千葉大学寄附講義−第7回 デーケン先生−[2007年11月13日(Tue)]
<紅葉の始まった西千葉キャンパス>
ジョークとユーモアは違います。
ジョークは頭で考えるレベルで、時には人を傷つけることもある。
ユーモアは、思いやりと愛の表現。
ユーモアを介在させると、あたたかい人間関係になります。
笑いながら、同時に人に腹を立てることはできないのですから。
−上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン先生は、千葉大学の学生を前に、
このように講義を締めくくりました。
「ユーモアとは、“にもかかわらず”笑うこと」
と、ホスピス・緩和ケアの文脈でのユーモアの大切さを説いているデーケン先生。
先生のお父様は、戦時下のドイツにおいて、親しい人が次々になくなる中、
食卓では常に笑いを誘い、家族を楽しい気分にさせていたそうです。
スピリチュアリティーとユーモアは、自己の中に開発できる、とのこと。
緩和ケアの現場で起きた、このようなお話もされました。
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死が迫ったある母親が言いました。
「ウイスキーが飲みたい」
子どもたちは困って医師に止められているといいましたが、母は聞きません。
仕方なくウイスキーをあげると、「ぬるい。氷がほしい。」
氷を入れた冷たいウイスキーを、母はおいしそうに飲み干しました。
次に、「タバコが吸いたい。」
喫煙家ではなかった母親の欲求に子どもは再び驚きましたが、
「死ぬのはお医者さんではなく、私なのよ」と。
おいしそうにタバコを吸って、母親はなくなりました。
この話から考えられるのは、
それまで11人の子どものために生きてきた母親にとって、
「子どものためになにもできない」ということは、大きな悩みだったのではないか。
そこで、最後に子どものために出来ることとして笑い話を残したのではないか。
ということです。
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一方スピリチュアリティーについては、
「霊性」と訳されることもあるが、
ネガティブイメージがつくこともあるので、
先生ご自身は「スピリチュアリティー」という言葉のまま使っている、とお話されました。
若いときには「持つ」ことが「である」ことよりも大切だけれど、(Having > Being)
年をとると、「持つ」ことよりも「である」ことのほうが大切になる。(Having
サン・テクジュペリが「星の王子様」で述べたように、
「本当に大切なものは目に見えない」のであって、
世の中には、肉体的な目ではなく、心の目でしか見られないこともある。
このようなお話も、4歳のときに妹様を白血病で亡くされたご経験に基づいていました。
最期に家族の一人ひとりとあいさつして、「天国でまた会いましょうね」と旅立った妹。
英語や母語であるドイツ語を交えつつ、
「DeathのTHは舌を出すのです。私の美しい舌を見てください。」
と、死を語るときもユーモアを忘れず、スピリチュアリティーについてお話された先生に、
会場は大きな拍手をおくりました。
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今年の10月にスタートした日本財団の千葉大学寄附講義も、ちょうど中盤を迎えました。
後半は医療現場で働く医師や看護師の方々にご登場いただきます。
引き続き、ご報告いたしますので是非またご覧頂ければ幸いです。