学校のすぐそばに消えた集落があることに興味をもった中学生が、県内・県外の消えた集落のくらしを現地まで出かけて直接見聞きして調べ、集落が消えた理由を明らかにする。そんな中学生がいたこと、そんな生徒たちが学ぶ中学校が日本に、しかも山村にあったことを知りました。日本の将来をも見すえた中学生たちの研究に驚嘆します。
中学生の素朴な視点での気付きや考察から、今後の日本の行く末について学ぶことの多い1冊だと思います。
まず驚いたのは、この本をまとめた中学生たちが学ぶ中学校の存在です。
正式の名前は、学校法人きのくに子どもの村学園 かつやま子どもの村小学校・中学校
私立中学校で、福井県勝山市にあります。
学校のホームページによると、この学校で、もっとも大切にされているのは「プロジェクト」という授業です。
@実際的な生活の諸問題に題材を求める
A手足を使う体験的な作業を中心とする
B子どもが興味をもって自発的にとりくむ
C活動の中で、子どもが自分自身の知識を創造する
といった特徴があります。総合的な学習の時間に該当するものかと思います。
具体的な活動としては、木工、作物の栽培、動物の飼育、料理、演劇などがあります。子どもたちは自分の属するプロジェクトを自分で決めることができます。さらに、集まった子どもと担当の大人で活動計画を立てて行います。
もちろん、国語や数学などの教科の時間はありますが、カリキュラムは公立学校より自由度は高いようです。
この本は、プロジェクト「アカデミー」での実践記録です。
中学生たちは学校の近くに消えた集落があることを知り、なぜ住民は去ってしまったのか。実際に集落の跡を訪ねて確かめ、かつて住んでいた人たちを訪ねて話を聞きます。そして町誌等の文献を読みながら考察を加えていきました。
地元勝山市内から隣接町村、そして他県へと調査の範囲は広がっていきます。
本の構成は次のようになっています。
第1章 中野俣の人とくらし―福井県勝山市(中野俣集落のくらし 中野俣が消えた理由 ほか)
第2章 横倉の人とくらし―福井県勝山市(横倉の栄えた頃 村がなくなった原因 ほか)
第3章 西谷村の人とくらし―福井県大野郡(西谷村の集落 くらし ほか)
第4章 日本各地の消えた村(徳山村の人とくらし(岐阜県揖斐郡) 脇ヶ畑村の人とくらし(滋賀県犬上郡) ほか)
第5章 私たちが考える消えた村(村が消える原因 村はのこすべきか ほか)
最終章で中学生たちは村が消える原因を考察します。
調査箇所は山村の豪雪地帯で、高度成長期に過疎が進んだ場所あることは容易に想像がつきます。共通する、豪雪、仕事、子どもの教育、…… このような理由で人々は村を去ったことをまとめています。また、村が消える原因をまとめるばかりでなく、村はのこすべきかを最後に問いかけます。
この本は一関市立大東図書館で借りることができます。
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