て」はとても大事です。そのためにも周りにいる大人たちが、子どもと遊ぶ知恵や工夫が必要になるわけです。
 近所の子どもたちが来たとき、こんなもの作って遊んだ。

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【小野寺】材料は画用紙と爪楊枝ですか?
【菅原】幼児の造形は子どもの身の回りにある材料で作れることが原則。ハガキなど同じ形の長方形が二つある場合は、交差させると正方形になる。2枚重ねで切ると正方形が2つできる。それに対角線を引くと中心点がわかる。千枚通しで穴あけ、紙の間にスチロールチップを挟んでそこに爪楊枝をさして、正方形をずらすと8角形ができるよね。それで駒ができる。羽根にキラキラを貼るとミラクルな駒ができるんだ。こういうものは工夫の仕方でいくらでもできるわけよ。
【小野寺】なるほど!おもしろいですね〜
【菅原】子どもでも失敗しないで作れるにはどうしたらいいか、作り方を色々と考えるんだ。良いアイデアは多くの場合、飲み屋さんで閃いたりするんだよ(笑)改善を繰り返せばやがていいものになる。幼児たちとの30年の経験は貴重な宝物なんだ。
【小野寺】いやあ、すごいですね。


◎一関文化センターの彫塑作品

【小野寺】菅原さんの作品が一関文化センターの中に飾られているとお聞きしましたが?

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一関文化センターに飾られてある菅原さんが作った彫塑作品

【菅原】私は山形大学教育学部の美術科に通っていましたが、その時は先生になるつもりは全くなく、そこで絵を描いたり彫刻をしたりしていました。大学3年生の時、山形県展に出品した作品が県の最高賞となり、国画会にも出品するようになったのです。大学卒業の時に、彫刻の全身像は持ち帰っても置き場所もなく、壊そうと思っていた矢先に一関市から作品寄贈の話をいただき、一関文化センターの中に飾られることになったのです。
【小野寺】これは大学生の頃に造った作品だったんですね。
【菅原】そうです。もう50年前の作品だけど、今だに飾ってくれてる。石膏に着色なので、震災の時によく壊れなかったなと思います。


◎東京に自慢したい一関図書館

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【菅原】ここに来てもう一つ感動したのは新しくなった一関市図書館。僕が一関にいた頃は木造の図書館だった。
【小野寺】昔は川沿いに建ってましたよね。僕も利用してました。
【菅原】一関に来てみたら「いやあよくできている」と思った。都会では、図書館などは、ともすると民間委託にされがちで、ツタヤに任せたりしがちです。
【小野寺】そうですね。
【菅原】ツタヤに任せると1階を売り場、2階を図書館にしていて、売り場にある最新の本は2階には置かない。だって、置いたら本が売れなくなっちゃうから。面積は大きいけど図書館機能をもっているスペースは狭いから、棚の高い所にも本を収めることになる。上にあるものはイスを使わなきゃならないから不便。貸出頻度が高い本は残し、低い本はどんどん削っていく。学芸員がきちんとしたかたちでいないから、本の選定のしかたもテーマ性がなく、その図書館の中の企画力も弱くなっていく。重要な郷土資料とか、昔の市の議会記録だとかは見る人が限られているからどんどん縮小されていく。でも一関図書館では、棚の高さが手の届く範囲に作られ、分類と必要な本の選び方が考え抜かれていて選定されていて、新刊本がすぐ入る。郷土資料や市のデータが揃っていて、貸出システムもすごく楽。コンセプトがすごくいいよね。公的施設が街の中心街にまとまってあり、人間が住む街のキャパシティというのはやはり、適正規模がありそうな気がするな。
【小野寺】深いですね、そこは。
【菅原】だから公的責任でやるべきものを民間委託にしてしまうと、結局、文化をダメにしてしまうことになりがち、教育関係部門や福祉部門は自治体がちゃんと責任負う必要がある。
【小野寺】そうですよね、最近の流行としては民間に委ねすぎるというところですよね。自分達のまちとしての教育行政とか、社会教育行政をどう維持していこうかというところは、図書館の蔵書とかコンセプトじゃないですか。
【菅原】その時々に合わせて特別展示コーナーを作っているのもスゴイ!終戦の時期になると、一関図書館はちゃんと一関が爆撃された時の資料とか本を揃え、子供の絵本からも関係ある平和図書を並べてて企画をつくる。あれは学芸員が偉いよ、すごく。
だから東京から来た仲間たちを、必ず一関図書館に案内するんだ。
一関に転居して2年、田舎はそれなりにおもしろい。都会ではありえないことがさまざまな人たちの努力で、生活を豊かにしている。スバラシイ!
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